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淡褐色と灰色  作者: 葉山
序話【紫色の娘】
13/100

13 声


 誰かが怒鳴るような声が聞こえた気がして、そっと目をあけた。

 ちょっとだけ熱くて、重い目蓋。それから、風邪をひいたときみたいに怠い身体。


「最善策と言ってちょうだい。だったら、あんたならこの子をどうするって言うのよ?」


 魔女のお母さまの声が聞こえた。

 泣いている私を慰めてくださっていた魔女のお母さまは、私が寝てしまってからもいてくださったみたい。


 お忙しい魔女のお母さまには申し訳ないけれど、ちょっとだけ嬉しかった。


「連れて帰るに決まっている。こいつは俺のものだ」


 それから聞こえた低い声に、びくりと肩が震えた。


 貴方は、またいらしてくださった! 無事でいらっしゃられた!

 背を向けているから貴方のお姿までは見れないけれど、でも貴方の声が聞こえただけで、じわじわと胸に暖かい何かが広がっていくの。


 重い頭を持ち上げて、力の入らない腕を支えに私はゆっくりと起き上がった。

 貴方の姿が、お顔が見たいの。


「あんたとはオハナシにならないわ」

「同感だな。あんたが何と言おうと、俺はこいつを連れて帰るだけだ」

「それはさせられないと言ってんのよ!」


 大好きな貴方と、魔女のお母さまの姿が映る。


 あぁでもどうして?

 どうして貴方も魔女のお母さまも、そんなに怖いお顔をなさっているの……?


 ゆっくりと持ち上げられた魔女のお母さまの腕は、これから何をしようとしているのか分かって……。

 貴方が握った光あふれる拳からは、魔女のお母さまの指先と同じ気配がして……。


「――――!?」


 また貴方を失ってしまうような気がして。

 魔女のお母さままで消えてしまいそうな気がして。

 貴方が外の世界へと消えてしまった瞬間を思い出してしまって。


 瞬き一つでもしたら、私の大好きなお二人が消えてしまうような気がして―…!!


 ぱちんと、魔女のお母さまが指を鳴らす音と、貴方から放たれる光が視界を埋めつくしたとき、



 私はただ夢中で、


 産まれて初めて、


 “声”を叫びだした。


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