第2話「メッセンジャーサービス」
第1章第2話
「メッセンジャーサービス」
菜穂美から頼まれて始めた副業。
(...お子ちゃまには、相応しくない
内容です)
第2話
「メッセンジャーサービス」
千日前通りを谷町9丁目で折れ、
谷町筋に入る。
うん?
谷町5丁目を右折して、はあ?
そんなビルあんのんか?
あ、ほんまにあった。
俺は、ハザードを出して左に寄り
車を停めた。
わかっちゃいるけど少し緊張。
何せ、運ぶものが運ぶもので
ある。
ああ、オートロックかいな。
ピンポ〜ン
チャイムの音がやたら大きく
響く。
時間は深夜1時にかかる頃で
ある。
「はい」
若い女の不機嫌な声が答える。
「夜分に恐れ入ります。
メッセンジャーサービスです。
代引きのお荷物です」
女の声が突然嬉し気なものに
変わった。
「待ってましたぁ。(^_^)
どうぞ」
エントランスを潜りエレベーター
に乗る。
え〜っと、部屋は?
ああ、あっこか。
深夜のマンションの廊下は静まり
かえり、安全靴の音だけが響く。
なんや、オバQの足音みたいやな
と一人笑ってしまう。
目指す部屋の前。
ドアホンを押す前に扉が開く。
俺は、営業用スマイル一杯に
「代引き金額2万円です」
と言いながら封書を女の手に
渡した。
「はい。
じゃ、これ」
もう、何で二つ折りで隠すように
札渡すねん。
と、思いながらも
「ありがとうございました。
領収書は出ませんがよろしい
ですか?」
俺は頓珍漢なことを言った。
「ああ、いらないです」
「ありがとうございました 」
俺は丁寧に頭を下げて女の元を
辞した。
車に戻った俺は大きなため息を
ついた。
「あ、あかん!
ため息ついたら幸せが逃げるん
や」
俺は、携帯を手に取った。
「菜穂美?
終わったで。
今、どこや?
わかった」
俺は、シフトをローに入れ、車を
スタートさせた。
「ほい。
これ集金した金な」
「(♀)ほな、5000円な。
でな、ハマちゃん。
頼みあんねん」
「なんや、もっぱつ(もう一発)
してくれは堪忍やで。(笑)」
「(♀)何言うてんねん、この
スケベオヤヂ」
「オヤヂ言うても返事せぇへん
言うてるやろ(笑)」
「(♀)お金、入れに行かなあかん
ねん。
乗してってくれへん?」
「はいはい。
ほんまに人使いの荒いやっちゃ
なぁ。
乗りいや」
「(♀)サンキュ。
せやからハマちゃん好きやぁ。
chu!」
車の中で、俺は菜穂美に訊いた。
「なぁ。
俺、一応赤井電機の配達してん
のや。
明日も仕事あるしな。
俺はいつ、どこで寝たらええ
ねん?」
「(♀)しょうむないこと言いな
やぁ。
せやから、あんたもやって
みぃて。
2、3日寝んでも飲まず食わず
でも平気の平左やから」
「ボケぇ、しばくぞ。?
俺はまだ人間やめとない言う
とるやろぉが」
「(♀)ふ〜ん。変なとこ真面目
やねんから。」
「ほっとけっ、あふぉ!?
人間誰かて信念があるんぢゃ。
その先どっちや?」
「(♀)あ、右曲がって」
俺は、急ブレーキを踏んだ。
「あふぉ。
進入禁止やないか。
こっから遠いんか?」
「(♀)200mくらいか
なぁ?」
「ほな、ここで待っとくから
行ってこいや」
「(♀)イヤや。
なんでそんな冷たいこと言う
のん?」
菜穂美は、頬をプッと膨らませて
拗ねるように言った。
こんな仕草に俺は弱い。
「よっしゃ。
ほな、しゃあないな」
俺は周りに人通りのないことを
確認して乱暴にギアをバックに
入れた。
「(♀)ちょお、ハマちゃん。
進入禁止言うたやん」
「やかましぃ!
