10話 準備期間
取り敢えずダンジョンに帰還してセイにも事情を話す。
『私たちはどうすれば?』
「今回は空のダンジョンのマスタールームで見学かな、戦う必要は無いよ」
空が知らない相手なら大した事無いはずだ・・・空は私と違ってある程度以上の生徒は覚えている筈だから。
詳しい戦力確認が必要だと思い、空をダンジョンへ招待すると直ぐにやってくる。
「なんや、どうかしたんか?」
「空の武器を見ておきたくてね」
「ワシの武器はこれやな」
そう言って空が見せたのは肩まで完全に覆う金属の籠手だった。
「ガントレットか」
「そやな、持ってみるか」
渡されて驚く・・・とても軽い、明らかに丈夫なのに三キロ程しかない、その上関節が多くて滑らかな動きが可能で、さらに何かある。
「気づいたか?それには仕掛けがあるんや、まずこれを見てみ」
そう言って空はガントレットを腕にはめると内部で何か操作をする・・・すると爪の部分が伸びて敵を貫く刃になる。
「まずという事は、他にもあるの?」
「ああ、今見せる訳にはいかんけど火薬とかの粉末を仕込んでおいて空中にばら撒いたりも出来るで」
確かにそれは今見る訳にはいかない、辺りが火薬まみれになるのは困る。
「それじゃあこれあげるよ」
「鉄粉か、なるほどな、わかったわ」
一瞬でその意味を理解するのは流石だね。
「そんで、爆弾作ってきたで」
そう言って空はいくつかの小さな木製の筒を私にくれる。
「ありがとう」
「何も書いてないのが普通の爆弾で黒い筒が強化型やな、そんで持って黄色の筒は閃光弾、ついでに試作で作ってみた緑のは毒薬を散布するやつや」
「解った貰っておくわ」
「毒薬は在庫が無くてな、どうにか手に入らんかな」
「現在では出来ないかな、一応考えておくわ」
確かに毒は便利だ、上手く使えば薬にもなる。
空がバトルの用意に帰った所でショップを確認する。
・・・これだ、100DPで一冊購入する、タイトルは異世界の植物全種、ついでに残りの100DPも使って動物の物も購入しておいた。
今回のダンジョンバトルでは使えないだろうけれど問題ない。
軽く目を通すと鹿が居た・・・魔物扱いだった。
っと、そんな事はどうでもいい、今は戦闘の準備か。
村から奪って来た物はほとんど武器にはならないから諦めるしかない。
空に貰った爆弾はドレスの中に仕込んでおく。
基本はこれでいいかな?まあどの道にしろ問題なんて無いのだけど。
時間が余ったので外に出て毒草を摘んで来てそれを磨り潰して水を加えペースト状にして小さな壺に入れてそれも隠し持つ。
後は匕首の手入れか。
水で軽く流し、水から出して軽く一振りして水を飛ばす。
刃こぼれが無いかを確認して鞘に納める。
「手入れはしっかりしないとね~」
「何で来た、アザトース」
「疑問形にすらしてくれないって・・・・・・まあいいや、ダンジョンバトルに参加するんだよね」
「そうだけど」
「まあ頑張ってね~って事だけ言いに来た」
「贔屓では?」
「別にいいじゃん、邪神なんだから」
・・・それもそうか、それにこいつの性格から考えて止めても無駄だろうし、止めても得はない・・・いや私は戦いを楽しみたいから邪魔されるのは嫌だが、こいつに限ってそれは無いだろう。
「せっかく来たんだからジュースでも飲む?」
「飲むよ~」
「ほい」
小瓶を渡すとそれを一気飲みしたアザトースは噴き出した。
「・・・ナニコレスッパイ」
「あの果てしなく酸味の強いリンゴジュースを火にかけて濃縮してみた」
「濃縮還元の原液だね、覚悟して飲んだら結構美味しいかも、でも何で作ったのコレ?」
「料理に使えないかと思って」
「まさかの調味料扱い、実験されてた~」
まあジュースじゃない、飲み物でもない、どちらかと言うとポン酢に近い。
「アザトースなら死んだりしないでしょ?」
「死なないけどさぁ、これは武器だよ」
噴霧すれば強力な目潰しになるだろうね。
そんな事は措いといてベットへ向かう、今日は早く寝よう、明日心のままに暴れる為にも。
「もう寝ちゃうの~?」
「明日は戦いだからね、それとも何?一緒に寝る?」
「冗談だよね・・・」
「いや、本気だよ?」
「このクソレズどうしてくれようか・・・」
「まあベットに来なかったらいいんじゃない?」
「まあそうだけど」
早く寝るためにも話を切り上げる。
「それじゃあ、おやすみね、あとベットに近づいたら引きずり込むから」
「あんたはミミックか、おやすみね」
さっさと寝よう、明日が楽しみで眠れそうにないけど。