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第28話「親の血を引く兄弟よりも・・・ (後編)」

第28話

「親の血を引く兄弟よりも・・・

          (後編)」


「さて、ほな次行きましょか。

 マサやんのデビューを祝って

 もう一軒、店を用意してます

 ねん。すぐ近くですよって

 ブラブラ歩いていきましょか」


ジミーとKen、初めて見る

二人の若者がさり気なくガードの

ポジションにつく。

ふと、先の方を見ると中年の

カップルが酒に酔った若者の

グループに何やら難癖をつけられ

ているようだ。


「こら〜、エロ親父。

 何、でっかいつらしてよ〜

 若い子連れて歩いてるんだ

 よ〜」

「わたしは、何も君たちに迷惑を

 かけた覚えはないが?」

「おっさんがよ〜、若い女の子を

 連れてるのが迷惑だってんだ

 よ〜」


見れば、年の差カップル。

(俺も人のことは言えないが)

女性は、鋭い目で若者を睨んで

いた。

その紳士の一言が若者達の癇に

障ったのか一人が殴りかかった。

その紳士は、かなりの場数を

踏んでいたようである。

女性を静かに後ろにやると殴り

かかった若者に鋭いパンチを浴び

せた。

鼻血が吹き出した仲間を見て逆上

した仲間がナイフを抜くのが

見えた。

しかし、臆することなくその紳士

は身構え、


「君らなぁ、そんなもん出して

 きたらこっちも手加減できない

 よ。

 やめなさい」


と腹に響く声で言った。

尚、逆上した若者達は一斉に

ナイフを構え紳士に突きかかって

いった。

一人対五人。

二人までは叩き伏せたが三人目の

ナイフが紳士の脇をえぐった。

後ろに下がっていた女性が声に

ならない声を上げる。


「ジミー!

 Ken!」


俺は、二人を促し紳士の元へと

駆け寄った。

Kenが紳士を助け起こす。


「おぉ?!

 僕らぁイナラハンでうちの嫁に

 手ぇ出そうとした子らやない

 か?

 何、また悪さしとるんや?」

「なに〜?

 ああ、あの時の。

 今日は、あの時の礼させて

 ・・・」


若者は最後まで言葉を続けること

なく俺の蹴りを受けて吹っ飛んで

いった。

立ち上がろうとした頭をめがけて

回し蹴りが入る。

歯が折れて飛んでいくのが見え

た。

残る四人が一斉に俺に斬りかか

ろうとした。

その時・・・


「ドン」


ジミーの撃った鈍い銃声が響く。

肩を撃たれた若者が吹っ飛ぶ。

ひるむ二人に蹴りを浴びせ連続

して拳を繰り出す。


「Hey Stop !」


駆けつけた警官が銃を構える。

ジミーが警官に何か言うと駆け

つけた警官は若者五人を連行して

いった。


「大丈夫ですか?

 ご主人?」


俺が、怪我を負った紳士の傍へ

駆け寄る。


「申し訳ない。

 脇をかすっただけです。

 大した傷ではありません」

「奥さん、お怪我は?」

「???」


なんや?

言葉が通じへんのか?


