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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
11章 閉じられた瞳
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143話 閉じられた瞳4

 案内された部屋は質素だが、それでも十分な快適さはあった。

 ベットは清潔に保たれており、一つ用意されている机の上には、邪魔にならない大きさの装飾されたランプが置いてある。

 窓には薔薇の図案のステンドグラスが嵌め込まれており、カーテンの遮光性も高い。

 部屋自体はそこまで広く無いが、客に対する気配りが行き届いている。


「案内ありがとう」

「……礼は不要です、主上の命ですから」

「一つ聞くけど、命令が無ければ君は何もしないのか?」

「……私は言葉に従うのみ」


 ……やっぱり、神に従う気にはならないな。

 平和が悪いとは言わないが、その世界は面白くない、人が自分の意志で動かない世界なんて息苦しいだけだ。


「まあ、少し話さないか、()()さん」

「……私をその名前で呼ばないで下さい、勝手につけられた呼称です」

「はいはい、天音(あまね)ちゃん、それでどうする?」

「……いいでしょう」


 苦虫を嚙み潰したような顔だが、許容範囲の様だ。


「……それで、なんの用ですか?」

「君は、天使達のやり方に賛同しているのか?」

「……私の願いは、全ての人々が平穏に日々を暮らせる事、天使の理想は、現状それに最も近い」

「だが、天使のやり方では、既に罪を犯してしまった者は絶対に救われない……天使は罪を悔いれば許すと言うが、それをする時間を与えるとは一言も言っていないからな」


 天音が言葉に詰まる……そんな事は分かって居たのだろう、天使たちは発言は守る、だが言わなかった事の方が重要である事の方が多い奴らだ。

 それでも、天音は言葉を絞り出す。


「……それでも、多くの人が平穏に暮らせる事は間違いありません」

「それはどうかな」

「……どういう事ですか?」

「天使に管理された世界、それは常に行いを監視され続ける、とても息苦しい世界じゃないかな」


 一切の穢れを許さない潔癖な世界、それを理想郷と(かた)る者は、常に管理する側の存在だと、天音に告げる。

 ……少し目を閉じたのち、天音は何かに気付いた様に、私を見る。


「……貴女は、私に何を望むのですか?」

「端的に言う、私に協力して欲しい」

「……貴女の理想を聞かせて下さい」


 強い光を宿した天音の眼差しに、嘘は吐けないと確信する。

 ……この部屋は、神の魔法によってあらゆる監視が妨害されているから、言葉にしても問題無いだろう。


「私の計画が成功すれば、この世界の人間に対して、全ての上位者による干渉が無くなる……それは唯一神もだし、アザトースの様な邪神もだ」

「……可能ですか」

「勝算が無ければ計画しない……だが、そうなった場合、この世界の全ては人間に委ねられる」

「……人間が、全てをですか」

「そう、平穏な世界になるか、それとも暴力が支配する世界になるか、全ては人間次第だ」


 天音は心を揺さぶられた様子で、固まっている……無理もないか、そう簡単に人間を信じれる程、天音は能天気じゃない。

 ……まあ、この辺で許してあげるか。


「まあ、直ぐに結論を出さなくてもいい……どうせ、まだ準備中だしね」

「……考えておきます」

「それじゃあね」


 天音は静かに部屋を出て行く……拒絶されない自信はあったが、正直少し不安だった。

 彼女の存在は、私の計画の副作用を大きく軽減してくれるはずだ。

 ……私の計画の成功に伴う、人々の暴走を抑制する役として、彼女以上の適任を私は知らないから。

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