12話 ダンジョンバトル(蹂躙)
それじゃあ疲れた空に代わって私が行こうか。
ゴブリンが集まってくるがそんなものは何の意味も無い。
【ユニークスキル・殺人領域】
相手が弱いほど効果の範囲が広くなるこの技は基本雑魚掃除用だろうね。
蜥蜴は固いけど軟らかい部分はあるからそこを切り裂くと直ぐに動かなくなる。
「なぜ俺たちが負けるんだ?」
・・・明らかに負け役だからではないだろうか。
セリフも性格も何から何までテンプレ通り、ここまでセオリー通りの奴も珍しい。
どの道弱いから負けるのだけど。
その時ドスドスと下品な足音が聞こえてくる。
「こいつらに勝てる訳がねぇ!やっちまえ!」
そこに出てきたのはゴブリンを遥かに超える体躯をもちでっぷりとした腹が特徴の二足歩行の斧を持った豚・・・オークとでも呼ぶべきだろうか、そんな存在だった。
「そいつらは女とみれば見境無く襲い掛かるぜ、さあいけ!」
突進してくる豚男を見て吐き捨てる。
「全く汚らわしい」
これだから男は屑なんだ。
爆弾を取り出すと蓋をこじ開け、中の火薬を取り出してばら撒き、火をつける。
「炎の壁、豚はこれを超えてこれるの?」
超えて来た、全ての障害を無視して女へと突撃してくる。
「下賤な豚が、死ね」
【抜刀術・斬首、公開処刑】
一瞬にして放たれた刃が豚の首を跳ね飛ばした。
「ふ、ふざけるな!」
大剣を持った方の馬鹿が突撃してくるのを回避して刀を構える。
「俺だって戦えるんだよ!」
【大剣・脳天割】
【抜刀術・斬首、公開処刑】
振り下ろされた大剣を横薙ぎの匕首が受け止め、そのまま叩き折る。
「あ、ありえな・・・」
出かかった言葉は止められた、刃をへし折った刃がそのまま首を切断したからだ。
そのまま私は背後に声をかける。
「疲れたから空代わってくれない?」
「ええで、ほな行くわ」
さて、星華は満足した様だからワシが戦うとするか、元々はワシが仕掛けられた喧嘩やしのう。
ガントレットの鉄爪への衝撃は指じゃなくて腕全体にかかるから使いやすいけれど星華の匕首ほどの威力はないからな。
まあ追加で来たゴブリン程度大した事無いわ。
【鉄爪・首狩り】
それぞれ指の動きに合わせて動く五本の鉄爪で次々に首を切り落としていく。
・・・結局スキルっちゅうのは元々出来る特定の動きとかに名前を与えて任意で使えるようにしたものやからな、威力は個人の能力に依存するわ・・・星華は破格やけどな。
「お前だけでも殺してやる」
・・・えらい物騒やのう、しかもなんやあれ?竜の下位互換か何かか?
異常なほど巨大な蜥蜴が口から火の粉を吐きながらゆっくりやってくる。
それが息を吸い込んだかと思うと炎の玉を吐き出してくる。
慌てて避けると、壁にぶつかった火の玉は爆発しおった・・・ダンジョンや無かったら壁が抉れとるわ。
・・・さて、奴を切り裂くなんぞ星華ぐらいやろ、普通は切れるもんやない、冒険者とかなら話は別やろうけどワシは物理には向いとらん、負けはせんけどな。
また息を吸い込んどる蜥蜴に威力の高い爆弾を投げつける、口の中に。
火の玉を吐き出す時にそれに引火、丸ごと吹き飛んだわ。
いつの間にか目の前に片手剣を持った奴が突っ立っている。
「なんや?当てが外れたか?」
ガントレットを嵌めた腕を構えると馬鹿は離れて魔法を使おうとする。
「風術・鎌い・・・」
【機構・爪射出】
ガントレットの絡繰りの最終手段の一つや、魔法は下手すると危ないからな。
火薬の力で鉄爪を発射する武器やな、回収してセットするにも複雑だからメインの武器が暫く使えんくなるけど、相手もそんなんがあるとは思わんから簡単には躱せないやろ・・・星華なら初見で叩き落すやろうけど。
でも、今回は大丈夫みたいやな、馬鹿は胸を五本の刃に貫かれて倒れた。
「決着だよ、皆戻って来てね~」
アザトースがいつの間にかワシの後ろにいて言った。
「えっと、空ちゃんはここに居るけど星華ちゃんは何処に?」
「ここだよ」
「ぎゃあ⁉いきなり胸さわるな!」
邪神の後ろを取るって・・・・・・化け物やな、邪神も油断してたんやろうけどな。
「・・・で、星華ちゃんが持ってるそれって」
「盗んで来ちゃった」
星華の手にはルビーのような赤い宝石が一つ握られてる。
「ダンジョンコアを盗んで来るって・・・」
「対策しないのが馬鹿なんだよ、こっちはしてるでしょ?」
「あの子供たち?」
「あとコロもね、ゴブリンぐらい倒せる実力はあるよ」
「で、なんで取って来たの?」
「使い道あるんでしょ?」
「そうだね、ダンジョンに新しい階層を作り出せるよ」
そこで星華はこっちを向いて聞いてくる。
「貰っていい?」
「別にええで、星華の戦利品やしな」
「いいよ~また作れば良いんだしね」
「星華ちゃんがコア持って来てたから遅れたけど、報酬だね、勝ったら何でも負けた方から奪えるよ、蘇生は後でやるから文句は出ないしな」
そうかそれじゃあ。
「ワシはこれから十年間あいつらが得たDPを常に半分回して貰おうか」
「鬼だね~別にいいよ、あと言い忘れてたけどダンジョンマスターは不老不死だから寿命は無いよ」
「星華はなんか欲しいもんは無いんか?」
「別に無いよ」
「じゃあ星華ちゃんには魔法をあげよう」
アザトースが何か呟くと、星華の足元に一瞬だけ魔法陣が現れた。
「これで魔法が使えるよ~」
「何を?」
「じゃあこれあげる、これの象徴とかイメージを具現化したり加護として授けたりする魔法だよ」
「タロットカードか」
「最初は魔力が馴染んでないし、訓練しないと大アルカナを使うのは難しいと思うから頑張ってね~。あとダンジョンコアの吸収はダンジョンのすゝめに書いてあるからね」
言いたい事だけ言ってアザトースは帰って行った。
「・・・空」
「なんや?」
急に真剣になって。
「一緒に寝ない?」
「嫌や」
このレズは本当にブレる事が無いな。
「仕方ないか、じゃあまた今度ね」
今度が来ない事を祈るけど、不老不死っちゅう事は多分無理やろうな、ワシも星華が嫌いな訳やないしな。
その後星華とその仲間たちが全員帰ると急に静かになる。
・・・次の誘いは受けてもいいかな。