102話 罪は私を緋色に染めて25
「出来た……けど」
料理が出来た……失敗はしてない、でも……ちょっと……
「多すぎるよね、星華ちゃん」
作り過ぎた。
「いや、材料が余ってたもんで」
目の前には大きなテーブルに隙間なく料理が山の様に盛られた皿が置いてある。
まあ、カロリーの低い物が殆どだから、食べるのに抵抗は無いが。
「そもそも星華ちゃんって、料理上手だったんだね」
豊と一緒に料理を食べて居ると、今更な事を言われた。
「前居た世界では、生活費の為に鉄火場とか遊郭で働いてたからね……主に用心棒としてだけど。
それでも女だからか、鉄火場の元締めとか花魁の御姐さんとかに料理を頼まれる事はあったから……物凄く大雑把な注文から、何を作れば良いのか考えるのが大変だったけど」
何か美味い物だとか、手軽に食べれる物とか、割と適当な条件で頼む人が多かった。
「……星華ちゃん、元の世界に戻りたいの?」
少し懐かしむ様だったからか、豊にそう言われるが、少し笑って首を振る。
「戻りたくない訳じゃないけど、この世界を見捨てて帰るのは嫌だ……どうせなら好きな時に行ったり来たり出来るようにしたい」
「でもそれって……」
「現状アザトースしか出来る奴を知らない」
アイツに頼んだら、なんか変な事を要求してきそうだ、いや間違いなく要求する。
この世界に私達を連れて来た魔法陣は覚えてるが、それは、『この世界に来る為の術式』であって、『帰る為の術式』ではない。
目的地を指定する部分の内容を変更すれば、帰れるとは思うが、そもそも元居た世界の、元居た国の、知ってる場所の魔術的座標なんて知ってる訳がない。
転移に使う魔力は……暴食の貯蓄次第だろう。
……まあ現状では無理だ。
「それにしても減らないね」
テーブルの上の料理はまだ半分ほど残っている。
「星華ちゃん、もう結構な量食べてるよ」
「そうだね、暴食の効果でまだまだ食べれるけど」
暴食でエネルギー化すると、満腹感が得られないからいくらでも食べれる……勿論だが、エネルギー化しなければ、食べれる量は減るが満腹感も得られるようだ……エネルギーの貯蓄限界が来たら一気に食べれなくなる気もする。
取り敢えず、目の前にある分なら食べれるだろう、脂肪にならないから、エネルギーを蓄えておく事に損は無い。
「ん、メールだ」
ダンジョンメニューを開いて、内容を確認すると空からだった。
「なにかあったの?」
「豊とダンジョンバトルする前に、空の救援でダンジョンバトルをしたんだけど、その時負けた奴らがもう一度勝負を挑んだみたい……空に十年間の取得DPの半分を取られるようになってたんだけど、結構な額を空に支払って免除して貰ったみたいだね……あと空は今まで以上に搾り取る気だ」
それだけの額をこの期間で稼げるなら、免除しない方が儲かるのだから、免除してまで勝負を受けたって事は、今まで以上に儲ける気に決まっている。
「それで救援要請?」
「そう、これは相手側の要求でもあるみたいだね……馬鹿だと思うけど、それだけ自信があるって事だから気を付けないと」
「……行くの?」
聞かれて、現在の時間を確認する。
「開始までもう少し猶予があるから、食べ終わったら行くよ……豊も一緒にね」
そう言って箸を取る……いくらお腹に溜まらないからと言っても、精神的にこの料理の量も結構な強敵だ。