黙っとけ!」
俺は、バックで道を逆走して
いった。
「(♀)え゛え゛ぇ?!
こんなんありなん?」
よう言うで、この女。
俺が弱い仕草、知っとって言う
とる。
「奥の手や。
誰にも言うなよ。
おぉ、この辺か?」
「(♀)あ、ここで止まって。
ちょぉ、金払いに行ってくる
から」
「おぉ、ほな帰るで。
お疲れ。」
「(♀)ちょぉ、待ってえやぁ。
また、そんな冷たいこと言う
しぃ〜」
「わぁった、わぁった。
そないに拗ねなや。
待っといたるから」
「(♀)うん。(満面の笑)
すぐ戻ってくるから待っといて
やぁ」
俺は、オンナの可愛い仕草に
負けて待っているしかなかった。
なんや?
携帯が鳴っとる。
は?
菜穂美やないか?
「(♀)ハマちゃ〜ん?
堪忍、もう二つほど頼まれて
くれへん?」
「怒るで、しかし。(笑)
by Yasushi Yokoyama.
ほんま人使いの荒いやっちゃ
なぁ。
わぁったわい」
「(♀)堪忍な。
今度は、うちも横乗ってく
さかい。」
「(やれやれ、人使い荒い女に
惚れてしもたもんや)」
「(♀)なんか、聞こえたで。
フフフ」
え゛! 口に出したつもりは
なかったんやが・・・
「今度は、どこや?」
「(♀)阿倍野筋出てくれる?
道、言うから」
深夜の阿倍野筋をツーショット
かいな。
惚れたオンナと二人連れ。
それも、悪ないか。
しかし、寝る時間をうまいこと
確保せんとこれはマジ危ないなと
考えているうちに菜穂美が戻って
きた。
「(♀)お待ち〜。
ほな、お願いっ」
俺は、うなずいて車をスタート
させた。
「(♀)うちの世話になってる
お姉さんのとこやねん」
訊きもしないのに菜穂美が話
だした。
考えてみたら普段、菜穂美が何を
して食っていて、どこに住んで
いるか知らなかった。
俺は、ふと訊いてみた。
「なぁ。
おまえやぁ、普段何して食って
んねん?
家、どこやねん?」
「(♀)・・・」
ん?
何か聞いてはいけないことを
聞いてしまったのか?
沈黙が続く。
「すまん。
訊いたらあかんこと訊いて
しもたみたいやな。
堪忍やで」
「(♀)・・・かまへん。
いつかは言わなあかんと思てる
けど」
「言いたないことは、言わんで
エエねんぞ。
日本国憲法でそう定められとる
んやから」
※日本国憲法第三十八条
【不利益な供述の強要禁止、自白
の証拠能力】
1
何人も、自己に不利益な供述を
強要されない。
・・・ちょっと、違うかなぁ?
「(♀)プッ。
そんな大げさなもんとちゃう
って」
菜穂美は少しだけ機嫌を直した
ようだ。
「(♀)あ!
その先のマンション。
ここでエエわ。
もう一つんとこはお姉さんと
行くからエエよ」
「ほな、ここでええねんな。
今度こそ帰るで」
「(♀)おおきにぃ。
明日から、またお願いしても
いいですか?」
「何、改まっとんねん。
惚れた弱みや。
かまへんで」
「(♀)よかったぁ。
ほな、これ。
あと二回のお手当。
明日また、8時頃連絡くれる?
仕事用意しとくから」
今度は、封筒に入ったものを
俺に渡した。
「10-4。
20時過ぎに電話するわぁ。」
「(♀)ほんまにハマちゃんは、
24時間制やね。(笑)」
菜穂美がマンションに入って
いったのを確認して俺は車を
スタートさせた。
まあ、あんだけの時間と手間で
1万5千円やったら楽でエエな。
信号待ちの時、俺は封筒を開けて
みた。
「??????」
1万円札と一緒に白い粉の入った
ビニール袋と注射器が・・・。
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※この小説は、『フィクション』
です。
実在の場所を使用していますが
登場人物、団体は、全て架空の
ものです。
頼光 雅
運命の歯車が動き始めました。