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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
11章 閉じられた瞳
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149話 閉じられた瞳10

 数日後、査問が開かれ、広間に呼びつけられる。

 私の枷を外した天音あまねに案内してもらい、そこに向かう。

 部屋の中には、当然の如く天使たちが居た……とはいえ、力のある天使はメタトロン只一人の様で、後は天使のヒエラルキーの下位に属する者達の様だ。


「……来たか、人の子よ」

「こんな私を人の子と言うのか?」


 周囲に瘴気を放ち、荊を召喚してやると、周囲の天使に動揺が走る……まあ、只人ただびとに出せるモノでは無いからな。

 それでも、天使とはいえ、ここまであからさまに引かれると少し凹むな。


「それでも、人の血が流れている事に変わりはなかろう」

「私の両親は、少なくともお前たちの父に生み出された者の子孫ではないけどね」

「……ふむ、まあ、今はそれについて議論する為にここに来たのではない、まずは成すべき事をするとしよう」


 どうやら不利を悟ったらしく、話題を変えてきたが、私もそこまで敵対する気は無いから、素直に従っておく。

 ……天使に対し舌戦が有効である事が分かっただけでも収穫だ、天使が神に類する者である以上、こちらの言動が読まれている可能性があり、少々不安だったが、それが出来ない事が分かった事は、安心材料になる。


 

「……それで、私の罪はどうなった?」

「調査の結果其方に罪は無い事が分かった、長期間にわたり其方を拘束した事と共に謝罪しよう」

「……まあ、さほど気にしてはいない、私もあの状況ならアンタたちと同じ行動をとる」


 謝罪に取れない言い草だが、立場としては仕方ないのだろう。


「私が聞きたいのは、私に毒を盛った奴らの処遇についてだ」

「彼らには厳罰を与える事になって居る」

「死罪か」

「……」


 沈黙は肯定の証拠、私の攻撃材料として使わせてもらおう。


「お前たちは、咎人に反省の機会を授けないのか?」

「我等が機会を与えるのは一度のみ、二度目は、相手が誰であろうと厳罰を下す」

「本当にそうか?」

「何が言いたい?」


 私は不敵に笑って見せる。


「ならば何故、神は一度の間違いで、人間をエデンの園から追放したのだ?」

「……それは」

「まあ、そんな事はどうでも良い、それより大事なのは、神が全知全能であるならば、原初の人間が禁断の果実を食べる事を知っていた上で、何故、それを止めなかったのかだ」


 これはとよの論だ、正確には聖書物語を読んだ感想だが、これは真理だ。

 それだけではない、聖書の物語には神が無慈悲である証拠が書かれている。


「そして、カインがアベルを殺す事も知って居た筈だ、何故それを止めないのか!」

「神は人に大きく干渉するべきではないのです」

「馬鹿馬鹿しい、子が兄弟を殺そうとするのを止めない父が何処にいる!」

「……もう用は済みました、この場を立ち去りなさい」


 ……逃げたか、まあいいさ、決着はまた今度だ。

 部屋を出ようとしたその時、近くに居た天使が零した言葉が、私の逆鱗に触れた。


「まったく、女は子を産むのが務めだろうに」


 そいつを荊で締め上げ、ナイフを持って詰め寄る。


「今、何と言った!」

「人間よ、放しなさい」


 メタトロンの静止も最早意味はない。


「私に命令できると思うな、メタトロン、こいつの発言は天界の総意という事で受け取った」

「その言葉はその者が勝手に言った事です」

「黙れ、天使の言葉は神の言葉、ならばこいつの発言も神の言葉だ」


 そしてその言葉は、私が一番忌み嫌う物だ。

 私は自分の矜持の為に、そして豊の名誉の為に、その言葉を認める訳にはいかない。

 ……例え、戦争の引き金になったとしてもだ。

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