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7:情報屋と情報源

「で、白雪。本題なんだけど…」

「「「白雪姫を危険な事に巻き込む気か!?」」」

「おいオオカミこのうるせぇ小人共黙らせな」

「えーと…どうやって?」


ってかもしかして、こいつら赤ずきんのこと嫌い?






「任せる」


そう言う赤ずきんの眉間の皺がいつもより多い(気がする)。


「えーと…」


まぁ、赤ずきんが口を開く度にぎゃあぎゃあ騒ぐのだから、機嫌を損ねるのはわかる。

とりあえず(人間体のままだけど)牙を剝き出しにして、小人達を睨みながら低く唸る。


「「「ひいぃっ!!!」」」

「…こんなモン?」


小人達は身を寄せ合って部屋の隅に固まってくれた。


「上出来だ」

「うぃっす」


…こいつが手段を選ばずに黙らせてくるから、小人達も警戒してるんじゃないかなぁ…


「本題?本題ってなぁに??」


ティーカップ片手に、白雪姫はきょとんとしていた。


「あぁ、お前に聞きたい事があってさ。何か聞いてないかなーと思って」

「何、何?」


白雪姫、目がらんらんと輝いてるけど多分そんなに楽しい話じゃないよ。


「最近荷馬車が襲われまくってるって話、知らねーかな?」


いや、聞きたい事は大体合ってるけど聞き方はそれで良いのか。

伝言ゲームはこうやって話の信憑性が落ちていくのか。




「知ってる!『出荷に行く馬車』が襲われてる話でしょ!?」




「ええええ知ってたぁぁぁ!!」

「情報屋ナメんな」


動揺する俺へ、赤ずきんから蹴りを入れられた。


「いやびっくりするわ!こんな人里離れた花畑に住んでる子が、何でこんな物騒な話知ってんの!?」

「聞いたからだろ」

「誰から!?情報源、何処!?」


こんな世間知らずオーラ全開の子がどうやって情報仕入れてんの!?


「あぁ…情報源はあっち」


くい、と赤ずきんは相変わらず隅で震えている小人を指差した。…って、え?


「小人?」

「小人共」

「…は?じゃ、あいつらが『情報屋』で良くない?」

「は?」


聞き返されたけど、俺の疑問は真っ当だと思う。


「だって、それってあいつらがどっかで聞いてきた事を更に白雪姫が聞いて、って流れだろ?わざわざ白雪姫挟む必要あんの?」

「あいつらは仕入れた情報を『喋りたいだけ』なんだよ。『ストックできない』の」

「は?」

「だから、喋るだけ喋ったらその時点で『忘れる』んだよ。次に同じ事聞いても覚えちゃいねーの」

「小人さん達、すっごくおしゃべりが好きなのよ。街まで行くと、いつも面白い話いっぱい聞かせてくれるのよね!」


私もおしゃべり大好き!と白雪姫がニコニコと言う。

や、待って。一気に言わないで。

しれっと凄い事が聞こえたんだけど。


「白雪姫、その小人達の話…まさか『全部覚えてる』の…?」

「うん!」


ええええ。マジで!?

『全部』って何!?いつからいつまでの情報!?


「まぁ『情報源(7人の小人)』と『保管庫(白雪姫)』合わせて『情報屋』っつったほうが良いかもな」

「へぇー…」


びっくりして逆にリアクションが取れない。

マジかよ…このぽやぽやの女の子にそんな頭脳が…



「…痛っっ!!!」

「え?どうしたのオオカミ君??」


突如悶絶した俺を見て、白雪姫はきょとんとした。

このっ…赤ずきん……!!本気で脛蹴って来やがった…!!


「お前のせいで話がめちゃくちゃ逸れた」

「す、いま…せん、ねぇっ…!!」


足癖が悪過ぎやしないか、この女。


「で、何だっけ?『出荷に行く馬車』が襲われるって?」


何事も無かったように、赤ずきんは白雪姫に向き直った。


「うん!」

「…荷物盗られるんだよな?…例えば?こっから1番近い街の話で良いから」

「え、積み荷の話?えっとねぇ…石炭でしょ、この辺で採れる薬草と、果物も。あとねぇ、ガラス細工!あれ、綺麗よね!」

「うん?待て、それって私の村の最寄り街の話??」


俺も思った。『ガラス細工』って、確かその街の工芸品だ。


「そーよ?」

「…??」


赤ずきんの家から白雪姫の家まで、日帰りはできるけどそこそこの距離がある。

白雪姫の家から1番近い街が何処なのかは知らないけど、多分赤ずきんの村の最寄り街ではない。


「1番近い街の話っつったよな?」

「え、でもその話、その街でしか聞いたことないもの」

「え、そーなの?」


さらっと得た情報に、思わず聞き返してしまった。


「そーよ?」

「へー…もっと色んな所で起きてる話かと思った…」

「何で?」


白雪姫がきょとんとして首を傾げた。え、何でって…あれ?


