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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
11章 閉じられた瞳
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151話 閉じられた瞳12

 メタトロンの命を受け、一人の天使が振るう槍を躱し、その天使の胸にてのひらを当て、相手が動こうとした力を利用して、心臓の位置に衝撃を伝える……天使も、体の造りは人間と同じ筈、なら壊し方も同じだろう。

 予想通り、崩れ落ちて動かなくなる天使を見て、周囲の天使が動けなくなる……まあ、こんなに簡単に破壊されるとは思って居なかったのだろう。


「何を驚いている、只の合気道の応用だ……触れられたら終わり、この上なくシンプルなルールだ、そうだろ?」


 下らない挑発だが、それでも、天使には効果があったようだ……天使は常に上位の存在だから、下に見られた経験が無いのだろう。

 距離を詰められないように気を付けながら、複数で囲み、天使の飛べるという能力を生かして、空中からリーチの長い槍で攻撃する気の様だ。

 単独で来ないのは賢明だが、こいつらは一つ思い違いをしている様だ。

 私に向かって伸びる槍の、穂先の根本部分を、正面から片手で掴み、相手が私に向かって槍を押し込もうとする力を相手へと返す……下向きの力に変えて。


「ぐっ……何故だ?」


 結構痛そうな音と共に、丈夫な大理石の床に激突した天使は、槍を放して、苦しんでいる。


「何故だって?……言った筈だ、私に触れられたら終わりだと……もしかして、武器は触られても大丈夫などと、思って居たんじゃないだろうね?」


 そう言って、天使が手放した槍を、軽く振るってみる……バランスが良い、女性向けには少し大きいが、私の身長と技量なら、十分に扱えるだろう。



 そうしていると、複数の天使が一度に襲って来る……多少の犠牲を覚悟の上で、特攻をかけるつもりだ。

 面倒に思いつつ、迎撃の構えをとった瞬間に、背後から放たれた波動が天使を吹き飛ばす。


「効きましたね、私の攻撃が」

天音あまね、今のは断罪の力か?」


 非常に強い気を纏っている天音に尋ねると、彼女は何時もと違う雰囲気で頷く。


「この力は、相手の罪の意識が大きいほど威力が増す()()()攻撃……貴女は罪の意識を感じていないのか?」


 恐らく天音の中に居るのであろう、何かの問いに私は苦笑する。


「私がした罪は全て覚えている……だが、それは時代が違うのであれば、英雄としての行為であったり、正義であったりもする……この世に罪と言う者は本来存在しない、あるとすれば、()()()()()()()()()()()()()だけだ」

「……なるほど、我の力を受けぬのも道理よ」


 罪の意識を、物理的に苛む力など、罪を理解し、受け入れる者に効果がある訳ない……天使に効いたという事は、それだけ天使が矛盾を抱え、それを正義の為と正当化しているからに他ならない。


「一つ聞きたい、貴女は何者ですか?」


 私の言葉に、天音の中に居る者は、面白がっている様だ。


「何がおかしい?」

「ああ済まない、我の正体を何となしに察した上での、その言葉と思うと、少々面白くてな」


 天音が手を振り上げると、頭上に魔力が集まり、昔ながらの天秤(やじろべえが両手から皿をぶら下げているような形)が具象化される。

 天音が手を振り下ろすのに合わせて、天秤も地面へと叩き付けられる。


夜神星華やがみせいかよ、我の名は()()()()、罪を裁き、罰を執行する者だ」


 天秤が大理石の床に触れた瞬間、金属と石がぶつかる高い音と共に、先ほどとは比べ物にならない波動が放たれた。

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