表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/30

第7話「関西国際空港は、雲一つなし」

ちょっと、(だいぶやな・・・)年の差夫婦となったマサと菜穂美。二人は新婚旅行に出発します。

第7話

「関西国際空港は、雲一つなし」


昨日までの嵐のような雨が

すっかり上がった関西国際空港。

義兄のベンツで阪神高速から

関空連絡橋を渡り、出発口へと

つける。

義兄と坂井さん、そして若い衆の

青木が見送りに来てくれた。

二人のスーツケースをカートに

載せて青木が押していく。


「マサ、菜穂美。

 気ぃつけていってこいや。

 向こうでは兄弟分の志水が全部

 段取りしてくれとるからな。

 志水によろしゅう言うといて

 くれ」

「義兄さん、何から何までご面倒

 かけてすんません」

「(♀)兄ちゃん、行ってくるわ

 なぁ」

「叔父貴、チケット換えてきます

 わ。

 パスポートもお預かりします」


青木がカウンターの方へ走って

いった。

周りは俺たちと同じとおぼしき

新婚さんが殆どである。

みな各々見送りの衆を従えて

あちらこちらに話の輪が咲いて

いる。


「なぁ、はに〜。

 俺らも新婚さんに見えるやろか

 のぉ?」

「(♀)何言うてんの。

 誰も2号さんと不倫旅行や言う

 てへんて」

「言うとるがな。(笑)」


一同大爆笑である。


「叔父貴、そろそろゲートへ行か

 れた方がよろしいかと」

「ああ、そやねぇ。

 義兄さん、坂井さん、青木君。

 忙しいところありがとうござい

 ました。

 ほな、行ってきます」

「おお、志水によろしゅう言う

 といてくれ。

 菜穂美、腰抜けるほどかわい

 がってもらえよ。

 ガハハハ」

「(♀)もぉ、お兄ちゃん」


坂井がさり気なく俺の横に来る。


「叔父貴、皆よりお祝いの気持ち

 です。

 些少ですが」


と、分厚い金封を手渡して

くれた。


「すまん、気ぃ遣てもろて。

 ありがたく頂戴するわ。

 皆にもよう礼言うといてな」

「(♀)みんな、お土産期待しと

 いてな。

 ほな、行って来ます」


お土産という言葉に義兄と坂井の

目が光ったことに俺たちは気づく

よしもなかった。


アナウンスが聞こえる。


「ご案内致します。

 ノースウェスト航空80便、

 定刻9時55分発 グァム行の

 お客様は出発ゲートの方へ

 お進み下さい。


 Attention please.

 The visitor for departure

 from 9:55 Guam.

 please advance towards

 a departure gate at 80

 flights of Northwest

 Orient Airlines,

 the appointed time.」


俺と菜穂美は腕を組み、義兄達に

一礼すると出発ゲートの中へと

進んでいった。


セキュリティチェックを経て税関

〜出国審査カウンターへ向かう。

出国審査の審査官がこともあろう

大学の同級生だった勝部孝彦で

あった。

何と言う偶然。

彼も俺のことを覚えていた。


「いゃ、勝部君すごい久しぶり。

 偉いさんが何してんの?」

「いゃあ、浜田君懐かしいなぁ。

 審査官は人手不足で大変なん

 や。

 ほい、パスポートと搭乗券。

 奥さん?」

「悪かったの、若い嫁さんで。

 (笑)」

「これは、失礼。

 良いご旅行を」


うしろで菜穂美が微笑みながら

やり取りを聞いている。

出国審査のゲートを抜けると、

ここからは外国になる(と、昔に

聞いたことがある)。

出発までしばらく時間があるので

免税店を冷やかすことに。


「(♀)そや、忘れんうちに

 これ渡しとく」


と、菜穂美がクレジットカードを

くれた。


「あれ、いつのまに?

 よう作れたのぉ、短期間で」

「(♀)うちの兄ちゃん、何やと

 思てんの(笑)」


またまた、義兄に厄介をかけた

ようだ。


「へぇ〜、免税店言うても色々

 あんねんなぁ」

「(♀)何、お上りさんみたいな

 こと言うてんの(笑)」


事実、俺は完全にお上りさんの

気分だった。

俺がGuamへ発った時は伊丹(大阪

国際空港)からだったからなぁ。

菜穂美が脇目もふらずシャネルの

ブースに向かう。

をいをい。

何もここで買い物せんでも向こう

着いたらなんぼでもできるや

ないか。


「(♀)ねぇ、だ〜りん。

 うち、この指輪ほしい。

 これとこれやったらペアになる

 やん。

 ね、お姉さん?」

「お目が高いですね。

 これは、最新モデルでここ関空

 でしか手に入れることができ

 ないものなんですよ」


うわっ!

商売うまいわ、このお姉さん。


「(♀)ほしい、ほしい。

 ぜ〜ったい、ほしい。」

「わぁった、わぁった。

 ほな、このカードで。

 あっ、限度額越えへんか?」


また、頓珍漢なことを言って

しまった。

お姉さんが怪訝な顔をして

言った。


「お客様。

 こちらのカードは、リミット

 ございませんが?」


げっ!

そんなもんも知らんかった。

またまた、偶然にもサイズが二人

にぴったりやないかぇ。

かぁぁぁぁぁぁ・・・


「もし、サイズのお直しが必要で

 ございましたら日本のシャネル

 ブティックにお持ちいただけれ

 ば、いつでも無料で承ります

 ので」


はいはい、重ね重ねご親切に。


「(♀)だ〜りん、はい」


と菜穂美が指を出す。


俺は、買ったばかりの指輪を

菜穂美の薬指にはめた。


「(♀)だ〜りんも、お手!」


俺は、思わず犬手してしまった。


菜穂美が微笑みながら握った

俺の指を開いて薬指に指輪を

はめた。


「ありがとうございました。

 どうぞ、良いご旅行を」


満面の営業スマイルに見送られて

シャネルブティックを後にした。


「(♀)だ〜りん、ありがと。

 chu!」


・・・・・赤面


赤いウィングシャトル(AGT)に

乗り、俺たちは搭乗口に向かう。

シャトルの外を見ながら俺が

言った。


「あっ!

 義兄さんが手ぇ振ってる」

「(♀)え、どこどこ?」

「あふぉ。

 見えるわけないやろぉ」

「(♀)もぉ、いけず〜」


搭乗口はまだ開いていなかった。


「のど渇いたな。

 おお、あっこに立ち飲みある

 やん」

「(♀)あのねぇ、十三やない

 ねんから・・・(笑)」


ふたりでビールを頼む。


「くぅ〜、しみる〜」

「(♀)何が、しみるや。

 このオヤヂ(笑)」

「オヤヂ言うても、返事せぇへん

 言うてるやろぉ」


二人の夫婦漫才のノリは息も

ぴったりのようだ。



※この小説は、『フィクション』

 です。

 実在の場所を使用していますが

 登場人物、団体は、全て架空の

 ものです。



 頼光らいこう みやび

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