「え?…何でだろ」


確かに、言われてみれば俺や赤ずきんが聞いた情報の中に『複数の街で』という情報はあっただろうか。

…そういや『近隣の街』、『荷馬車が襲われる事件が多発』くらいしか聞いてねーな。


「あはは、伝言ゲームみたいねぇ。色んなお話が減ったり、増えたり!」

「…そーね」


人伝の情報は巡りに巡って、全く別の情報になったりする。

そう考えると『ほとんど巡ってない』白雪姫からの情報は、信頼できるのだろう。


「…そこの街経由して、別のトコに行く馬車は?襲われてる?」


しばらく何か考えていた赤ずきんが口を開いた。


「襲われてないって」

「別の土地で仕入れた品積んで帰って来る馬車は?」

「襲われてないって」

「…街に入って来て、帰る馬車は?」

「襲われてないって」

「…出荷の馬車だけ?」

「うん!」


その問答を聞きながら、俺は首を傾げた。

…何でそこまで馬車の区別がハッキリ付いてんの?


「…あとさぁ、何か犯人が『見えない』とか聞いたんだけど?」

「あぁ!うん!見えないんだって!」

「それ、どういう意味?透明な奴に襲われんの?それとも目隠しでもされんの?」


後者はまぁどうにかできるにしても…前者は何だ?魔法の類?

ここで白雪姫は首を傾げた。


「うーん、わかんないの」

「えっ」

「皆、『見えなかった』としか言わないんですって。だから『どう見えなかったのか』はわかんないの」

「??」


いよいよ俺は話に着いて行くことができなくなったようだ。




「…へぇ…」


話を一通り聞いた後、赤ずきんはしばらく考え込んでいたが、立ち上がった。


「わかった。ありがとうな白雪。昼飯とお茶、御馳走様」

「えー、もう行っちゃうの??」


残念そうに白雪姫が言ったが、部屋の隅からは安堵の溜め息が聞こえた。


「ん。また来るよ。いきなり悪かったな。…あ、これお土産」


そう言って赤ずきんは包みを渡した。中身は赤ずきんの母親の特製パウンドケーキ。


「わぁ!良い匂い!ありがとう!」


ぱぁ、と白雪姫の顔が輝いた。


「さっさと帰れ!」

「俺達の分もあるんだろうな!?」

「白雪姫が寂しがるから、たまには顔出せ!」


何だろう、小人の中に1人か2人、赤ずきんに多少友好的な奴がいる。


「ほらよ」


赤ずきんは小人達へ、金貨の入った袋を投げた。

…白雪姫への代金はお菓子で、小人への代金は現金ね…。


「じゃーな」


赤ずきんは小さく笑って白雪姫に手を振った。


「また来てねー赤ずきんちゃん!」


白雪姫も嬉しそうに手を振る。

俺は赤ずきんに続いて家を出た。


「ハティ君も!また来てねー!」


背中に飛んで来た声に、恥ずかしいから振り向かないで手を振っておいた。






「で、どうすんの?」

「今日中に潰す」

「犯人の特定とか…今日中!?」


しれっと恐ろしいことを言う赤ずきんを見る。赤ずきんは首を傾げた。


「いや、流石に明日までかかるか…?でもなぁ…」

「お前、犯人わかってんの!?」

「馬車の検問所の奴。それ以外にあんなに正確に馬車の特定できる奴がいりゃ、話は別だがな」

「はぁ!?…何で…は良いや、『見えない』とかいうのは!?」

「それも大体見当付いてる」


ここで赤ずきんは俺を見て、ニタァ…と笑った。


「…何?」

「仕事だオオカミィ…」

「俺は大体仕事してんだけど…で、何」


面倒な予感しかしない。




「ちょっとした小芝居と…ボーナスだ!」




ボーナスにも嫌な予感しかしないのは、赤ずきんの日頃の行いが悪いせいだと思う。



副題:『小人の中で赤ずきんに多少友好的なのは1人だけです。』



他の皆は赤ずきんを怖がってます。

こんなに更新できないとは思ってなかった。

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