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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
11章 閉じられた瞳
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154話 閉じられた瞳15

 私の呪詛を込めた弾丸が、既に瀕死だった弱い天使を一掃していく……この術は躱せない技ではない、だが、命中精度が悪い訳では無い。

 既に、翼を打ち抜かれ、心臓に穴を開けた天使が次々に絶命していく。


「メタトロン、これでも、まだ戦いを続けるのか?……私が始めた戦いとはいえ、抵抗できない相手を、ただ破壊するのみとなってしまった今となっては、最早怒りすら消え失せているんだ」


 私はメタトロンに声を掛ける……これは豊に対する冒涜への報いだが、これ以上は只の虐殺だ。

 すぐ横で心配そうに私を見て居る天音(あまね)に、私は優しく微笑みかける。


「天音、私は大丈夫……分かって居ながらも、今まで目を逸らしていた事を、いい加減に受け入れただけだから」

「……大丈夫だと言うのであれば、何故、貴女は涙を流しているのですか?」


 天音の言葉に、目に指を当ててみると、確かに濡れている。


「何故だろうね、でも、私は私だ、それ以上でも以下でもない」


 静かな声で自分自身に宣言し、メタトロンを見る。

 既に無数の傷を受け、翼から羽が何本も千切れ落ちてなお、彼の目に絶望はない……それが天使なのだろう。


「メタトロン、まだ撤退しないという事は、私の願いは通じなかったということだね」


 右腕を頭上に挙げ、魔力を集める……スキルは使わない、スキルは便利だが、致命的な弱点がある事に私は気付いている、だから最近はスキルに頼らない戦いを続けていた。

 魔力に私の呪詛を加え、腕を振り下ろすと、集まった魔力が、無数の黒い斬撃になって前方の全てを切り刻む。

 メタトロンはもちろんの事、天井から下がるシャンデリア、備え付けられていた大理石のテーブル、窓枠を覆うカーテンと嵌め込まれたステンドグラス……それら全てが実態を持たない斬撃に破壊される。

 ……黒い斬撃の正体は、私が前から扱っている瘴気(しょうき)だ、私が放つ瘴気は物理的実体を持たず、触れた物を侵食する力を持って居た……それを圧縮し、刃として放てば、範囲内の全てを切り刻む防御不能のカマイタチの様な攻撃になる。


星華(せいか)さん……」

「ごめんね天音、私は怖いよね」

「いえ、問題ありません、ただ、敵にならない事を祈ります」

「私もそう願って居るよ」


 さて、これで生き残っていた普通の天使は全滅した……あとはメタトロンだけだが、既に瀕死の重傷だ……恐らく完全体では無いのだろうが、天使長を追い詰めるだけの力を持つ自分に恐怖を覚えてしまう。

 殺すのは簡単だが、ここは逃がしてやろう。


「メタトロン、この場は引け、最早勝ち目はない」

「そうですね……もっと早く撤退するべきでした」

「その通りだ」

「ですが、私だけが無事に帰る訳にも行かないのですよ」


 おそらく、一人だけ五体満足で帰っては、示しがつかないのだろう。


「そうか、なら、見逃す代償をもらうとしよう」


 私は、既に戦意を失っているメタトロンに近付き、その右目を抉り取った。

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