99話 罪は私を緋色に染めて22
もう何かが来ることは無さそうだから、ダンジョンの機能で豊に連絡を取り、会議室にマーガレットと刑部尚書のみを入れるように指示する。
最高責任者のマーガレットはもちろんだが、刑部尚書を呼んだのは宰相の処遇に関する権限が他の者より高いからだ。
「終わりましたか、この度は申し訳ありません」
部屋に入るなり謝罪を行うマーガレットを手で制する。
「この件は私に責任がある、宰相がこのような事をしたのは私の存在が原因」
「原因は貴女にもありますが、悪魔と契約をしたのは宰相の責任、処罰は宰相が受けるべきでしょう」
刑部尚書が冷静にそう言う……冷酷にも聞こえるが、刑部尚書は大体こんな感じの様だ。
「その通りです、罪は私にある、裁きを行って下さい」
「宰相、先ほどとは随分と態度が違いますね」
「そりゃあ演技だろう」
私の言葉に壁にもたれたまま、宰相は頷く
「ああ、その通りだ、敵対者を演じなければ貴女と戦うことなど出来ないからな」
……まあそうだ、私は明確な殺意が無い限り、まともに相手をしない。
取り敢えず状況が伝わった所で私の考えを伝える。
「私の願望としては、宰相にこのままの仕事を続けて欲しい、問題を起こしたとは言え、さほど被害は出て居ない、この国に有能な人材を使わない余裕は無いだろう」
そう言うと刑部尚書が口を挿む。
「そうですか、宰相達の口止めは問題無いでしょうが、書庫の件と、国庫の記録改竄についての処理はどうなさるつもりですか?」
刑部尚書の疑問は尤もだが、考えてある。
「書庫に関しては盗まれたとは断定していなかった、記録の手違いという事で何とかなる筈だ、国庫に関しては……実は私が犯人」
「……それはどういう事ですか?」
マーガレットに少し冷めた目で見られた。
「正当な手続きで貸している物を、少し必要になって正当な手続きを踏んで取り出した時に、記録した数字のゼロが一つ多かった事にさっき気付いた……それの訂正に行ってたのが会議に遅れた原因」
「それなら問題無いでしょう、多少の減給は行うが、地位の剥奪が必要ない程度には減刑できるでしょう……それでよろしいですか?」
「マーガレットに最終権限はある、私は提案しただけ」
最後の最後でマーガレットに全てぶん投げる。
「……構いません」
「了解しました」
そう言って刑部尚書は色々とやる事が出来て部屋から出て行く。
マーガレットも他の尚書に会議の終了を告げに出て行った。
「感謝する」
「その必要はない、この国の為に最善の事をするのみ」
「……荊の道でもか?」
宰相の言葉に苦笑する。
「荊の道か……荊の扱いなら問題は無い」
「なるほど、そうでしたね」
宰相も一緒に苦笑する……もう宰相は問題ない、だが、面倒なのはまだ居る、それを何とかするのが私の役目だ……皆が纏まらなければこの国は、いずれ北の宗教国家に呑まれてしまうだろうから。
……それでも、今はすこし休んでも怒られはしないだろう……そもそも怒る人は居ないのだが。