144話 閉じられた瞳5
……眠気も無い事だし、少し作業をしておこうか。
数種類の金属を使い、既に何度も行ってきた魔道具の作成を開始する。
園田から手に入れた、金気の力と火気を操って、金属を混ぜ合わせ、必要な合金を作ってそれを形にする。
「さて、何を造ろうか」
正直、暇潰しに始めたから、造りたいものは無い。
……豊に何か付与効果付きのアクセサリーでも作るか。
指輪……は私の芸術センスに著しい問題がある上、出来る事なら、まともな仕上がりにしたいから、保留にするとして……ブローチでも……これ以上やったら、首回りばかり豪華になってしまうな。
「……試しに、ピアスでも作ってみるか」
勿論、ノンホールピアスだ、幾ら再生できると言っても、私の趣味で穴を開けさせるのは嫌だ。
豊の魔力に合わせると、水系の魔石か……魔力の強い物は、深みのある青色だが、豊の暗めの茶髪に合うだろうか……合わなかったら、私が気分で使えばいいか。
ちなみに、豊の髪は地毛だ、目立つ程では無い物の、校則のキツイ学校だったら、色々言われる程度には茶色い。
言っておくが、私の居た高校の校則は、それはもう緩かった……正体は隠していた物の、校長はあのアザトースだし、爆発事件なんて日常茶飯事だったなぁ。
四階の窓から落下したのに、次の日には普通に登校してる奴が居るのが平常運転という、ギャグ補正のかかったような事件の連続……まあ、アザトースが何かしてたんだろうけど。
くだらない思い出はさておき、ピアスの作成に架かる。
魔術で金属加工をすれば、その程度の大きさなら、簡単に作れた。
水の魔石は、涙型にカットした物を取り付けてある……私が元居た世界で売ってた、最高級品と大差ないくらいには綺麗な宝石だ。
「あ、付与魔術忘れてた」
思わず声が漏れた……まあ、今からでも付与は出来るし問題ない。
どうせ二つ一組で使うのだから、別々の付与を行っておく。
片方には、水気の扱いを補助する付与を、もう一つには、冷気に関する付与を行っておいた……これで豊の魔術を強化できるはずだ、似合うかどうかは微妙だが。
さて、やる事も無いし、少し寝るか。
ほんの少しとはいえ、作業すれば疲れも出る。
……明日は、明日で面倒な事になるかもしれないから、今日はしっかり休んでおくとしよう。