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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
11章 閉じられた瞳
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155話 閉じられた瞳16

 黄金色の血を滴らせる眼球を手の中で転がし、指先で弄ぶ。

 他者から見れば、相当にグロい光景なのだろうが、私からすると日常的な事で、嫌悪感は無い。

 メタトロンは痛みに呻くが、怒りを見せる様子はない、敗者の報いだと理解しているのだろう。

 言っておくが、眼球を抜かれた程度で死ぬという事は殆ど無い、出血はあるが、案外大した事ないもので、ショック死さえしなければ、人間でも死んだりしない……天使がショック死する事は無いと思うが、既に殆どの力を失っているメタトロンが死ぬ可能性もあった。


「人々の罪を見抜く眼、お前たちの傲慢の代償にこれを貰うよ」


 これは彼らの傲慢の代償だ……自分達が優秀かつ、全ての存在の上位に立つと慢心して居なければ、とよを貶める発言をすることはなかっただろう。

 メタトロンの眼を神が治す事は出来ない、なぜなら、そこにある筈の眼は壊れておらず、そしてその【天使長の右眼】と言う物は二つ同時に存在できない……唯一神が作るモノは、唯一絶対であるが故に、二つ存在すると深刻なエラーが生じてしまう筈だ。


「それを……どうする気ですか?」

「さてさて、物理的に管理してたら、奪還するために私が留守の間にダンジョンが襲われかねない……よってこうしよう」


 メタトロンの眼が乗って居るてのひらに、【暴食】の魔法陣を創り出すと、【眼】がそこに沈み込む様に取り込まれていく……小型の魔法陣ではあるが、流石は原罪の力、かなりのエネルギーを使ってしまった。

 【暴食】の力を使って取り込む以上、()()()()()()()()()、ノーコストで取り込めるのだが……流石に血の滴る眼球をそのまま口にするのは嫌だ……天音あまねにトラウマを植え付ける事になっても悪いし。

 それと、この魔法陣、物凄く使いどころが狭い、巨大化すると全く安定しないから、小型の物しか取り込めないし、そもそも生命活動を行って居る物には効果が無い……出来るだけ早く、効率のいい方法を模索したいところだ。


「暴食……我々が貴女を呼んだ、原因ですか」

「そうだね……これでアンタの眼は、私の所有物だ」


 取り込んでしまった以上、私自身の意志で返す事は不可能に近い。

 だから、豊が人質に取られたりする危険性が少なくなるはずだ。

 人質にしたところで、帰す事は出来ないのだから。


「その力は貴女を侵食するでしょう」

「そうだろうけど……片目だけだし、侵蝕も十分対抗できる程度に抑えれるさ」

「そうですね……では私は帰らせて貰います」


 メタトロンの足元に魔法陣が現れ、天界へと転移させた。



星華せいかさん……ありがとうございました」

「礼を言われるつもりは無いよ、私が勝手に始めた喧嘩だからね」

「それでも、あのまま天使が大きな顔をしていると、いつか民が苦しむ事になったでしょう……一度、大敗して欲しいと思って居たところです」


 そのまま、色々崩壊した部屋で天音と話すが、やはり彼女は人間以外には冷淡だ……いや、人間にも割と冷淡だな。


「まあ、礼を言うなら、態度で返してもらうよ」

「解りました、何をしましょうか?」


 私が要求を告げる前から受ける事を決定している……前から思って居たが、天音は自分の犠牲を全く厭わない。


「大した事じゃない、明日まで休む部屋と、あと出来れば天音と一晩話したい」

「了解しました……そうですね、一度牢で待機していただきます、準備の後に迎えを贈りますので」


 牢で待機してくれと天音が言ったのには理由がある……私は少し前まで入っていた牢屋ぐらいしか、部屋の位置を記憶していない……別に気にする性格でもないと分かって居るので、天音は合理的に判断したのだろう。


「分かった、それじゃあ、少し休んでるよ」


 そう天音に言って部屋を出て、思わぬ収穫に一瞬だけ笑みが零れる。

 転移の魔法陣の術式は、基本は同じだが、一節だけ統一されてない部分がある……そこは転移先の座標を仕込む場所だ。

 そして先ほど私は、メタトロンが天界へ帰る時に使った転移術式を完璧に覚えている。

 なかなかに複雑な暗号化は施してあったが、その程度の解析なら造作もない事だ。

 要するにだ……私は天界の座標を割り出し、転移術式を起動するエネルギーを確保できれば、いつでも天界へと乗り込めるようになった。

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