第13話「暮れゆくグァム」
第13話
「暮れゆくグァム」
俺たちの部屋は、ロイヤルタワー
にあるロイヤルスイートだった。
もちろんオーシャンビューで
ある。
眼下には、P.I.C.のプールや
マリン・アクティビティー、
ランドアクティビティーが
広がっている。
俺は、実は高いところは好きでは
ない。
しかし、この眺めはそんなことを
言ってられない。
窓辺のチェアに腰を下ろしタバコ
を咥える。
さっき買った青龍のZippo で火を
つけてみる。
テーブルにはトロピカルフルーツ
のバケットが置いてある。
ウェルカムドリンクは、スパーク
リングワインだった。
タバコの火を消して窓辺に佇むと
脇に菜穂美が寄り添ってくる。
「はに〜。
やっと二人きりになれたな」
「(♀)うん。
おおきに、グァムに連れてきて
くれて」
「何言うてんねん。
一緒になってから何もしたって
へん。
堪忍やで。
義兄さんのおかげでこない立派
なところに滞在できるんや。
ありがとうは、俺の方が言わな
あかん」
「(♀)うちのこと、離さんとい
てな」
「当たり前じゃ。
俺は、全身全霊、全力でおまえ
を愛するんや。」
「(♀)だ〜りん、愛してる」
菜穂美が目を閉じてやや顔を
上げる。
自然に二人の唇は・・・。
二人でシャワーを浴びているうち
にどちらからともなく求め合って
しまった俺達。
夕食前の運動と言うことで(笑)
俺は、菜穂美に選んでもらった
淡いブルーのアロハシャツと白の
スラックス。
白のエナメルシューズにレイバン
のサングラスの出で立ち。
菜穂美は、俺と同じ柄でやや
ピンクがかったビーチドレスに
白のサンダル、そしてシャネルの
サングラス。
どこから見ても二人は新婚さんで
ある。
19時に俺たちは、志水夫妻と
ロビーで落ち合った。
志水の叔父は白のバロンタガログ
に白のメッシュのシューズ。
さすがに渋い。
和美さんは、クリーム地に
ブーゲンビリアをあしらった
ムームーでご登場である。
後ろにジミーとKenが従う。
「ほな、行きましょうか。
ショーを見ながらうまいもん
食いましょ。」
志水夫妻の後ろをついていく。
時々、志水夫妻は立ち止まって
道行く人と挨拶を交わす。
彼は、地元では名士で通っている
らしい。
ショーまでまだしばらく時間が
あるようなのでデッキに出て軽く
一杯やることになった。
19時でもまだ明るく沈む夕陽を
見ることができた。
あ、また菜穂美の瞳に星が入り
出した・・・。
「いつ見ても、この夕陽はきれい
ですわぁ。
なぁ、和美」
「ホンマやわ。
浜田はんらも、こっちに住み
はったらどない?
悪いとことちゃいますよ」
「ははは、ほんまですねぇ」
俺と菜穂美はブルーハワイ、
志水夫妻は、ソフトドリンクで
ある。
ジミーとKenもコーラを飲んで
いる。
「明日、式が終わったら
サンセットクルーズ行って
きはったら?」
和美さんが言う。
「(♀)わぁ、それも楽しそう」
「なんや、夕陽を肴になんぼでも
いけそうですなぁ」
「ははは。
なんぼでもいってもうたら、
あっちの世界行きまっせ」
男二人はアホなことを言い合って
いる。
「ボス、そろそろ場所を移動され
た方が・・・」
ジミーが囁く。
「そやな、ほな浜田はん。
アンフィーシアターの方行きま
しょか」
「(♀)わぁ、楽しみやわぁ。
志水の叔父さん。
うち、海外初めてですねんわ」
「あぁ、そらあかん。
あのショー見たら気ぃ失うかも
しれまへんで。
わははははは」
「あんた、何言うてんの。
堪忍な、菜穂美ちゃん」
「(♀)大丈夫です。
うちには、だ〜りんがいてます
さかい(笑)」
「それはそれは、ご馳走さま」
和美さんが微笑む。
辺りが闇に沈み始め、ショーが
始まった。
豪快な火の踊り。
時に激しく、時にユーモラスに。
菜穂美は、気を失うことなく
ご満悦の様子だった。
※この小説は、『フィクション』
です。
実在の場所を使用していますが
登場人物、団体は、全て架空の
ものです。
☆この小説の著者は「わたし」
です。
著作権は「わたし」にあり
ます。
頼光 雅




