13 声
誰かが怒鳴るような声が聞こえた気がして、そっと目をあけた。
ちょっとだけ熱くて、重い目蓋。それから、風邪をひいたときみたいに怠い身体。
「最善策と言ってちょうだい。だったら、あんたならこの子をどうするって言うのよ?」
魔女のお母さまの声が聞こえた。
泣いている私を慰めてくださっていた魔女のお母さまは、私が寝てしまってからもいてくださったみたい。
お忙しい魔女のお母さまには申し訳ないけれど、ちょっとだけ嬉しかった。
「連れて帰るに決まっている。こいつは俺のものだ」
それから聞こえた低い声に、びくりと肩が震えた。
貴方は、またいらしてくださった! 無事でいらっしゃられた!
背を向けているから貴方のお姿までは見れないけれど、でも貴方の声が聞こえただけで、じわじわと胸に暖かい何かが広がっていくの。
重い頭を持ち上げて、力の入らない腕を支えに私はゆっくりと起き上がった。
貴方の姿が、お顔が見たいの。
「あんたとはオハナシにならないわ」
「同感だな。あんたが何と言おうと、俺はこいつを連れて帰るだけだ」
「それはさせられないと言ってんのよ!」
大好きな貴方と、魔女のお母さまの姿が映る。
あぁでもどうして?
どうして貴方も魔女のお母さまも、そんなに怖いお顔をなさっているの……?
ゆっくりと持ち上げられた魔女のお母さまの腕は、これから何をしようとしているのか分かって……。
貴方が握った光あふれる拳からは、魔女のお母さまの指先と同じ気配がして……。
「――――!?」
また貴方を失ってしまうような気がして。
魔女のお母さままで消えてしまいそうな気がして。
貴方が外の世界へと消えてしまった瞬間を思い出してしまって。
瞬き一つでもしたら、私の大好きなお二人が消えてしまうような気がして―…!!
ぱちんと、魔女のお母さまが指を鳴らす音と、貴方から放たれる光が視界を埋めつくしたとき、
私はただ夢中で、
産まれて初めて、
“声”を叫びだした。




