第5話「そして、俺は途方に暮れる・・・」
菜穂美に惚れてしまった、俺は・・・
「???」
目の前に映ったのは、菜穂美の
豊かな胸だった。
「(♀)やっと、お目覚めぇ?
ええ加減、足が痺れてきたとこ
やったわぁ」
俺はソファの上で菜穂美の膝を
枕に横たわっていたようである。
あわてて俺は飛び起きた。
「今、何時や?」
「(♀)ふふふ。
お目覚めの第一声がそれ?
2時を少しまわったとこやで」
かぁぁぁ!
俺は不覚にも1時間あまり意識を
失っていたようだ。
「菜穂美の兄さんのオーラに圧倒
されたわぁ・・・」
話には聞いたことがあるがホンマ
もんの稼業の方に接するのは
生まれて初めてである。
なんぼ突っ張ってても俺はド素人
やと言うことが身に染みてよく
わかった。
唐突にソファの後ろから声が
した。
「おお、浜田はん。
どないしはったかと思いました
で」
うわっ!
後ろにおった。
俺は、またまた頭が真っ白に
なった。
「す、すんません。
お見苦しいところを見せてしも
て」
かろうじて出てきた言葉がこれで
あった。
「元々、ノミの心臓に毛が生えた
ヘタレなもんで」
「がはは。
オモロいこと言う人やなぁ。
稼業張るより芸人になりはった
方がエエかもしれんなぁ。
おお、そや勝手なことして
申し訳なかったけど、うちの
若いもんの服と着替えさして
もらいましたで。
倒れはった拍子に思い切り
シャンパン浴びはったよって
ねぇ」
い゛っ?
そう言えば俺の作業服がすっかり
脱がされてスゥエット姿になって
るやないか。
ぼそっと金山が言った。
「浜田はん。
あんた見かけによらず派手な
下着でんな。
気に入りましたで」
げっ!
風神雷神の猿股(トランクスとも
言う)を見られてしもた。
「(♀)むふふ、兄ちゃん。
ハマちゃんベティちゃんの
パンツも履きよんねんで」
こらっ、余計なこと言うな。
「がはは、ますます浜田はん
のこと気に入りましたで。
まあ、なんもありませんけど
今日は泊まって行きなはれ。
大丈夫、菜穂美も横について
ますさかい。
心配せんでも覗いたりしまへん
から。
がはははは..」
「あかん、まな板on the carp
や」
その言葉を聞いて皆、大笑いに
なった。
しかし、俺は一つ気になっている
ことがあった。
もしかして、チビっていたのでは
ないか?
誰も何も言わないが気になって
しようがなかった。
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こうして、「ノミの心臓に毛が
生えたヘタレ」の俺は金山家の
居候となった。
元々、小市民であった俺。
今更部屋住みして修行と言う
根性もないと言うことを見抜かれ
居候と言う身分に落ち着いた。
とは言え、金山家の妹の旦那で
ある。
若い衆は「さんづけ」で俺を呼ぶ
ようになった。
しかし、門前の小僧である。
見ていると自然に稼業の仕来りが
身に付いてくるものであった。
俺の本名は、浜田雅美。
字面だけを見ると女のようで
嫌なので滅多なことで人前では
フルネームを名乗らない。
義兄は、俺のことを「マサ」と
呼ぶようになった。
「(♀)なぁなぁ。
うち、あんたのことなんて
呼ぼか考えててん」
「何を今更、ハマちゃんでなし。
あんたでエエがな」
「(♀)いや!これ大事なこと
や(妙に力が入る)」
またまた、いらんこと考えとるな
こいつ。
うわっ、きたで〜。
「(♀)うん、決めた。
これからは、『だ〜りん』と
呼ぼ」
ほらぁ、来よった。
俺は多少の照れを含んで答えた。
「そらかまへんけど、なんや
ラムちゃんみたいやで」
「(♀)そやで。
いらんこと考えたら電撃やでぇ
(笑)」
うわっ、こいつ笑てるけどなんぞ
あったら血の雨降るな。
「ほな、俺もこれからおまえの
こと『はに〜』と 呼ぼかな?
(照れ照れ)」
「(♀)いや〜ん。
むっちゃ嬉しいわぁ、だ〜りん
・・・うるうる」
「何がうるうるや。
おまえは、さとう珠緒かぁ!」
ん?
なんか、このネタ前に出てきたな
・・・。
こうして菜穂美との夫婦漫才の
ような新しい生活が始まった。
夫婦とは言え、年の差が20歳。
しかし、俺は菜穂美の尻に敷か
れっぱなしであった。
出会いは、不純だったが惚れた
弱み。
しゃ〜ないか・・・。
※この小説は、『フィクション』
です。
実在の場所を使用していますが
登場人物、団体は、全て架空の
ものです。
頼光 雅