番外編 happy new…year?
「……んで、数日前にも呼んどいてまた呼び出すって今度は何?」
今度は招待状も無く、いきなり転送された。
「いや、今日大晦日なんだけど」
「知ってる、けど日付変わったばかりだよね」
「はい、その通りです」
「普通は夜に呼ぶものじゃないの?」
「今は夜だよ~」
まあ確かに夜だ、感覚的には大晦日前日のだが。
「まあ、呼んだからには、なんかあるんでしょ?」
「あっちで椀子蕎麦大会がもう直ぐ始まるけど……」
「ルールは?」
「二時間で一番多く食べた人が勝ち」
……二時間も蕎麦を啜り続けるって、もはや拷問ではないか。
「ちょっと、どこ行くの!」
だが、引き止めるアザトースは無視して会場に向かう。
こうなったら赤字になるまで食ってやる。
開催場所は校庭の端に席と机をずらっと並べた場所で、開始ぎりぎりに席に着く、他の参加者を気にする必要は別に無い。
開始の合図で蕎麦を口に運ぶ……急ぐ必要もあんまりない、二時間食べ続けれる奴が他に居るとは思えない。
……数分経過、まだ【暴食】を発動する必要は無い。
……十五分経過、まだまだ問題ない。
……四十五分経過、そろそろ飽きて来た。
……一時間経過、【暴食】を発動、しかし飽きている。
……一時間十分経過、別行動していた豊に連絡して、葱と摩り下ろした生姜を持って来て貰った。
……一時間半経過、薬味を入れると随分ましになった。
……二時間経過、やっと終わった。
「結果発表~!優勝は……見れば分かるね」
少なくとも数百は食べたと思う、恐ろしい事に空だった【暴食】のストックがこれで満タンになった。
……少なくとも暫くは蕎麦を見たくない……年越し蕎麦は温かい奴ならまだ大丈夫かな。
その後アザトースにトロフィーを貰った……使い道が無い。
食べた数が記してあったが、思って居た以上に食べていたようだ。
「いや、食べすぎでしょ、試合中に取り寄せてたから大赤字だよ」
「私を呼んどいて、大食い対決なんてやるからでしょうが」
「ま、良いけど、それより豊はどうしたの?薬味を持ってきた後から、姿が見えないけど」
「疲れたから、帰って寝るって」
「応援は……まあ必要ないよね~」
「そんじゃあ私も帰るわ」
そういってさっさと帰る。
ダンジョンに戻って、既に寝ている豊を確認して、ふと思い出す。
……まだ大晦日始まったばかりじゃん、このまま起きて「明けましておめでとう」って言いそうだった。
「……寝るか」
ベットの真ん中で寝ている豊を少しだけ奥に転がして、布団に潜り込み、横からの温もりにゆっくりと微睡んでいく。
……絶対にまた直ぐに呼び出されるんだろうな…………もう諦めよう。