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第4話「菜穂美の正体・・・」

「いつかは、言わなあかんと思てる・・・」

そのいつかが到来。

菜穂美の正体とは?

俺の二足わらじの生活は、問題が

発生することもなく淡々と過ぎて

いった。

季節も移りそろそろ上着を着て

いると暑くなり始めた初夏のこと

だった。

この頃になると俺も副業の方にも

慣れ、一度に2,3カ所まわって

と言うことができるようになって

きた。


この日も、いつものように3カ所

目が終わり、菜穂美に電話した。


「3つ、終わったで。

 次、どないすんねん?」

「(♀)ハマちゃん、晩飯まだ

 やろ?

 晩飯がてらつき合うてほしい

 とこあんねん」

「相も変わらず、その言葉遣いは

 直らんのぉ。

 どこ行くねん?

 鶴一は堪忍やで」

「(♀)あふぉ。

 ほな11時に新歌舞伎座の前で

 拾てくれる?」

「10-4(テン・フォー)。

 23時に新歌舞伎座な。

 晩でも駐禁うるさいから早よ

 来てや」

「(♀)うん、わかった。

 着いたら携帯鳴らして」


なんや、今日はどこ行こ言うの

やろ?



時間通り、23時に菜穂美を

ピックアップした。


「(♀)お姉さんがね、晩飯

 どうしても一緒にって言いはん

 ねん」

「へぇ〜。

 そらエエけど突然どないしたん

 や?

 で、どこ行くねん?」

「(♀)大国町」

「なんや、すぐやんか」


気のせいか、菜穂美は落ち着きが

ないように思えた。


「(♀)あ、次の角左曲がって。

 このマンション。

 ここ路駐しても大丈夫やから」


俺は、車を停めてエンジンを

切った。

オートロックではないが一応

小綺麗なマンションである。

入って右側にあるエレベーターに

乗る。

菜穂美は8のボタンを押して

言った。


「(♀)ここの家主さんやねん、

 お姉さんの旦那さん」


普段と違う緊張した声だった。


「ふ〜ん」


初めてくるマンションだ。

8階は、1室だけ。


「でかっ!」


ついて出た言葉はそれだった。

黒髪のロングヘアーのお姉さんが


「いらっしゃい、どうぞ」


と笑顔で扉を開けてくれた。

俺は、なんと挨拶していいのか

戸惑ったが、かろうじて


「初めまして」


と言うことができた。

菜穂美の緊張が伝染ってきたの

かもしれない。

入ったリビングには、寿司や

オードブルが並びシャンパンが

バケットで冷えていた。

そして部屋の真ん中に恰幅のよい

少し目つきの鋭い紳士が立って

いた。


「やぁ、浜田さんですね。

 遅くにお呼びだてして申し訳

 ない。

 どうぞおかけ下さい」


バリトンのよく通る声が俺の耳に

届いた。

菜穂美が緊張しているのが判る。


「菜穂美のすけをして

 いただいて助かってますよ。

 まあ、どうぞ」


と、シャンパンを勧められた。


「いや、車ですので」


と言いつつその鋭い目に射すくめ

られるようにグラスを受け取る。


「大丈夫ですよ。

 すぐ醒めますよ。

 さあ、どうぞ」


と、注がれるともはや遠慮は無用

だった。


「さあ、どうぞ召し上がって

 下さい」


寿司もオードブルも腹が減って

いたのかすごく美味しく感じた。

その紳士が口を開いた。


「申し遅れました。

 金山修二と申します。

 菜穂美とは異母兄弟なんです

 よ。

 よろしくお頼み申します」

「はっ。

 こちらこそよろしくお願い申し

 上げます」


何を言ってるんや俺。

なぜこんなに緊張するのかが、

しばらくしてわかった。

この金山なる紳士、顔は笑って

いるが目が笑っていなかった。


「ところで、浜田さん」


唐突に話は切り出されて俺は、

飛び上がった。


「浜田さんは、独身でらっしゃい

 ましたよね?

 単刀直入にお伺いします。

 菜穂美のことはどう思って

 らっしゃいます?

 いや、母が違うと言っても

 菜穂美とは兄と妹。

 妹に好きな人ができたと言われ

 たらねぇ」


初めて金山は、本当に微笑んだ。

俺の頭の中は一瞬にして真っ白に

なった。

想定外の成り行きに俺は言葉を

失ってしまった。

横で菜穂美が緊張が解けたように

可愛い舌を出した。


「(♀)ごめんね、ハマちゃん。

 驚かせて」


金山が続けて言った。


「菜穂美はねぇ、シャブ絶ちを

 しよったんですよ」


金山は自分のことのように照れ

ながら続けた。


「それでね、浜田さんさえ異存が

 なければ、そのぉ菜穂美を

 もらっていただけないかと」


え?

え?

何それ?

どう言うこと?


「この通りお頼み申します。」


金山は深々と頭を下げた。

俺は固まってしまった。

想定外の成り行きに追い打ちを

かけるように金山は言った。


「一緒になっていただけたら

 シマ内の一つをお任せしても

 いいんですよ。

 いやいや、お返事は近々に

 いただけたらいいですよ。

 これ、菜穂美。

 浜田さんにお注ぎしなさい」

「(♀)どうぞ、浜田さん」


菜穂美がにこやかに促す。

震える手でグラスを受け取る

俺だった。


「それでは、浜田さんのご健康と

 よいお返事を期待して。

 乾杯!」


金山の目は、もう笑っていな

かった。

それどころかこの話を断ったら

命の危険を感じるような殺気が

光線のように俺の顔に注がれたの

だった。

横で菜穂美がニコニコしながら

怖いことを言ってくれた。


「いつか話すて言うてたんはな、

 兄貴のことやってん。

 うちの兄貴、稼業張ってるから

 なかなか言い出せんで・・・」


そう言われて、金山の手を見た。

指は10本とも揃っている。

と、言うことは稼業を大過なく

勤めてきたと言うことだろうか?

袖口から色鮮やかな我慢(刺し

 もの/刺青)が覗く。

金山が何かを言いかけたが、俺は

その言葉を最後まで聞くことなく

・・・






気を失ってしまった・・・。

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