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8:暗黙の掟

微々たるグロ描写があるので苦手な方は御注意。

ちょっとした出来心のつもりだった。




「…ぜぇっ…はぁ…!!」




積み荷を拝借して、自分の物にしたり自分のルートで売ったり。


稼ぐのには、ちょっと悪い事をしたほうが圧倒的に効率的だからな。




「た…助け、て…!!」




どれだけ逃げたかわからない。でも、背後の足音から逃れるために、夜の森をひたすらに走る。




「いつまで逃げるんだー?」




淡々としているような、からかっているような、可笑しそうなような、少女の声。


どこから聞こえているのかよくわからない。




「…うわっ!!」




とうとう派手に転んだ。情けなく、顔面から地面に着地する。


すぐに獣の唸り声が聞こえて来た。




「透明化の魔法ってのは…まぁあるけど、高度だからなぁ。使える奴は滅多にいねーよ」




唸り声と少女の声。恐怖で発狂しそうだ。


俺は誓って『運び屋』の荷物に手は出してない。絶対に。




「そしたら…目隠しだと『被害者が見えないとしか言わない』ってのに引っかかるからさァ。


そしたら『催眠』じゃねーかなぁって。『お前は馬車を襲われたけど、犯人は見ていない』とか言ってな」




だがその考え自体、甘すぎたのだ。それに気付くのが俺は遅かった。遅すぎた。


背中を獣の足で踏みつけられた。鋭い爪が少し肉に刺さり、痛みが走った。




「馬車が通るのは石畳だもんな?足跡も残らねーし、ばれなかっただろうよ」




何かおかしいと思ったんだ。知らない顔の馭者だと。


代理で隣町まで行くことになったのだと笑う青年だと。




「ひぃっ…!!」




『仕事屋』は俗世から浮いた、特別な存在。彼らは俗世へ干渉しない。




「騒ぎを起こす場所を間違えたなァ…?」




眼前に、ブーツを履いた足が見えた。




「た…頼む、助け…」




声が上手く出ない。




「はぁ?」




どうにか顔を上げると、赤い頭巾の少女がニタリと笑っていた。




『仕事屋』は俗世へ干渉しない。


『仕事屋』の仕事を俗世の人間は邪魔してはいけない。


直接的にではなくとも、一切の邪魔は許されない。




誰かがそう決めたわけじゃない。生きていると勝手に知っている、暗黙のルール。




「さて、オオカミ…飯の時間だぜ?」




もしも邪魔をしてしまったら。末路なんて嫌でもわかる。





運び屋(赤ずきん)』は『化物(オオカミ)』を飼っ






















「…お前らってさぁ…」

「んー?」


ぐちゃぐちゃと嫌な音が聞こえる。あと、鉄の匂いも。

木にもたれかかって、言葉を続けた。


「それが主食なの?」

「いや、別に?食わなきゃ死ぬ、とかじゃねーよ」

「食う奴多いのに?」

「…お前、確かクロワッサン好きだっけ?」

「そうだな」


この状況で飯の話をするのも可笑しい。


「食わないと死ぬ?」

「馬鹿言うなよ」

「そういう感じ。一生食えないってなると凄いヤダけど」

「…あぁ…」


確かに、それは私も嫌だな。


「御馳走様っ!」

「全部食ったか?」

「え?顔残しちゃった。残しといたほうが良くない?」

「…まぁ、そうだな」


むしろ残してなかったら1発ぶん殴る予定だったのに。こいつはそこそこ頭が回る。


「『見せしめ』にしないとなァ?」


自分の口角が吊り上るのを感じた。


「おー、怖」

「良いからお前はどっかで身体洗って来い。汚ぇ」

「おーおー、後ろから突き飛ばしたりしないならそうしよう」


久々の『好物』に、どうやら機嫌と調子が良いらしい。

冗談か本気かわからない言葉に、いつもなら蹴りを入れるけど今日はしないでおく。


「えー…川の音、こっちからか」


すたすたと歩き出した、その背中に着いて行く。


「…おぉ、すげぇ色」


ふと下を見て、ぽつりと零した。




月に照らされて、自分の頭巾と同じ色の足跡が見えた。




副題:『赤ずきんはオオカミを飼っている』




『ボーナス』は割とマトモでした/byオオカミ


月の光で照らされたとしてもそんなにハッキリ赤い色が見えるかどうかは微妙だと思います。

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