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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
9章 顔無き者
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115話 顔無き者7

 西門に行くと、既に豊が待っていた。

「豊、早いね」

「……星華ちゃんが寄り道してるからだよ、それと、会議室に閉じ込めてる人達に水を渡してきたよ」

それを聞いて、豊の頭を撫でる。

「それは気が回らなかったな……元々、あれほど効果時間が長くなる筈じゃ無かったから」

「……星華ちゃんの魔力の総量を超えてそうなのって、アザトースしか見た事ないからね」

その手の観察眼が鋭い豊が言うのだから間違いないだろう……もっとも、他のダンジョンマスターの中には、完全に魔法特化型が居ないとも限らないし、神相手に魔力の量で勝つなど無理があるだろう。


 ……それにしてもだ。

「流石にアザトースと比べないでよ」

「でも、他に星華ちゃんより、魔力の多そうな相手なんて居ないよ?」

「だからだよ……アイツは普段は分霊を使ってる、それも本体の数パーセント程度で作った奴を」

「え……じゃあ、本気のアザトースってどれだけ凄いの?」

「降臨するだけで、世界を狂気に堕とすとか言うレベルの存在だから、強さを測る気にもならないね」

それがクトゥルフ神話で最強の力を持つ、宇宙の混沌アザトース本来の力だ。

「……でも、今のアイツは弱っている気がする、何かに叩き潰されたのかもね」

「アザトースを叩き潰すって……」

確かに考え辛い事だ、だがアイツが私達が元居た世界では無く、この世界で活動している事を見るに、何かあったのだろう……私達がこっちの世界に飛ばされたのって、案外アザトースのイタチの最後っ屁な気もする。


 「でも、星華ちゃんがそう言うって事は、ある程度の確証はあるんだよね」

豊の言葉に頷く……相変わらず、私の事をよく分かって居る。

「私の中の神格が、アザトースに敵意を向けてるんだよね」

「星華ちゃんの神格って、確か……」

「ニュクス、ギリシャ神話の夜の女神……私の偽名にも入ってるけどね」

「じゃあその神が?」

「そう、実際は相打ちに近いらしい……アザトースは力の大半を奪われ、ニュクスはその存在を維持できなくなったみたい」

 私の中の神格に尋ねてみたら、案外答えてくれた……どうやら魂のネットワークが繋がっている様で、向こうに時間があればある程度は答えてくれるみたいだ。

「それって、死んだって事……でもそれじゃあ、神格を星華ちゃんにあげれないよね?」

「それが……どうやら死産する筈の赤子の入り込んで、自分を再構成したらしい」

とんでもない方法だが、案外珍しい方法でも無いらしい、そこまで追い込まれる事が無いだけで。

「でも、アザトースと敵対してるのに、よく神格をくれたよね」

「それなんだけど……私を名指しで指名して、他の人は駄目って言ったらしい」

「なんで?」

「どうやら、私の親と知り合いらしいんだよね」

 でも、私の親が誰かと聞いたら誤魔化された、それを豊に説明すると、仕方ないと言う。

「神様の考えは難しいからね……宇迦之御霊うかのみたま様も、捧げた物がいつの間にか消えてるから、受け取って下さっては居るんだろうけど、声を聴いた事は殆どないし」

宇迦之御霊うかのみたまは通称を稲荷神と言って、豊の神格でもある……殆ど無いって事は、聞いた事あるんだ。


 そんな話をしていると、兵士達が集まって来て、それ以上は増えなくなった。

……話を聞いていた者の、大体半分ぐらいだ、予想より多いが大丈夫そうだ。

「集まってくれて感謝します、私は出来る限り戦闘を避ける方針で行動し、可能ならば北の宗教国家に備えて、同盟を結ぶ形で決着を付けたいと思います……ですが、戦闘が避けられない場合もあるでしょう、その時の為に、皆にこれを贈ります」

そう言って持って来ていた、十数個の大型トランクを開けて見せる。

「私が作った武器と盾です……急場の為、あまり数を作れませんでしたが、此処に居る人数分ぐらいならあります……普段使い慣れた武器があるなら、そちらを使う事をお勧めしますが、必要であれば使ってください、勿論代金などを求めたりはしませんが、生きて帰って下さい」

 そう言い終わると、さっそく装備を変える者が続出する。

流石に鎧は、体型や身長があるので作らなかったが、盾は三パターン程作れば、ある程度は出来る上、武器も、盾を持ちながら使う物を中心に、十種類はあるからそれなりの人数をカバー出来るだろう。

……大した物では無いが、一応全て魔道具だ、と言っても、切れ味を上げたり、刃こぼれを抑えるような、使用に違和感のない程度の付与だが。


 ある程度待って、これ以上武器を取る者が居ないのを見て、声を掛ける。

「私は出来る限り皆を守るように努める、だから皆は、この国の為に協力してほしい」

全員が力強く頷くのを見て、私も一礼する。

「ここに居る豊と……そこに居るアリスも同行する」

そう言って、兵士達の背後に居るアリーを指さすと、振り向いた兵士たちが驚く……アリーは気配が殆ど無いから仕方ないのだが。

「二人とも私と同じ女性だが……まあ実力は十分にあるから心配しなくてもいい」

その言葉に顔に見覚えのある数人が苦笑いする……確か華相院で何度か見かけた顔だと思う。

……取り敢えず納得したようなので、門を開けるように指示し、再び、声を掛ける。

「それでは出発する……それと道中で、魔狼ウルフを見かけるかもしれないけど、私の眷属だから攻撃しないように」

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