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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
11章 閉じられた瞳
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156話 閉じられた瞳17

 少し待った後に、天音あまねに案内された部屋には、広さ的に一人部屋なのだが、何故かベットが二つ用意されていた。


「天音、別に手を出す気はないよ……どう見られてるかは知ってるけど」

「分かってますよ、私も非公式にゆっくり話したいので、同じ部屋で寝る事にしたんです」

「冗談だよ」

「それも分かってます」


 私達は、はたからみれば相性が悪いらしいが、別にそんな事は無いし、これでも気の合う方だと思って居る。

 お互いに、守りたいものを守るために、自分の身も顧みず、手段も選ばない性質たち故に、分かりあえる部分も多く、無駄に深く考える性格から話も合う……その性質故に敵に回る事もあるだろうが、出来るだけそうならないように立ち回るつもりだ。


「それじゃあ天音、何か私に聞きたい事はある?」


 さっさとベットに潜り込んで、天音のベットを向くと、天音もベットに入って私の方を見る。

 私が天音に質問するのではなく、天音に質問を求めるとは思って居なかったらしく、少し虚を突かれたようだが、少しの間の後に、質問が返って来る。


「天使長の眼を奪った事には何の意味があるのですか?」

「相変わらず、なかなか鋭いね」


 天使長の力を奪うだけで良いのなら翼でもなんでもよかった、それを眼にしたのにはちゃんとした理由がある。


「まず、前提として、天使たちは意識や情報を常に共有しているのは、知ってるかな?」

「知っています、彼らは精神がリンクしているので、複数の体を持つ、一つの存在の様な物だと認識しています」


 正直、天使の面倒な能力だ、常に全ての天使の意識が繋がっている為、盗み聞きをしていた相手を口封じに殺しても、既に情報は漏れてしまっているからだ。


「それと同時に、天使たちは自分の()()も共有しているんだ」

「なるほど、つまり貴女の目的は天使の視界のハッキングですね?」

「正解、ただ、天使長の眼で無いといけないのにも理由があるのは分かるよね」

「そうですね、そうでなければ、下級の天使の眼を既に奪って居た筈ですし」


 やはり天音は理論的な事については頭が良く回る……とよも賢いが、あれは感覚型だから、チェスとかは苦手だ。

 まあ、今は天音への説明だ。


「天使は視界を共有できる……でも、自分より下位の相手に対しては、それを無効化できるんだ」

「……流石は、完全完璧な縦構造とでも、言えばいいのでしょうか」

「さあね、まあ、これで必要な時は、全ての天使の所在を大雑把に把握できるからね……しかも、下位の相手に対しては完全に強制的に」


 そして、天使はそれに対して抗うすべを持たない、そもそも【眼】を奪われる等、想定外の事態なのだから。


「ですが、それでは、天使も貴女の視界を覗けるのでは?」

「確かにそうだけど、それが出来るのは神様だけだね……メタトロンも位は足りてるけど、それを見る眼は、私の物だからね……それに、覗けるのは私がメタトロンの眼に切り替えている時だけだから、その間右眼のまぶたを閉じていれば何一つ問題ない」

「そうですか、なら何も言う事はありません」



 それから、しばしの沈黙の後に、天音が口を開く。


「貴女はこれからどうするのですか?」

「取り敢えず、心配している筈の豊の所に戻って……その後は、そうだね……世界征服でもしてみるかな」

「本気ですか?」

「勿論冗談だよ……今の所はね」

「最後の一言が無ければ安心できるのですか……まあ、貴女になら、征服されたとしても大して悪くはならないでしょうね」


 呆れ顔の天音に笑いかける。


「まあ、管理が面倒だからやらないと思うよ……豊も望んで無いしね」

「……望んだらやるんですね」

「そうだね、内容にもよる……いや、豊の願いなら絶対に叶えるね」

「……彼女の願いが、私と敵対するものではない事を心から願います」


 私はしっかりと天音を見据える。


「天音はこの国に残るんだね」

「はい、どうせ天使たちはまたやって来るでしょう……天使が暴走しないように、務めるつもりです、それが、この国の民を幸せにする方法だと思いますから」

「まあ、気が済むまですればいいよ」

「勿論そのつもりです」


 天音は何時もそうやってそこの人々を幸せにするために努力し……その成功と引き換えに自分の居場所を失うんだ。


「居場所が無くなったら私のダンジョンに来ればいい、いつでも歓迎するよ……約束する」


 私の言葉に天音は驚いたようだ。


「珍しいですね……貴女が約束するなんて」

「まあね、でも、それは守れない約束をしないためだ」

「……私はどうすれば良いのでしょうか?」

「素直に頷いておけばいいんじゃないかな?」

「それでは、ありがとうございます」


 それ以上は二人とも言葉が出ない……私達には、それ以上の会話が必要では無かった。

 そして、天音が眠りに落ちたのを確認して、私もゆっくりと眠りに落ちて行った。

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