「ご主人。

 何は、ともあれ傷の手当てを

 せなあきませんで」

「いや。

 本当に大したことはないので

 大丈夫です」

「それやったら、わしらはその先

 のハファダイに行く途中でした

 よってそこで手当をしましょ。

 場合によってはそこで救急車を

 呼びましょか」

「申し訳ない」


Kenが紳士に寄り添う

ように肩を貸す。

ハファダイは、日本で言うところ

のキャバクラの様な店である。

女がつくが彼女たちは、この店の

店員ではない。

客に酒をどんどん飲ませてそこ

から発生するチップをもらって

生活している。

また、交渉次第では夜の友にも

なってくれるらしい。


気がつけばエリーが駆けつけて

いた。


「大丈夫です。

 脇をかすっていますが縫うほど

 の大きな傷ではありません」


エリーが傷口を消毒しパッチを

当てる。

ふと、紳士の背中を見ると立派な

昇り竜を背負っている。

志水の叔父もご同業と見たようで

ある。

一通りの手当が終わったところで

紳士が口を開いた。


「この度は、火急のところ助太刀

 いただき誠にありがとうござい

 ました。

 手前は、富士宮稲穂会伊達一家

 伊達龍二と申します。

 よろしく、お見知りおきお頼み

 申します」

「早速のご挨拶、恐縮至極に存じ

 ます。

 手前、吾妻組舎弟金山組預かり

 浜田雅美と申す若輩者でござい

 ます。

 以後、よろしくお見知りおきの

 ほどお頼み申し上げます」


お互い、稼業のものと感じたので

あろう。

正式ではないが仁義を切り俺達は

名乗りあった。


「伊達さん、堅苦しい挨拶は南国

 Guamには似合いません。

 お差し支えなければざっく

 ばらんに参りませんか?」

「そうですな。

 これは、失礼を致しました」


俺は、皆を伊達龍二に紹介し

ざっくばらんな会話に入って

いった。


「手前の嫁の菜穂美でござい

 ます。

 Guamには志水の叔父のお世話で

 新婚旅行に参りました次第で」

「そうですか。

 手前は、もめ事が一段落しま

 したので嫁の真由美を連れて

 昨日グァムに着いたところ

 でした。

 実は、嫁の真由美は耳が少し

 不自由でして」

「ああ、そうでしたか。

 それは気づきませんでした」

「ところで浜田さんは、なかなか

 の猛者のようでらっしゃる」

「いやいや、伊達さんの方こそ。

 あの、アホたれ共と対峙された

 時の隙のなさ。

 結構な修羅場をくぐっておいで

 ではないですか?」


俺たちは、たちまち意気投合

した。

聞けば伊達は、50歳。

志水の叔父と同い年のようで

ある。

元々ヘタレであった俺の話、

兄貴分を抗争で亡くし、その後

長の勤めに出ていた伊達の話。

話は尽きなかった。

伊達が唐突に言い出した。

「浜田さん。

 日本から遠く離れたGuamの地で

 こうしてお会いした。

 これも何かのご縁。

 しかも、わたしはあなたに助け

 られた。

 如何ですか?

 ご迷惑でなければ兄弟の盃を

 いただけませんか?」

「そんな、貫目も実力も上で

 いらっしゃる方がこないな

 ヘタレを捕まえて何を言いはり

 ます?」


俺は、ちらりと志水の叔父の方へ

視線を流す。


「いや、伊達さん。

 これも何かのご縁。

 手前、志水が見届け人を勤めま

 しょう」

「わかりました。

 それでは、伊達さんのことを

 これから兄貴と呼ばせていた

 だきます」

「いや、浜田さん。

 五分の盃で参りましょう。

 手前は、あなたに男気を感じ

 ました。

 ぜひ、五分の盃で」

「承知しました。

 しかし、手前の方が若輩者。

 五厘下がりでこの五厘を志水の

 叔父に預けると言うことで如何

 でしょうか?」

「手前に異存は、ありません。

 志水の叔父貴よろしくお頼み

 申し上げます」


こうして俺は、遠くGuamの地で

一生涯付き合いの続く伊達龍二と

出会い、兄弟分の契りを結ぶこと

となった。


------------------------------


「兄弟盃」


稼業の中においては、子分相互

の間においても厳重な上下関係

があります。

つまり、

「分違い(ぶちがい)」

と言って、渡世人社会における

一種の人物的な重みの違い、則ち

貫目かんめ」の違いに

よって、上下的な関係が決まり、

兄弟盃(的屋系では義兄弟盃)と

言われる盃事によって、擬制の

兄弟分となるわけです。

もっとも、最近では親子盃と

同様に盃事を省略したり、盃事

そのものを簡略にする場合も

多くなっているようです。


この兄弟盃には2種があり、

その1つが、組織内部における

子分間相互の兄弟分の関係、

もう1つが、他の組織との間に

結ばれる兄弟分(出先の兄弟)

関係です。

何れの場合も親分の許可を得た

上で盃事を行います。

正式の盃事は、親子盃のように、

吉日を選び、祭壇を設け、羽織、

袴に威儀を正し、厳粛な雰囲気

の中で古式に則って儀式を行い

ます。


ところで、一口に兄弟分と言い

ますが、その中身は

「五分の兄弟」

「五厘下りの兄弟」

「四分六の兄弟」

「七三の兄弟」

「二分八の兄弟」

に分かれており、その差が開く

ほど服従関係が強まります。



●五分の兄弟


最狭義の兄弟分のことで、上下

関係なしの対等な関係にある

兄弟分です。

お互いに「兄弟、兄弟」と呼び

合います。

往時、この盃事では盃を中央に

置き、紙で樋を2つ作り、この

樋で同時にお神酒を飲んだと

言われ、それに由来して

「飲み分けの兄弟」とも

言います。

昨今では、盃を2個用い交盃

します。



●五厘下りの兄弟


五分の兄弟と四分六の兄弟の中間

で、4分5厘と5分5厘の関係に

ある兄弟のことです。

両者の間はごく僅かの差で座布団

1枚をゆずる程度の差と言われて

います。

本来であれば五分同士であるが、

何らかの事情で一方が遠慮して

5厘だけ下り、その5厘を仲人に

一時的に預け、仲人は後日機会を

みて盃を改め五分の兄弟にすると

されています。



●四分六の兄弟


兄分が6分、弟分が4分の差を

持つ兄弟分です。

兄分は弟分を「兄弟」と呼び

弟分は兄分を「兄貴」と呼び

ます。

尚、昨今では兄分が弟分を舎弟と

呼ぶのが普通のようです。

盃事では、1個の盃に満たした

お神酒を兄分が6分まで飲み、

残りを弟分に下げます。



●七三の兄弟、二分八の兄弟


兄分と弟分の差がそれぞれ7分

3分と8分2分の関係にある

兄弟分です。

盃事においては、盃に満たした

お神酒を、七三の兄弟の

場合は兄分が7分まで、二分八の

兄弟の場合は兄分が8分まで飲み

弟分に下げます。

二分八の兄弟の場合は、兄弟と

言うよりむしろ弟分は子分に近い

関係であるため、兄分を「オヤジ

サン」と呼ぶこともあります。


出典、引用:

松江八束建設業

暴力追放対策協議会ホームページ


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※この小説は、『フィクション』

 です。

 実在の場所を使用していますが

 登場人物、団体は、全て架空の

 ものです。


☆この小説の著者は「わたし」

 です。

 著作権は「わたし」にあり

 ます。


 頼光らいこう みやび

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