第14話「俺のラムちゃん誕生?」
第14話
「俺のラムちゃん誕生?」
俺の横には、健やかに寝息を立て
ている菜穂美がいる。
寝顔を見つめる俺の視線を感じた
のか、瞼がゆっくりと開いた。
「すまん、起こしてもたな」
「(♀)おはよう、だ〜りん」
お目覚めのキスは甘かった。
部屋の中はエアコンがほどよく
効いている。
昨日は激しく愛しあった俺達。
今朝の目覚めはとても爽やか
だった。
「(♀)今、何時かなぁ?」
俺は、昨日買ったばかりの
ロレックスを見る。
「現地時間で、そろそろ8時で
ございますよ、お嬢様」
執事のようにおどけて俺が言う。
「(♀)そろそろ、起きて
シャワーせなぁ。
美容室行って髪結うてもらわな
アカンしぃ」
俺の頭はネービーカットなので
頭を洗ってもすぐ乾くし、特に
セットの必要はないのだが菜穂美
はそうはいかない。
「そやな。
それより朝飯も食わんとあかん
で」
「(♀)何やぁ。
だ〜りんは、色気より食い気
かいな」
「何言うてんのや?
朝飯は一日の源やねんで。
例えちょこっとでも腹になんぞ
入れとかんと」
俺は、やさしくお嬢様に言った。
「(♀)え〜。
だーりん、うちをブタにしよう
としてへん?」
「イヤイヤ。
滅相もございません、お嬢様。
もしかの時は喰らわしてもらお
かとは思ってますが・・・
さぞかし、美味しいことで
しょう」
「(♀)何、言うてんのぉ。
今までさんざん喰らってるやな
いのぉ。
そんなこと言う子には、和美姐
さん譲りの電撃よぉ〜」
「ひぇ〜。
それだけは、ご勘弁を〜」
朝から俺たちの夫婦漫才は絶好調
である。
せ〜の〜で、ベッドから降りて
カーテンを開ける。
真っ青な空とエメラルドグリーン
の海が眼下に広がる。
今日もグァムはドピーカン。
絶好の婚礼日和である。
菜穂美がバスルームに向かう。
テレビのスイッチを入れると、
「I receive a message.
Please contact it
to the front desk.」
「メッセージをお預かりしており
ます。
フロントまでご連絡下さい」
の、文字が流れる。
早速フロントデスク、ダイヤル0
(ゼロ)をプッシュする。
「Good morning, sir.
May I help you ? 」
「Good morning.
Do you have a message for
me ?
Ah,
please say in Japanese. 」
「少々お待ち下さい。
Mr.大西が9時にお迎えに
来られるとのことです」
「ありがとう、わかりました」
電話を切る。
「(♀)だ〜り〜ん?」
バスルームから菜穂美が俺を
呼ぶ。
「なんやぁ?
どないした?」
「(♀)だ〜りんもシャワー
せんと。
ほらぁ〜」
可愛い手がおいでおいでをして
いる。
「ジミーが9時に迎えに来るそう
や」
「(♀)や〜ん、せっかく一発
してもらおう思たのにぃ〜」
「何、言うとんねん。
このお嬢様は・・・」
結局、バス・ルームに引き込まれ
・・・合体。
慌てて身支度を整えた俺達は
ロビーへと降りていった。
ロビーには、ジミーとKen。
そして、一人の陽に焼けた美人が
待っていた。
「おはようございます。
夕べは、よくおやすみになれ
ましたか?」
「おはよう、ジミー」
「(♀)それがぁ、あんまり〜。
だってぇ、だ〜りんが離して
くれへんねんも〜ん」
「(こりゃ。
挨拶もそこそこに何を言うねん
このオナゴは)。
いや、失礼。
そこそこ、いや、ゆっくり。
痛ぇ、嚼んだやないか」
朝から皆で爆笑である。
「浜田さん。
本日、菜穂美さんのお世話を
させていただきます妻のエリー
です。
日本語も大丈夫ですので何なり
と」
「(♀)初めましてエリーさん。
よろしくお願いします」
「菜穂美さん。
初めまして、エリー大西です。
行き届かないこともあるかと
思いますが、よろしくお願い
します」
「ジミー、すまん。
朝飯、食ってるヒマあるやろか
のぉ?」
「ああ、わたしも今それをお尋ね
しようと思っていました。
大丈夫ですよ。
まだ、十分に時間はあります
ので」
俺は、ジミーに耳打ちした。
「よかった。
朝からあいつに、バスルームで
襲われたんや・・・」
ジミーが吹き出しそうになるのを
堪えて言った。
「それは、それは。
朝からご馳走様でございます」
「ビシッ!」
「バシッ!」
俺とジミーの首筋に青い火花が
散った。
おそるおそる振り返ると、菜穂美
とエリーが笑っていた。
「あんたんとこもかいな?」
「はぁ、早速直伝を受けられた
ようですねぇ」
「(♀)だ〜りん。
言うたでしょ。
和美姐さんに習た言うて」
朝食はビュッフェスタイルの
バイキングである。
日本人客が多いせいか和食も充実
している。
「ジミー達は?」
「はい。
わたしたちもご一緒させていた
だきます」
みな好きなものを選んでテーブル
に着く。
「わぃは、朝は絶対みそ汁と飯
なんや。
あと、タクアンがあったらエエ
なぁ。
これに、だし巻きとヒジキが
あったらもう言うことない
ねん」
「(♀)偉そうに言うて、あんた
魚食べへんやんか。
好き嫌いしたらアカンで」
「何言うてんねん。
死んだ、ばぁちゃんから男は
朝から魚なんか食べたらアカン
言われとったんや」
「(♀)晩飯の時なんか、もっと
食べへんくせに」
「おまえも、ごちゃごちゃ言う
てんと早よ食わんかいな」
「(♀)そやぁ。
エリーさん聞いてぇなぁ」
「はいはい、何でしょう?」
「(♀)だ〜りんなぁ、うちの
ことブタにして食べる言うねん
でぇ。
どない思います?
食べ頃のオナゴ捕まえて失礼や
と思いません?」
「ちょっと、返す言葉が思いつき
ませんね。
でも仲のよろしい証しだと思い
ますわ。
うちの人なんか食べようと言う
気がとっくの昔になくなった
みたいですもの」
おっと、何やらジミーがやり玉に
挙げられたようだ。
「いやいや、こんだけわしら亭主
連中ボロカス言われてしもたら
立つ瀬がないわぁ。
なぁ、ジミー?」
「・・・」
Kenが後ろで必死に笑いを堪え
ている。
俺は、自慢ではないが早飯だ。
皆がまだ食べ終わっていないので
自然に皆を待つ形になる。
冷たい紅茶でもほしいなとふと
思ったところ、菜穂美がすっと
立ち上がった。
「(♀)だ〜りん、冷たい紅茶
やろ?
ちょぉ、待っといて。
Kenちゃん、エエよ。
うち、行ってくるから」
なんやかんや言うても菜穂美は、
ええオンナであり、良き妻で
ある。
心なしかジミーが羨ましそうな
顔をしている。
※この小説は、『フィクション』
です。
実在の場所を使用していますが
登場人物、団体は、全て架空の
ものです。
☆この小説の著者は「わたし」
です。
著作権は「わたし」にあり
ます。
頼光 雅