105話 罪は私を緋色に染めて28
鼓膜が破れそうな音と共に敵の姿が吹き飛ぶ。
見ると盾は完全に壊れており、頭部は半分消し飛んでいた。
……こんな所で使うべきじゃないよな、変な体制で使ったから右腕が痺れている。
「星華、それは?」
耳鳴りから復帰したらしい空に聞かれ、まずは立ちあがって説明する。
「アザトースに私の家から持って来て貰った」
「銃やな」
「そう、トーラス・レイジングブル、弾は454カスール……と言っても詳しくないと説明するだけ無駄だけど、大経口のリボルバーで、この弾は、まあ大型の獣を倒すのに使う奴だね」
有名な44マグナム弾がクマを倒す最低限の威力を求めた物で、これはその二倍前後の威力があるから凄まじい物だ。
「そんな代物を持っとったんか」
呆れたような声に笑って答える。
「まあ、私はカタギの人間じゃ無いからね」
賭場での用心棒以上に色々やってる。
「そんな事より先に行くよ」
そういってリボルバーの弾を確認する……あと五発、まあ十分だろう。
レイスを一体呼んで銃を持たせておく、基本的にトンファーを使っていかないと弾が無くなる。
少し先に進むと、通路にの正面に大きな鉄の扉が表れる。
「多分横道のどこかに開ける方法があるんやろな」
「そうだね、まあ下がってて」
そう言ってトンファーの打突部分をひねると、ペットボトルのキャップの様に外れる。
そこに別の打突部分を取り付けれるようになっていて、今回は円錐状のキャップを取り付けた。
これは貫通力は高いが、破砕威力が下がる物だ。
それで扉の蝶番を全力で殴った。
「よし、開いた」
「ダンジョンの壁は不壊やなかったか?」
「だって蝶番は壁じゃない」
屁理屈に聞こえるだろうが、アザトースのシステム設定の緩さだったら多分行けると確信していた。
その後、何度か襲われたが、さほど苦戦する事無く先に進めた。
それとどうやら、氷の洞窟では、私の荊がまともに働かないようだ。
暫く進むと最後のボス部屋があった。
「どう見てもボス部屋やな」
扉の前でそう言った空に頷く。
装飾が豪華すぎて、ボス部屋だと簡単に分かる。
「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……」
「鬼なら、此処に居るやないか」
軽口を叩きながら扉を開けると……ボスもやっぱり蜥蜴だった。