第26話「アプラ海軍基地 (Aplla Naval Base)」
第26話
「アプラ海軍基地
(Aplla Naval Base)」
俺達の乗った志水叔父のリムジン
は、タモンを出てタムニングから
マリンドライブに入り一路アプラ
を目指す。
窓の外には綺麗な夕陽が見える。
何度見ても神秘的な光景だ。
アプラ湾の端、立哨の立つゲート
が見えてきた。
ゲートの守衛にジミーが二言三言
告げる。
守衛が電話をかけている。
程なくゲートが開き、俺達は基地
の中へと入っていった。
「(♀)へぇ〜。
海軍基地て、こんなんやってん
やぁ〜」
感心する菜穂美の声の横を迷彩柄
のシャツの一団が走っていく。
俺も海上自衛隊の基地内に入った
ことはあるが、自衛隊と軍隊。
雰囲気が全く違う。
車が1軒の官舎の前で止まった。
屋内からは、ビートの効いた音楽
が、流れてくる。
「さぁ、着きましたで。
今日は、顔つなぎですよって
堅苦しいことは、なしっちゅう
ことなんで」
何の顔つなぎなのかよく判らない
まま俺達は車を降りた。
庭の方へまわるとパーティーは、
始まっているようだ。
「は〜い、志水さ〜ん。
お久しぶりですね〜」
「おぉ、フィル。
久しぶりやぁ。
元気でしたか?
フィル、こちらが甥っ子の
マサ・浜田です」
「Nice meet you !
Philip Morris、フィル
と呼んで下さい」
「初めまして、フィル。
マサ浜田です。
マサと呼んで下さい。
妻のナオミです」
「おお、かわいい奥さんですね〜
Nice meet you !
ナオミさ〜ん」
「初めまして。
妻のナオミです」
「さぁ、こちらにどうぞ。
大尉がお待ちですので」
芝生を踏みしめ一際賑やかな集団
の輪の方へ進んでいった。
バカ騒ぎをしている集団の中で
一際目立つ男がお目当ての人物の
ようだ。
モーリス少尉が近寄っていき
耳打ちする。
背格好がジミーくらいの恰幅の
よい、いかにも叩き上げと言う
風情の男が近寄ってきた。
「ジョージ。
今日は、うちの甥っ子夫妻を
連れてきましたで」
「おお、志水さ〜ん。
お久しぶりねぇ。
この人が新しい007(ダブル
オーセブン)ですかぁ?
がははははは」
少し、酒に酔っているようだ。
「初めまして。
Mr.Marshall」
「Ch! Ch! Ch!
ジョージと呼んで下さ〜い。
あなた、中々良い体してます
ねぇ。
U.S.Navyに入りませんかぁ?
がははははは」
なんや、こいつ?
「君、良い体してるね。
自衛隊に入らないか?」
のギャグを知ってるのか?
「和美。
ちょい菜穂美さんを頼むわぁ」
「はい、わかりました。
菜穂美さん。
向こうで何か、よばれましょ
か?」
「(♀)ほな、だ〜りん。
向こうで何ぞ食ってくるわぁ」
雰囲気を察した菜穂美は大人しく
和美姐さんとテーブルの方へ
向かっていった。
人払いをしてあるのか、俺達の
周りには誰も近づいてこない。
「ジョージ。
今度の荷物の運搬はこのマサが
仕切りますよって、よろしゅう
に。
マサは、金山の兄貴の弟です
よってね。
間違いの心配はありませんで」
「そうですかぁ。
あんじょう頼んまっせぇマサ〜
がははははは」
「???」
俺には、何のことやらさっぱり
わからない。
「半年に1回、ここを起点に
横須賀へ銃火器が入るんです
わぁ。
海軍さんのね。
そのうちの、なんぼかをうちが
いただいてますねん。
マサやんには、横須賀でその
荷受けをしてもろてうちっ側の
荷捌きへ運んでもらう指揮を
執ってもらお、ちゅうわけです
わぁ」
「へ?
つまり、わてのデビュー戦?
ちゅうわけですか?」
「ピンポーン !」
「Ding ! Dong !」
「まあ、金山の兄貴の話では
ヘタレも卒業なすった言うこと
なんで卒業記念言うとこです
かな?」
何か、いきなり大きな話が舞い
込んできたようだ。
つまり、金山の身内として内外に
実力を示せと言うことのようで
ある。
「差し当たり日本に帰られる前に
このマーシャルはんと、打ち
合わせしてもろて横須賀で
受けとるもんの段取りをして
ほしいんですわぁ」
「わかりました。
そしたら、いつ打合せに来たら
よろしんで?」
「明後日11時に来て下さ〜い。
それが、終わってからLunch
一緒に食べまっしょ〜う」
「わかりました。
それでは、明後日の11時に」
マーシャル大尉が大きな右手を
差し出してきた。
お互いに握手を交わし菜穂美達の
いるテーブルの方へ向かった。
俺の中の止まっていた歯車が今、
音を立てて動き始めたようだ。
※この小説は、『フィクション』
です。
実在の場所を使用していますが
登場人物、団体は、全て架空の
ものです。
☆この小説の著者は「わたし」
です。
著作権は「わたし」にあり
ます。
頼光 雅




