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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
10章 名の在処
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126話 名の在処1

 「アザトース、聞きたい事がある」

気配も無く部屋に入って来た私に驚くことも無く、アザトースはこっちを見る。

「よく来たね、そろそろ来ると思って居たけど、よくこの場所に居るって分かったね」

因みに、此処は異空間などでは無く、私達がかつて使って居た学校の校長室だ……交流や、交易なども減って来ていて、何かのイベント以外では、余り活気が無い。

「……私はニャルラトホテプを捕食して、取り込んだ」

「それで、同じ神話に属する存在の居場所なら、ある程度は分かると」

アザトースの言った通りだ、現状は、紅蓮とニャルラトホテプの所在は分かり、アザトースの居場所も、私が知っている場所なら探れるようになっている……後は海の底に何かが居るって程度だ。


 「まあいいや、本題に入ろう……何が知りたいんだ、星華は面白いから、教えてあげても良いよ」

「私の母の名を知りたい」

「へぇ、珍しいね、星華がそんな事を聞くなんて」

私が自分に興味が無いと思われている様だ……間違っては居ないが、知りたくもなる。

「理由が必要?」

「必要」

即答されては仕方ない、簡単に言うとしよう。

「私の力の由来が分かるかもしれない」

その言葉にアザトースは頷いている。

「そうだね、分かるかもね……でも、何故母親?」

「子は大概、母親からの影響をより強く受ける」

「それ、過去の記憶が無い星華には、関係ないと思うけどな」

「教えるのか教えないのか、それとも知らないのか、ハッキリしろ」

「……はいはい、教えるよ」

アザトースは肩をすくめた。


 「星華の母の名前は【五月姫(さつきひめ)】、苗字を呼ばれることは殆ど無い」

その名前に少し心当たりがあった私は、いやな予感がする。

「苗字を呼ばれないって事は、(うじ)で呼ばれるからで良いのかな?」

氏は、女性には使わない事が多かった記憶がある。

「その通り、神話が得意な星華なら、その名前だけで分かったみたいだね」

……どうやら嫌な予感が的中したらしい。


 「……アザトース」

「なんだい?」

にやにや笑っているこいつが、段々不思議の国のアリスのチシャ猫に見えて来た。

「私って何歳?」

「……20少し前だった筈」

……まあ、母が私の想像通りの人なら、まだ生きてても不思議ではない。

「思ってたよりも、ほんの少しだけ上だったな」

豊より四歳程上ではあるが、その内それが誤差になるのだろう……三桁超えた辺りから。


 「所で、ダンジョンバトルの申し込みがあるよ」

……いきなりだな。

「相手は?」

「ウチの体育教師」

「ゴリ……園田剛(そのだつよし)か」

「今ゴリラって言いかけたよね」

……だってアイツほぼゴリラだし。

柔道、空手、合気道全てにおいて、そこらの師範代を超える実力を持った化物で、着いたあだ名が鬼殺し……校内に侵入した不審者を数回、クマを一回素手で捕獲している、あの学校で私と並んで語られる程の存在だ。

私は裏の人間、アイツは表の人間だから、これまではお互い不干渉を貫いてきたが……そうもいかないか。

「目的は戦力って事か」

「そうだね~、あれも結構やる気みたいだよ」

「流石に何かの神格を持って居るんだろうな?」

答えが返って来るとは期待していなかったが、アザトースはあっさりと教えてくれた。

「”桃太郎”が、あれの神格だね」

……神格じゃないし、歴史上の人物ですらなかった。

「ま~、私達と同じだよ、多くの人の、強い奴をやっつけて欲しいと言う、ヒーローを望む気持ちが集まって生まれた、新しい神だね」

「……まあいい、受けよう、そう伝えてくれ」

そう言って部屋の扉を開ける。

「もう行くんだ?」

「暇して居られなくなったからね」

……桃太郎か、神格を喰って取り込む気にはならないが、私の糧となって貰うとしよう。

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