140話 閉じられた瞳1
風呂から上がり、アリーが眠ったのを確認してダンジョンのメニューを確認していると、一通のメールが届く。
差出人の名は明記されておらず、ただ【Ⅿ】とだけ表記されている。
……これは外部から、ダンジョンのメールシステムに入り込んで送ってきているのだろう、ならばアザトースがこのメールの存在を認識する前に確認するべきだろう。
『我、汝が得し力を持つに相応しき者か判別するものなり』
……一文目から嫌な予感がする、下手したら暴食を剥奪されかねない相手な気がする。
『汝がその力を示し、正統な者より譲り受けしその力、我らはそれを人が持つべきモノとは考えぬ』
ああ、うん、天軍みたいだ……それも高位の存在だろう。
『だが、正統な契約である以上、我らはそれを無理に剥奪する事は無い。 しかし、それが原罪である以上我らは、人がそれを持つ事を認める事は出来ない。 なれど人の子にして魔に属す者よ、汝がそれと釣り合う美徳を証明するのであれば、我らは汝の原罪の所持を認めよう』
……つまりは原罪の所持を認めて欲しければ、それと釣り合う程の美徳を私が持って居ると示せという事か。
『汝、己の美徳を証明する意志あるならば、聖神国に来られよ、門は汝が名を名乗れば開かれる』
これは……幸運だ、神に準じる程の力をもう一つ得るチャンスだろう。
メールに対し、近いうちに向かうと返信し、メールを削除する。
……最早、行かない等と言う選択肢は無い。
私の目的達成が更に楽になるのだから当然だ。
まあ、一人で行くべきだろう、もし戦いになれば、誰かを守る余力等無い、
客人として招く以上、問題は無いだろうが、何処にも先走る者は居るものだ。
……美徳か、私が美徳ねぇ。
正義は微妙。
慈愛はありえない。
親切は……可能性はあるけど難しいか。
節制は多分無理。
寛容……無理だね。
勤勉なら可能性はあるかな。
純潔、論外。
勇気は場合による。
誠実……可能性は高そうだ。
……思いついた物を挙げてみたが、私が行けそうなのが勤勉と誠実しかないが、まあ何とかなるか。
さて、少し寝たら早速向かうとしようか。
……目的の為ならどんな苦難でも受け入れる、この不屈の意志が美徳として認められたら楽なんだけどね。