11話 ダンジョンバトル開始
結局アザトースは来なかった。
ベットから起き上がって空のダンジョンへと向かう。
「ん、来たんか、待っとったで」
「バトルの開始は?」
「もう始まるで、邪神が馬鹿を連れて来るみたいや」
その瞬間地面に魔法陣が現れた。
「呼ばれて飛び出て・・・」
「呼んでない」
「あのさぁ・・・せめて最後まで言わせてよ」
ぼやいてるアザトースの背後に居る二つの人影に声をかける。
「お前等誰?」
「俺の名は・・・」
「興味無いからいい、どうせ殺す相手だから」
それよりさっさと始めて欲しい。
「じゃあ始めるよ~死んでも終わったら再生してあげるけど痛いからね~」
再生が痛くないなど一言も言っていない筈だが馬鹿二人は狼狽している。
「ルールはどうする?戦いを仕掛けられた空が決めていいよ~」
「そっちがワシのダンジョンを攻めてきてワシらが守る、ダンジョンコアの破壊かワシらの全滅がそっちの勝利条件、お前らの全滅がワシらの勝利条件」
「OK、じゃあ始めようか」
その瞬間馬鹿どもが消える。
「あいつらのダンジョンとこのダンジョンの入り口を繋げたよ~暫くするとダンジョンに侵攻出来るようになるからね~」
「空、お前のダンジョンのマップを」
「これや」
見た感じただの迷路のようだが、方向感覚を奪う作りになっている。
「暗記した、しまって」
「あと十秒だよ~」
そこでアナウンスが入る。
「最初の一撃は任せとけ」
「わかったわ」
「それじゃあダンジョンバトル開始」
アザトースのアナウンスと共にダンジョンの扉が開き、ゴブリンと子供ぐらいの蜥蜴が飛び込んでくる、対するこちらはゴーレムが一体配置されているだけだ。
「その程度か、お前ら、やっちまえ!」
馬鹿・・・名前知らないから一号二号でいいか、一号は大剣を、二号は片手剣を持っている。
一号が命令するとモンスター共はゴーレムへと群がる。
「・・・馬鹿やのう」
「明らかに罠なのにねぇ」
それが見える通路の角に私と一緒に隠れている空に返すと空はおもむろにゴーレムに手を向ける。
「【炎術・火針】」
空の呟きと共に飛び出した炎の針がゴーレムを貫いた瞬間それは爆発を起こした。
「ゴーレムに火薬を練りこんだったわ」
「自走爆弾だね、自爆装置はなさそうだけど」
「引いてくわ、少しは用心する事も出来るんやな」
・・・私には驚いて慌てて逃げてる様にしか見えないけどなぁ。
「これが全戦力じゃ無いやろうな、星華はそこで見とれ、数を減らしてくるわ」
そう言って空は歩き出した。
甘いな、確かにワシは呼吸が困難な体質やけどそこまでやないし、身体能力は別に低くないわ。
「馬鹿どもに引導渡したるわ」
爆弾に火をつけて投げ、攪乱してそっと近づいてからガントレットの爪が伸びた刃でゴブリン数体を一瞬にして切り刻む。
「そこだ!やれ!」
・・・ちっ馬鹿どもはモンスターを囮にして逃げたか、仕方ないなやるか。
また数体のゴブリンを切り裂いて蜥蜴に鉄爪を突き立てるがはじかれる。
・・・ならこれでどうや?
ガントレットでただ殴りつけるとあっさり気絶する、衝撃には弱いみたいやな。
星華の方にも数体の蜥蜴が走っていったが一瞬で肉片になっていた・・・切り分けてるが食う気か?
・・・まあ、星華が負ける訳ないわ。
ちょっと木の筒を取り出して中の液体を蜥蜴にかける・・・アルコール、消毒用の100%のやつや。
そこに鉄爪を地面に叩きつけると火花が散って引火する・・・後で刃の手入れは必要やな。
飛び掛かってきた一匹のゴブリンの頭を掴むと掌に仕込んである鎌状の刃を飛び出させてそのまま手を下に振り下ろして真っ二つに引き裂いた。
「多いな、終わらせるか」
全ての刃をしまってガントレットに仕込んだ鉄粉を空中に撒く。
少し下がっってから爆弾に火をつけるとそこに放り投げた。
「ほなな、吹き飛べや」
辺り一面が炎に包まれ巻き込まれるのを覚悟して目を閉じる。
「・・・助けてくれたんか?」
いつの間にかワシは星華の腕に抱えられている。
「当然よ、味方の可愛い子に傷を付けたりはさせないわよ」
・・・相変わらずブレないけど助かったわ。
「敵はどうなった?」
「最初の奴らは全滅したよ、ちゃんと私の考え通りの使い方をしたわね」
「これでも殆ど鉄粉を使っとらんわ」
ワシが起こしたのは粉塵爆発、炭鉱とかで大事故としてたまに起きる奴やな。
空気中に燃焼する物質の粉末が舞っている所に火が付く事で起こる連鎖的な爆発や。
「空、息は大丈夫?」
「流石にちょっとキツイわ」
「なら暫く休んでて、次は私が行く」
これは次に来るモンスターが可哀そうやな、星華の目が輝いてるわ。
「ああ、わかったわ、そんじゃあ任せたで」
その時モンスターの足音が聞こえ始めてきた、戦いはまだ終わらなそうやな。