127話 名の在処2
「あ~メンドクサイ」
帰ってくるなり、ベットに飛び込んでぼやく私に、豊が声を掛ける。
「……どうしたの?」
「園田にダンジョンバトル挑まれた」
「それは……勝てるの?」
「勝てる」
即答だ、勝てない筈は無い……が、厄介であることには変わりない。
「それも神格が桃太郎らしい」
それを聞いた豊は首を傾げる。
「ええと、それって……」
「鬼ヶ島に行った……英雄?」
あれって分類は何なんだろうか、一応人間だろうか。
「あ、でも星華ちゃんって……」
「そう言う事、桃太郎だから鬼に対しては強い力を発揮する」
そして私はまさしく鬼だ。
「本当に大丈夫なの?」
「まあ、問題ないでしょ、少し前までなら危なかっただろうけど、今は邪神の断片を取り込んでるから」
桃太郎は鬼に勝つ……ならば鬼以外に勝てるかと言われたら、それは実力次第だろう。
暴食の力で、大量のエネルギーを使えるのだから、私に勝つのは至難の業だろう。
「それに今回は防衛で勝つ」
「どゆこと?」
「今回の戦いで私は攻めないで、敵の戦力をダンジョンで迎え撃つ」
攻める力が無くなれば、アザトースが決めたルールにより、敗北が確定するのだ。
「と言う訳で、ダンジョンを改装する」
そうと決めた私は、ダンジョンコアにアクセスして、強化をしていく。
第一階層の洞窟型迷路には、大量の針付き落とし穴に加え、上や左右の天井や壁から槍が突き出す罠、直線通路の突き当りから毒矢が発射される罠など、殺意の高い罠を仕込んでいく。
「……トラップハウス」
「そうだね、これは消費DPが安い割に威力がある罠だから、沢山設置する事で、乱戦時に役立つ……気を付ければ対処は楽だからね」
次は、威力があって対処も難しい罠を仕込んでいく……具体的には、火炎放射する壁や、電撃を行う床などで、それに合わせて、エタノールや電解液を振りまく、スプリンクラーの様な自作の魔道具を設置する。
「これ、一階だけで殲滅できるんじゃ……」
「二階目以降も色々いじるけど、此処で出来るだけ数を減らした上に、突破する奴の体力も削っておきたい」
「そっか、確かに一番最初で、ある程度ふるいにかければ、その後の対処が楽になると」
「そう言う事、因みに戦力は大量のスケルトンと、魔道具を使う騒霊の予定」
因みにポルターガイストには実体が無い為、見る事も触れる事も出来ない……ペンキをぶちまけても無駄だ。
「魔道具って、その程度の低級霊に使えるの?」
「魔石を燃料に使う奴を使わせる……流石に本人の魔力を使う奴を使ったら、ポルターガイストぐらい一瞬で消滅する」
……色々準備を終えたが、これを初見で攻略しろと言われたら、私だって文句言いたいぐらいのダンジョンになって居た。
桃太郎……うん、桃太郎はどう考えても、これを攻略するような能力を有した神格じゃない。
第一、これを突破した直後に、私が待ち受けるのだから。