114話 色無き者6
撤退が罠である事を考慮し、帝国軍が撤退した事が確定するまで待った後に、マーガレットを始め、全尚書が会議室へ集合した。
「皆さん、今回も勝利する事が出来ましたが、敵はまた攻めて来る事でしょう、そ……」
「お待ちください」
マーガレットの言葉を遮って発言する、彼女の決意は聞いた、それは多くの恨みを受けるもの、ならば、それを彼女が実行する必要は無い。
「私は専守防衛の態度は素晴らしい物だと思います……ですが、常に相手に攻められ続け、一方的な被害を出し続けてまで、それを守る必要は無いと考えます」
それに対して、宰相が反発するが問題ない、宰相には私の発言に反対してくれと言ってある……要するに、ただの茶番劇だ、だが、国が関わる以上、その茶番が必要な時もある。
「この国は実力主義であって、帝国主義ではない、法に照らした上でも侵略は罪であるでしょう!」
……これでいい、一度は敵に回った宰相だが、他の尚書も今だけは味方している……軍務尚書には、茶番がばれている様だが。
「なるほど……会議で私に勝ち目は無いようですね」
言いながら、マーガレットに視線を向ける……やりたい事は分かってくれたようだ。
「ならば、どうする気ですか?」
予習したら、顔に出るだろうから一切伝えて居なかったが、それが良かったのか、自然な態度になって居る。
「そうですね……こうしましょうか」
素早く呪文を唱える。
「荊よ、黒き鳥籠となりて彼らを保護せよ【荊籠】」
全員の立っている場所を囲う様に、数十の黒い荊が出現し、頭上で結ばれて鳥籠の様になる……隙間はあるが、螺旋状に巻き付いている荊が、それぞれに四本あるので多分自力では抜けられない筈だ。
「注いだ魔力から想定すると、それは十時間ほどで枯れるでしょう……その後は追いかけて来るなら、どうぞご自由に」
そう言って会議室の扉を開けて直ぐに出て行く……少し魔力を籠めすぎた様で、思って居た以上に効果時間が伸びてしまったが、まあ仕方ないか。
負傷していない兵を集めて、宣言する。
「私はこれより、長い間続いてきた戦争を終わらせる為に西の帝国へと侵攻を開始する……これは女帝マーガレットの命令では無い、つまり、本来なら付いて来た者は、罰を受ける事になるのだが、この行動は全て私の責任で動く、よって、付いて来た者が罰を受ける事の無い事を、出来る限りだが、約束する」
そこで一旦深く息を吸って言葉を続ける。
「防衛による優位性が無い以上、非常に危険な戦いになる可能性がある……正式な命令でない以上、無理に付いて来る必要は無い、覚悟がある者のみ付いてこい、西の門の前で一時間程待つ、その間に来た者には非常に辛い戦いを強いる事になるだろう」
……全力で脅しておいた、これでいい、後は待つだけだ、鳥籠が壊れるまで、まだ時間はある、考える時間を与えても構わないだろう。
さて、私は先に西門へ向かうとしよう、