表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
9章 顔無き者
118/289

113話 顔無き者5

 攻撃を受けた防壁は、予想以上に酷い状況だった。

完全に崩れてはいない物の、石で出来ている筈の防壁には、数人が通れる程の穴が開き、穴の周りの部分は石の表面が溶けている……どんな火力なのか想像もつかない。

私は、再び魔術を使おうとした紅蓮に、死角から距離を詰めて切りかかる。

「甘いな!」

簡単に防がれるが、そもそも当たるなどとは思って居ない。

「それはどうかな」

空いた左手で強力な冷気の塊を叩き込む。

【氷撃】

どうやら、傷を負わせるには至らなかったが、防壁への攻撃を防ぐ事は出来た様だ……防壁は元々攻撃を防ぐ物なのだが、それに対する攻撃を防がないといけないのは変な気分だ。


 「……なるほど、お前が夜神星華だな」

「何故、私の名を……ああ、輝夜に聞いたのか」

「あの空という者は居ないようだな」

「……あんたに殺させる訳には、いかないからね」

「そうか……さあ、やろう!」

言うなり振り下ろされた大剣を、匕首で受け止め……重い!、この匕首じゃ無かったら武器ごと切り殺されていた、しかも片手でこの威力……不味いな、思って居た数倍は強い。


 「……なるほど、輝夜が気を付けろと言う筈だ」

「褒められて悪い気はしないが……あんたも油断できる相手じゃない」

悠長に話しているが、お互いに武器を構えて、いつでも攻撃できる状態だ。

「出来れば、お前の相手など止めて、さっさと帰りたいんだが……そう言う訳には行かないんだよな」

そう言って、紅蓮は大剣を薙ぎ払う様に、横に振り回す。

それを匕首で、下から上に、掬い上げるように受け流しながら、身を屈めて、大剣を潜り抜ける……物凄く怖い。

「……そろそろ、私からも行かせて貰うよ」

匕首を両手で握り、斬撃よりも、突きながら刃を戻す時に切り付ける動きをメインに、素早く攻め立てる。

「ちっ!」

予想通り、大剣では小回りが利かなくて、防ぐのが精一杯のようだ……だが、容赦できる相手じゃない。

攻撃を緩めず、更に激しく、細かい攻撃を繰り返す内に、戦っている場所が、徐々に防壁から離れていく。


 「ハッ!」

全力の薙ぎ払いを、後ろに下がって回避する……少し掠って、何時もの黒いドレスが少し切れたが、まあ問題ない、前にも説明したが、このドレスは下手な服より動きやすい。

「……あんた、背中が、ガラ空きだよ」

「なっ!」

紅蓮は後ろから来た豊の援護射撃を、撃ち落とした……驚異的な反射神経だが、私がそんな隙を見逃す筈が無い。

匕首が紅蓮の右肩に深々と突き刺さった。

「……不味いな」

そのまま匕首を引き抜いて、切られない程度に離れる……追撃しないのは、焔での反撃が怖いからだ。


 「……私は北の宗教国家との戦いを考えると、あんたを此処で殺したくない……それに本気で反撃されたら多分相打ちになるだろう、ここは引いてくれないか?」

私がそう言うと、紅蓮は頷く。

「そうだな、俺もここで死ぬ気は無い」

お互いに向き合ったまま、射程から出るまで、後退りで離れ、お互いの陣へと戻る。

 間もなく、帝国軍は撤退していった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