第17話「Sunset Cruise」
第17話
「Sunset Cruise」
日本の披露宴と違い来賓挨拶など
はない。
その代わり俺たちはキャンドル
サービスよろしく志水叔父夫妻の
介添えで各テーブルをまわって
挨拶をしてまわる。
パーティーは終了の挨拶もなく
三々五々それぞれの都合で散って
行く。
これがスタイルのようである。
俺たちは、和美さんお薦めの
サンセットクルーズに出かけた。
「はに〜。
おまえ、船大丈夫やろな?」
「(♀)だ〜りんのお腹の上ほど
揺れへんやろ?
それやったら、大丈夫やと思う
で」
「ははは。
何言うてんねんこいつは。
めっちゃ可愛いやっちゃな。
ほな、俺のKissで酔うてもらお
か」
「いや〜ん、何キザなこと言うて
んのぉ。
このスケベオヤヂ」
「もっぺん念のため言うとくぞ。
オヤヂ言うても返事せぇへん
からな(笑)」
軽〜く夫婦漫才をしながら俺達は
ハーバーへと向かった。
後ろにはジミーとエリーが続く。
「浜田さん、昨日もご覧になった
と思いますがグァムの夕陽は
どこにも負けないくらい美しく
厳かですよ」
「そうですよ。
何度見ても良いものですわ」
ジミーとエリーが言う。
「(♀)すごい楽しみやわぁ」
ハガンタシ号。
チャモロ語で「ウミガメ」と言う
意味らしい。
船内は日本人の新婚さんや家族で
ほぼ満員の状態である。
船内に出航のアナウンスが響く。
「本日は、ハガンタシ号へよう
こそ。
当船は、波の穏やかな湾内での
航行です。どうぞ、ご安心の上
他では味わえないこの夢のよう
なロマンティックなひと時と
興奮をご満喫下さい」
ハガンタシ号は、静かに岸壁を
離れて行った。
「(♀)わぁ、間近で見る夕陽て
すんごい。
な〜んか日の出と違て、胸打つ
もんがあるわぁ。
うるうる」
お〜っと、また「さとう珠緒」が
降りてきよったぞ。
しばし、俺たちは沈み行く夕陽に
心を奪われていた。
エアコンのない吹き抜けの船内で
あるが潮風が心地良い。
「お?
何や、エエ匂いがしてきたぞ」
「(♀)もぉ!
人がロマンチックな気分に
浸ってるのにぃ。
あんたは、ほんまに色気より
食い気やなぁ。
そないに腹減ってんねんやった
ら、うちをタ・ベ・テ・」
「いただきまっせ〜。
それは、ホテルに帰ってから
ゆっくりと」
「(♀)アカン。
やっぱり、スケベオヤヂや」
「オヤヂ言うても返事せん言う
てるやろぉが」
「(♀)返事してるやんか。
よぉ、言わんわこのオヤヂ」
「お仲のよろしいことですわ」
エリーがかすかにジミーを睨み
ながら微笑む。
「ゴホン。
さて、そろそろテーブルの方へ
参りましょうか」
ジミーが慌て言った。
料理は、オリジナルを崩さない
程度に日本人好みにアレンジした
チャモロ料理である。
「(♀)うわぁ、美味しい〜
けど、ちょっとピリっとすん
ねぇ?」
「ほんまやぁ。
こりゃあ、ピリ旨やなぁ」
「(♀)うぅわぁっ、でかっ!
何、これ?」
しばし、言葉を忘れて料理の方に
向かう。
色とりどりのトロピカルドリンク
も美味しい。
食が進む、進む。
中央の方では、何やら始まった
ようである。
陽気な音楽と共に、エンター
ティナーが現れダンスパーティー
の始まりである。
「(♀)だ〜りん。
うちらも踊りに行こ。
ほらぁ、ジミーさんも
エリーさんも行こ行こ」
「よっしゃ。
ほな、行こか」
ハワイアンあり、チャモロあり、
カントリーやブルーグラスありで
フォークダンスのメロディまで
流れてくる。
これらが全て生演奏である。
最後は、お約束のビンゴゲームで
締めくくりであった。
「カメラをお持ちの上、軽装で
お越し下さい」
の意味が、ここでわかった次第で
ある。
ハガンタシ号が静かに着岸した。
「(♀)いやぁん。
むっちゃ楽しかったわぁ」
「ほんまやな。
まさか、船の上で踊るとは思て
へんかった」
「いやいや。
この様な形式は、普通なん
ですよ。
さてと、明日はどの様にされ
ますか?」
「(♀)決まってるやん。
明日は、On the Beachやんか。
ねっ?だ〜りん」
「そやな。
菜穂美もお気にの水着、着たい
やろぉし、そないしょ」
「わかりました。
それでは、明日はゆっくりと
10時頃にお迎えに参ります」
「Ten-four。
そしたら、ジミー明日は10時
にロビー言うことで」
「それでは、ホテルまでお送り
致しましょう」
俺たちは、ホテルへの帰途に
ついた。
※この小説は、『フィクション』
です。
実在の場所を使用していますが
登場人物、団体は、全て架空の
ものです。
☆この小説の著者は「わたし」
です。
著作権は「わたし」にあり
ます。
頼光 雅