164話 閉じられた瞳25
忘れていた、碧火の設計図を回収してダンジョンに戻る。
その丹炉の設計図だが、かなり大きいのだが、知ってはいた……西遊記で孫悟空が丹炉の中に閉じ込められて焼かれる部分があったから、それができる程度のサイズだと思っていたのだが……それでも予想の数倍はあった。
「星華ちゃん、これどこに設置するの?」
「……ああうん、ダンジョンの機能で空間を確保するつもり」
この規模の建築物となると、私が適当に設置すると、今後の拡張に支障をきたしそうだったので、アリーに任せることにする。
……実際ただ押し付けてるだけだが、今後の拡張を考えたうえでの配置となると、私より自動人形のアリーの方が向いている、処理能力なら私より上だからね。
自分より優れている相手に任せるのは当然だ、得意なことは自分ですればいいし、無理なことは得意な人に頼んだほうが効率がいいし、失敗のリスクも下がる……ただ、失敗したときの責任は頼んだ側である私が取る、
まあ、これはただの個人的な決め事ではあるのだが。
……他人に頼る……か。
「星華ちゃん、どうかしたの、なんか暗いけど」
「なんか人に頼るのが苦手な人が周りには多いなーって」
「……もしかして、天音さんの事?」
「そうだね……まあ天音は仕方ないところあるけどね、大体いつも敵ばっかりのところで頑張ってるからね」
「あ~天音さんって、頑固っていうか、なんていうか」
「信念の塊だからねぇ、例え私と戦うことになっても、それで一人でも多くの人が救えるなら、彼女は止まらないだろうね」
普通だったら私みたいな化け物とは戦わないだろう、それを躊躇しない事から、彼女の精神力の一端が見える。
「出来れば協力したいんだけどなぁ」
「でも、絶対にこっちの勢力には来ないよね」
「うん、間違いない」
「じゃあ、私たちがあっちに行くしかないんじゃないの?」
「豊はいいの?」
要するにそれは天軍に付くという事だ。
「別にいいじゃん、私達は天音さんに付くのであって、天軍に付く訳じゃないって事にすればいいんだから」
「……それはありだね」
つまり天軍の中に入って、全力で天軍の足を引っ張ればいいのか。
……やはり豊は賢いな、こんな手法を考え付くのだから……だが、それを実行するために細かい言い訳を考えるのは、私の役目だ。
「そういや、豊は天音の事どう思ってるの?」
「……星華ちゃんのハーレム候補?」
「……おい」
割と本気の顔だから困る。
「……豊はそれでいいの?」
「別にいいよ、天音さんとはそれなりに仲良かったし、星華ちゃんだったら3、4人位大丈夫だって」
「後の一人は?」
「輝夜ちゃん」
輝夜はまあ納得だ、豊が、ちゃん付けで呼ぶのは、私以外は輝夜だけだからね。
「まあ、豊が構わないなら、そうするよ、天音は傍で監視しないと無茶しそうだしね」
……輝夜は、うん、基本的にめんどくさがりだし、無茶はしないでしょ。
「それじゃあ、マーガレットのところに行かないとね」
天軍に対しては断れない条件を突きつけるつもりだ……そして全力で天軍の邪魔をし、天音の願いに協力するとしよう。
アザトースは……まあ問題ないか、どうせ長期間天軍に従うわけではないしな。
……マーガレットは、まあ、なんとかするか。
何も問題はない、目的は天軍を潰すことなのだから。