131話 名の在処6
ダンジョンの入り口付近に園田が居る、徹底的に雑魚を捨て駒にして情報を得る作戦の様だ。
その作戦は間違っていない、初見で対応出来ないからこその初見殺しなのだ、ならばどうするか、簡単だ、初見で無ければ良い。
低コストで能力の低い魔物を使い、罠を調べて、一つ一つ対策していく……それは初見殺しの対策としては、正解と言うほかないだろう。
「ダンジョンには入って来たが、動きがありません」
「多分、安全が確認されたエリアにしか、入らない積もりだろうね」
私は、死霊術を使い、その部屋の付近に居た、スケルトンの残骸を再生してけしかける。
「そんなので勝てるの?」
「無理、それでも、実力の断片を確認するのに必要」
そう言って、スケルトンの群れに対して、園田がどう動くか観察する。
……結果、数十秒で全滅した。
園田が持って居た大太刀を振るい、いとも簡単に勝利して見せた。
スケルトン共は、復活と同時に多少の強化をしていたが、無駄だったようだ。
一撃で粉砕されては、再生もできない。
「あの太刀筋……通常の剣術ではありませんね」
輝夜の言葉に、私は頷く。
「あの型、恐らく薙刀を基にしてるね……太刀自体も、ある程度それに合わせた作りになってそうだし」
具体的に言うと、あの太刀は、持ち手の部分が通常より長い、見た目はそこまでの差は無いとは言え、薙刀を基に型を作るなら、十分な差ではある。
それともう一つ、あの太刀……刃が非常に重厚だ、細身の対極を行くかのようなその刃は、通常の刀のように切り裂くのでは無く、重さで断ち切る様に作られている。
「あの太刀なら、そこらの魔物じゃ、相手にならないね」
正直、ゴーレムですら怪しいレベルだ。
「敵ダンジョンモンスター達が、第二階層に侵入してきました」
輝夜の報告が入るが、正直問題無い。
なぜなら、第二階層の森林ステージには、私の荊が生い茂っているからだ。
「……荊で出来たジャングルみたい」
豊の感想は、なかなか良い線を行っている。
因みに、これをするにあたって、元々この階層に居た、モンスター達には、避難して貰っている。
「星華さん、これでは、直ぐに突破されてしまいませんか?」
その通りだ、私の魔術とはいえ、これだけの量を自由自在に操作する技術は無い、だから、かきわけて進めば、簡単に突破できるだろう。
……だがそれは、仕掛けが、荊だけだった時の話だ。
この場所に仕掛けた物は、非常に単純な罠だ、だが、対策するのは難しい。
……雑魚がここを超える事は、そうそう出来ないだろう、それに超えた所で困りはしない。
「敵が来ます」
輝夜の報告の通り、リザードマン達が、荊をかきわけて、進みだす。
そんな中、ある一匹のリザードマンの、右足首から下が、見えない刃に切り落とされる。
そのリザードマンは、地面に倒れこみ……その途中で更に刻まれて絶命する。
その周囲では、それと同じ現象が連続で起こっている。
周囲からの攻撃に見えるが、実際は違う、これは只のブービートラップだ。
さあ、果たして魔物にこれが超えれるかな……部屋中に張られた、この極細の金属製ワイヤーの刃を。