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38:復讐屋

ちょっと残酷な表現が多いので苦手な方はお気を付け下さい。

「この恨みは誰の恨み?」



暗い空間



「貴方には知る由も無いでしょう!」



灯りは幾つも立てられた蝋燭の火



「それでもこれは貴方への恨み!」



「『自業自得』とは正しくこの事!」



人兎の姉弟は笑う



「うぐぅ…」



逆さ吊りの男を見て笑う











「き…君達が…?」

「「如何にも!我等は『復讐屋』!!」」


イナバとシロは相変わらず同時に答えた。

爺さんは『復讐屋』に多少面喰ったように見える。

まぁ俺もだったけどね…


「大変お待たせ致しました、お爺様!!」

「これからお爺様の『復讐』、果たして参ります!!」

「は…?」


駄目だ、爺さんが2人のテンションと情報量にきょとんとしてる。

赤ずきんか俺がフォローした方が良いだろうか。

でも俺、爺さんと喋れないや。


「こいつらが是非直接爺さんと話しておきたいっつーから、連れて来た」


赤ずきんが一応補足を入れた。

その補足に効果があるのかはよくわからんけど。


「これは…珍しい、兎の化身か…?」

「「我等は人兎の姉弟!!人呼んで『かちかち山の白ウサギ』!!」」

「かちかち山の…!?」











「て、めぇ、ら…!!」



男は声を絞り出す


両脚も両手も縛られて、男はまるで蓑虫のようにぶら下がっている



「姉上、次は何をしましょうか?」



「どうしてやりましょうねぇ弟よ!」



姉弟は様々な器具を手際よく用意する



「俺が、何したってンだよ…!?証拠はあるんだろうな!?アァ!?」



心当たりは多過ぎるが、男は証拠を残した覚えは無い


今までにも証拠不十分で罰せられることはなく、代わりに罰してきたほど


すると「ぐりん」と一斉に姉弟の顔が男を向いた


直後に顔面に激痛が走る



「ぐがぁっ…!?」



「騒がしいであります!」



「少しは黙りなさい!」



人兎の片割れの手には棍棒が握られていた











「あの、かちかち山の…!」

「御存知でありますか!?」

「名前くらいは御存知でしょうか!?」

「名前も何も…!まさか、実在していたとは…!」


やっぱ眉唾物の存在なのか。


「何か相手に伝えることはありますか!?」

「我等がお爺様の言葉、預かりましょう!」

「…言いたい、事…」


爺さんは目を瞑って俯いた。

いざ復讐、となると言葉が出ないのか。











「貴方は近辺の村の人々を攫い、商品にしましたね!?」



「女は慰みモノに!」



「男は臓器を売り物に!」



「女も飽きたら臓器を売り!」



「まさに外道!」



「まさに下種!」



「ふ…ざ、けるなァ!」



男は吠える


逆さに吊られたまま吠える



「てめぇら…ただで済むと思うなよ!?」



「姉上!何か言ってます!」



「戯言でありますな!弟よ!」



「てめぇら、人兎だな…!?」



「「だとしたら何でしょう?」」



その返答を聞いた男が笑う



「良い金にならァ…!俺がいないとわかったらウチの連中がすぐにでもこの場所を…!」



「姉上!こいつうるさいです!」



「気持ちはわかりますがもう少し喋らせるであります!」



姉、と呼ばれた人兎が男に向かって何かを振るった



「うぐっ…!?かっ、はっ…!?」



「でも、黙るであります」



鞭がぐるりと男の首に巻き付いていた











「…何も無い」

「無いでありますか!?」

「恨み言の1つも!?」


姉弟の耳が同時にピンと伸びた。


「…何を…何を言っても無駄だ…!あんな所業をしでかす輩には!何を言っても!」

「「ほうほう!!」」

「何故…何故あんな事ができる!?人間の所業とは思えない…!」


興奮した様子で爺さんは言う。

ギラギラとした目からは涙が溢れていた。


「何を言ったって通じまい!何を…何を言ったところで!改心するとは思えない!」

「「ほうほう!!」」

「何を言っても孫は帰って来ない…!儂の孫は!残酷に!惨めに死んだ!」

「「ほうほう!!」」



「あぁそうだ…この世で最も惨めな死に方を!すれば良い!!」



「「承知しました!!」」











「ところで姉上!」



「何でしょうか弟よ!?」



「げほっ!ごほ…うぐっ!」



突然肺に空気が入り、男は咳をした



「こやつ、先程『ウチの連中』と言ってましたが!」



「言ってましたね弟よ!!」



「許さねぇ…こいつら、絶対…!許さねぇ!」





「それって重石を付けて沼に沈めた連中のことですかね?」




「それとも内蔵を幾つか取り出して、代わりに辛子味噌を詰め込んだ連中でありましょうか?」





「…は?」



男の顔から表情が一瞬消える


が、2人の言葉を理解した途端に血の気が引いた



「な、にを…嘘、だ…!あいつらが、そんな、簡単に…!?」



「主犯はこの男!」



「されど関わったのはこいつだけではない!」



「ならば全員復讐対象!」



「一斉殺処分!」



2人の目がぎらぎらと輝いている


口元は歪に笑っている











「お爺様のお気持ち、よくわかったであります!」

「やはり奴は外道中の外道!」

