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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
9章 顔無き者
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120話 顔無き者12

 「……よく、そこまで調べましたね」

驚きは当然だろう、この国の皇帝は二度殺されたが、一度しか変わっていない事になって居るのだから。

「まあ、輝夜があの状況で、私を入れる許可を貰いに行くには、時間が足りないからね……少なくとも許可を出せる立場には居ると分かって居た、後はそんな気がしたから、鎌をかけてみたら、あっさり引っ掛かってくれた」

そう言いながら部屋に入り、彼女のベットの上で胡坐あぐらを掻いて、壁にもたれ掛かる。

「……まったく、これでも一応、一国を束ねて居るのですが、貴女は相変わらずの態度ですね」

そんな私の態度を見て、椅子に座った彼女は苦笑しながら言う、本気じゃない事は明白だ。

「そりゃあね、私は相手の立場で行動を変える事は無いからね、相手が誰なのかによって、私は行動を選ぶ」

「それが良いでしょう、貴女は強いですからね、権力など無視して、巻き込まれないようにするのが一番です」

その言葉に、私はニヤリと笑って見せる。

「まあね、個人的にやる気が出ない限り、権力に近づく事は無いね……まあ、強過ぎるってのも問題だけどね」

「問題……ですか」

「そうだね、強過ぎると、今度は権力の方からやって来る……それに気付いてしまうんだよね、自分以外の全ての他人と私の力関係は、さながらウサギと獅子程の差があるって事にね」

それを聞いた彼女は、少し考えるようなそぶりを見せ……何故か慌てたようにこっちを見た。

「すいません、少し考え込んでました」

「いや、()()()()()()、短い時間だったよ」

「ああ、そうでしたか、どうも相対的に時間を捉えるのは苦手で」

彼女の体感時間のコントロールが揺らいだのだろう、いくら神に与えられた力とは言え、精神に作用する物は、術者の状態によって効果が揺らぐのは仕方のない事だ。


 「さて、本題に入ろうか……皇帝の身代わりはどうしている?」

「……なんの事でしょう?」

「誤魔化しても無駄だよ、輝夜が皇帝の椅子を持って居る事は周知されていない筈だ……輝夜が私の入城を許可した時の周囲の兵士の表情でそれは解った、だから死んだ皇帝の偽物が居て、表向きはそれが国を動かしている事になって居ると思う。」

私の言葉に、輝夜は額に手を当てて、溜息を吐く。

「本当に、貴女の洞察力は厄介ですね、隠し事が出来ないのですから」

「別に隠し事をするのは良いよ……嘘を吐かれるのは嫌いだけど」

誰だって、人に知られたくない事の、一つや二つはある筈だ、だから隠し事をするのは構わない、でも嘘は聞きたくない。

「……優しい嘘でもですか?」

「優しい嘘なんて物は無い、もし在るとするなら、所詮嘘を吐く人の自己満足、ただの偽善だよ……例えどんなに辛いものであったとしても、それが真実で、その人に関係のある事なら、その人には聞く権利がある、それは他人が勝手に誤魔化していい物じゃない……まあ、他の意見もあるだろうけど、私は聞きたい」

「そうですか、なら、その時が来たら、そうします……出来れば、その時が来ない事を願いますが」

「……お願いするね」


 嫌な考えを追い払う様に、軽く首を振って、再び質問する。

「それで、皇帝の偽物はどうやってるの?」

「それなら、もう一人の自分(ドッペルゲンガー)を使ってます」

「ああ、確かにそれなら何とかなりそうだね」

ドッペルゲンガーは、好きな相手の姿をコピーする能力を持ち、コピーした相手の性格や能力を再現する魔物だ。

「あれって、確か鏡の魔物だったよね」

前に私のダンジョンで召喚出来る魔物を見て居たら、見つけた覚えがある、鏡の魔物になって居た事には素直に驚いた記憶がある……悪霊や精霊の類だと思って居たけど、この世界では違う様だ。

「そうですね、本体は私のダンジョンの奥に置いてあります」

「それが安全だね、まさか皇帝が偽物で、本体がダンジョンにあるなんて誰も思わないから」

「そうですね、それも、()()()のダンジョンですからね」

そうして、久しぶりに二人で笑い合う。


 ひとしきり笑った後、輝夜が口を開く。

「それで、私はどうしましょうか?」

「ん、どういう事?」

「何か、私にして欲しい事があるから、この国に来たのでしょう?」

言われて、私は頷く。

「停戦交渉の為に、私と一緒にマーガレットの国に来て欲しい……勿論、身の安全は私が保証する」

「解りました……まあそういった内容だとは感じて居ました、ですがこの国の戦力が不安ですね」

「それなら、ドッペルゲンガーをもう一体呼び出して、私をコピーさせればいい……本物の一割程度が再現の限界だとは思うけど、それなりには強い筈、もしくは人質兼戦力として豊を置いて行ってもいい」

そう言うと彼女は驚いたようだ。

「豊さんを置いて行って、良いのですか?」

「まあ、大丈夫でしょ、身の危険を感じたら、自分の安全の為に動く様に言ってあるし」

「ですが……彼女ですよね?」

「私が暫くふらっと姿を消すのはよくある事だし、状況を説明すれば、理解してくれるでしょ」

「……解りました、行きましょう」

「よし、それじゃあ豊に説明してから、出発しよう」

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