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62:白雪姫の大冒険

むかーしむかし、ある森のなかのちいさなお家に



『白雪姫』という、かわいらしい女の子が住んでいました



白雪姫は、7人のこびとたちと毎日楽しくくらしています



白雪姫はこびとたちが大好きで、こびとたちも白雪姫が大好きです。



森のなかはきけんがいっぱいなので、



こびとたちは、白雪姫に『あぶないところには行かないように』といつも言いきかせています



なので白雪姫はおりょうりしたり、おそうじしたり、おうちのなかで過ごします



せいぜい近くの湖までピクニックに行くくらいです



それについて、白雪姫はとくにふまんはありません



まいにちが楽しいのですから




そんなある日、




「皆!私ね、お出掛けして来る!」




と、白雪姫が笑顔で言うので、




赤い色の服の小人は持っていたお皿を落とし、



青い色の服の小人は飲んでいた紅茶を口や鼻から吹き出し、



黄色の服の小人に至っては気絶しました。







「ちょ…ま、まままっ、待って、ちょ、え!?」

「何よぅ、その反応」


多少の違いはありますが、7人の小人が7人とも激しく動揺したことに白雪姫はご立腹です。


「しし、しら、しりゃゆきひめっ…!」


橙色の服の小人は手をガタガタ震わせ、噛み噛みで続けます。


「ぼ、ぼく、僕たちの聞き間違いかもしれないから、もう一度言ってくれる?何て言ったの?」


確認は大事です。

後から『言った』『言ってない』の問答をする事ほど、無駄な事はありません。


「もう!ちゃんと聞いててよね!」


ふくれっ面の白雪姫はもう一度言いました。


「お出掛けするの!」


確定です。

白雪姫は確かに『お出掛けする』と言いました。

買い物すらほとんど行ったことの無い白雪姫が、です。


「緑ー!!」


紫色の服の小人が悲鳴をあげました。

すぐ傍には緑色の服の小人がぶっ倒れています。


「もうっ、何よ!」


白雪姫のほっぺたが更に膨れます。

リスもびっくりです。


「ダメだよ白雪姫!」

「外は危ないんだよ!?」


橙と青色は口々に言います。


「知ってるわ!だからね、誰か一緒に行こ?」


橙と青色が頭を抱えます。

2人の奥で赤色と紫も頭を抱えています。


「白雪姫…『外は危ない』の意味、わかってるのかな…」


世の中物騒なのです。

まぁまぁの身なりの子供がふらふら歩いていたら、誘拐されてしまうかもしれません。


ですが、今回はそういう話だけでは済まないのです。


白雪姫は『情報屋』です。

色んな土地の、色んな人の、色んな秘密を知っています。

色んな人が情報を求めて、お家にやって来ます。


そんな白雪姫が外を出歩くとどうなるのでしょう。

国家機密が服着て歩いているようなもんです。


そんな白雪姫にもしもの事があったらどうなるのでしょう。

機密の漏洩とかそんなレベルではありません。

白雪姫の情報網は、国一つひっくり返すのには十分過ぎるのです。


「姫さんよ…お出掛けってのは何処に行くつもりなんだ?」


藍色の服の小人が2階から降りて来ました。

彼は気絶した黄色と緑をベッドに放り込んで来たのです。

藍色は比較的冷静でした。


「んーとね…」


ですが、次の言葉で白雪姫は藍色から冷静さを奪う事に成功します。




「『赤い靴』を作った人の所に行くの!」




藍色は残りの階段を全段踏み外し、


赤色はおでこをテーブルにぶつけ、


紫は椅子をひっくり返し、


橙は一周回って真顔になり、


青色は泡を吹いて気絶しました。







「……というわけで王子様!馬車を貸してくださいな!」


此処はとあるお城の、とっても広くて綺麗なお部屋の中。

笑顔で言う白雪姫に、王子様は一瞬呼吸を忘れるほどびっくりしました。


「…えぇと…」


王子様はぱちぱちと瞬きを繰り返します。

一体何が「というわけで」なのか全然わかりません。

ちゃんと、白雪姫が珍しく王子様に会いに来るまでのあらましを聞いていたのに。


「…も、勿論、君が望むならすぐに用意させるよ」

「本当!?ありがとう、王子様!」


眩しい笑顔の白雪姫の両隣では小人達が頭を抱えています。

そう言う事です。


「お出掛けって久し振り!楽しみだなー!」

「大丈夫なのかい…?」


王子様が赤色に小声で尋ねます。

赤色は肩をすくめて答えます。


「どうだろうね…」

「護衛も用意しようか?」

「いや…護衛は僕ら3人で十分です…」


赤色に続いて橙が口を開きます。


「その辺の奴らには負けないぞ!」


7人の小人の中でも橙はとっても力持ちで強いのです。


「馭者も必要ない。俺と赤色ができるからな」


藍色がクールに言います。


今回白雪姫のお出掛けについて行くのは、小人のリーダーである赤色、それから橙と藍色です。

本当は紫も連れて行きたかったのですが、そうするとお留守番がとても心配です。

きっと緑と青色が延々と心配し続けて、それを見た黄色が寝込むに違いありません。

紫も残るなら、かろうじて大丈夫でしょう。かろうじて。

紫を信じるのです。


「そ、そう…それなら良いけれど」

「言いたい事はわかる…わかるよ王子…」


赤色がしみじみと言います。

白雪姫は楽しそうに、侍女さんが持って来てくれたクッションを選んでいます。

馬車に持ち込むのです。ふかふかのクッションが良いでしょう。


「でも彼女、最初『歩いて行くの!』って言ってたんだよ!?」


白雪姫は「ちょっと運動不足だと思うのよね。やっぱり歩かなきゃ!」とか言い出したのです。


「それ聞いて流石に赤色が倒れたな」


当たり前です。


「しかも何日かける気なの!?って聞いたら『うーん、3日くらいかしらねぇ?』って!」


これは何と言うか、外に出るのに慣れていないせいもありますが、予想が甘過ぎます。


「白雪姫の足で歩いたら確実に3週間はかかるよ!行きで!」


橙の言う通りです。

往復で1ヶ月半は間違いなくかかるでしょう。


「君達、大変だったね…」


王子様が労うように言います。


「ごほん……とにかく、白雪姫の無事は保証するよ」


咳払い1つで冷静さをある程度取り戻せるのですから、赤色は流石です。


「道中、どうか気を付けて」

「俺たちに言わないで白雪姫に言えよ!」


橙が白雪姫を指差します。

彼女は今、馬車に持ち込む本を選んでいます。

少々移動時間が長いので、暇つぶしのアイテムは必須です。


「勿論、彼女にも伝えるつもりだけど…」


王子様は白雪姫を見て、困ったように笑います。


「あまり伝わりそうにないから」


白雪姫が「よーし、準備ばっちり!」と言って、片手にはクッション、もう片手には本を抱え込んでいます。

完全にピクニック気分です。


「…」


白雪姫(歩く国家機密)』との、何やら不穏な目的のお出掛け。



藍色は額を押さえ、


橙は深呼吸を繰り返し、


赤色は深い深い溜め息をつきました。






副題:『見た目年齢的には黄色>>紫>藍色>緑>青色>赤色>橙』


実年齢は恐らく赤色が1番上との事。

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