「かちかち山の名に懸けて!」

「『復讐屋』の名に懸けて!」



「「貴方の復讐、果たしてみせましょう!!」」













「そういえば腹が減りましたか!?何か食べさせてあげましょう!」



「姉上、優し過ぎますよ!」



もしも、この人兎が言ったことが本当ならば


もしも、本当に仲間たちが殺されているならば…



「でも折角作ったのだから、食べ頃に振る舞いたいであります!」



「姉上は寛大でおられる!」



2人の会話は聞こえているが、意味不明だった



「誰、だ…誰を殺したんだ、てめぇら…!?」



「おや?おかしな事を聞きますね!?」



そう答えたのは弟の人兎


姉は無邪気にスキップしながら何処かに消えて行った



「『関係者全員』ですよ?」



「全、員…だと…?」



「持って来たでありますよー!」



姉の、機嫌が良さそうな声がした


ごろごろと、台車を押している



「…?」



頭に血が上ったせいで視界が霞む


それでも目を凝らして台車に乗っているモノを見ようとした



「焼いた方か良いでしょうか!?」



「姉上、こいつに使う火なんて無いでしょう!」



「弟よ!なんてエコロジーなんでしょうか!」



水槽のようだった


中に入っているのは…ピンク色の、何か



「綺麗に皮を剥がせたであります!」



「その後、海水よりも濃い塩水で漬けてみました!」



「しばらくは生きてましたね!」



「泣き叫んでいましたね!」



「この子に罪は無いのに!」



「嗚呼、全てはこの男が招いた惨劇!」



男の目の前で、2人は水槽の中身を掲げてみせた





「…あ、ぁ…うぎゃぁぁぁぁぁ!!?」





「「どうぞ!召し上がれ!!」」





皮を剥がれた、小柄な肉塊


姿は変われど、男の最愛の息子に変わりはなかった











「私の仕事はここまでで良いな?」


赤ずきんが言うと、姉弟は同時に振り向いた。


「結構であります!」

「お代は後日、御実家へお送りします!」

「へいへい」


爺さんの分はもう貰っている。

…あれ?爺さんの依頼ってそもそも何だっけ?


「あ…しまった、私としたことが…肝心の爺さんの依頼、まだ達成してないな」

「「ややっ!赤ずきん殿、職務放棄ですか!?」」

「お前らに言われたくないね」


…そうだ、伝言だ。復讐屋への伝言。


「『儂の全てを犠牲にしても良い。孫を殺した者へ復讐を』…って爺さんから伝言」


それを爺さんの前で言ってどうするんだろうか。


「犠牲!?犠牲とはとんでもない!」

「お爺様はもう何も失いません!」

「…そうか…」

「さぁ!お疲れでしょう!」

「お爺様はもうお休みください!」


こいつら、どんな復讐をするんだろう。

『この世で最も惨めな死に方』って…どんなのだろう。











「あぁぁ…!お前ら…お前らァァァ!!」



ギシギシとロープが揺れる


脆くなっていたロープはぷつりと切れた



「「あぁ!なんて事を!」」



「俺の息子に何を…!息子は関係無ぇだろうがァァ!!」



「全くもってうるさい輩であります!」



「そろそろ口を塞ぎましょうか!」



弟が男を仰向けに転がす



「ぶち殺してやる!見世物小屋に売り飛ばして散々惨めに…」



男の首の辺りが一瞬熱くなる


弟の手にはナイフが握られていた



「…は、はッ…カッ…!?」



「喉を切ったのでもう声は出ないであります!」



「これで静かになりました!」



「ところで『ぶち殺す』のか『見世物小屋に売り飛ばす』のかどっちなのでしょうか!?」



「ハッキリしない輩ですね!」



「可愛い可愛い息子が死んだのはお前のせい!」



「お前が最低の所業を繰り返したから!」



「お前の罪はお前1人では贖えなくなった」



「だから死んだ」



「子供も」



「妻も」



「…!?カッ…!ク、カハッ…!」



男の目が見開かれた


男の傍には肉塊が転がっている



「妻をどうしたと聞きたいか?」



「ならば教えてしんぜよう!」



2人の首が同時に傾いた



「「皮を剥いで、人喰い鮫の住処に放り込んできました!!」」



「ガッ!…カッ!!」



男はのた打ち回る


惨めな姿でのた打ち回る



「この恨みは誰の恨み?」



姉が言った



「貴方には心当たりがあるでしょう!」



弟が続く



「しかし個人を特定するには至らない!」



「商品の数を覚えているほど貴方は優秀ではないでしょう!」



「証拠がどうのと言ってましたか?」



「証拠なんてあっても無くても変わりませんよ?」



「逃がしはしませんよ?」



「逃げられると御思いですか?」



「…!!」



赤い眼が不気味に光って見えた





「「『恨み』があれば『証拠』なんて意味など無いのです」」




「「我等は『復讐屋』」」




「「『感情』のままの『願い』を叶えるのが我らの仕事!!」」





狂気に満ちた笑顔が男を見ていた





「「さぁ、『復讐』は、まだ始まっていませんよ?」」




「「『貴方がこの世で最も惨めに死ぬ』まで、終わりませんよ!!」」





副題:『周りの蝋燭は男が殺した人間の数』

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