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ビターレコード

作者: 藤也
掲載日:2026/05/15

「ごめん・・・・、友達のままでもいいかな?」


 早坂昴はたつき君に告白をした。その結果、高3の春に見事に振られた。

 当然友達のままではいられなくなった。


 これで3回目だ。中学で1回。高校1年の時1回。そして今回。

 これまでに合計3回も男性に振られた早坂昴。

 たった18年の人生の中で3回も異性に振られてしまった。

 とても苦い記録の更新である。


 3回の失恋は早坂昴の心に複雑骨折のような大ダメージを与えたが、

 そのたびに立ち上がってきた。とても傷ついたけれど


「私は失敗したわけでも後退したわけでもないよね?チャレンジしたんだ!」


 そのように思い、勇気を出した自分を愛してみる。


 たつき君に振られた日の放課後、帰り道でコーヒーショップに一人寄る。

 ショートケーキとコーヒーをオーダーして窓際の席に座り、なんとなくボーっとして窓の外を見る。

 茶色の小さなダックスフンドをリードを引いて散歩させている女性。その女性の反対方向からベビーカーを押して歩くキャップを被った主婦らしき人がすれ違う。この人たちは同じ町に住んではいるけれど、全然知らない者同士であろう。

 なんてことのないありふれた街中の風景。



「はあ・・・」


 とため息をつく。このため息は席についてほっとして出たものなのか

 傷心のため息なのかわからない。


 次は店内の様子を見る。


 テーブルをはさんで向かい合って座り笑いあう若いカップル。

 どこかの学生であろう教科書を広げて自習をしている人。

 スーツ姿でノートパソコンのキーボードをカタカタと叩いて仕事をしている中年サラリーマン。



 そこへテーブルの隅に「恋みくじスロット」というアプリのQRコードが視界に入った。


「恋みくじ!?・・・・」


 お遊び程度のものとはわかっているけれど、早坂は鞄からスマホを出してQRコードを読み取ってみた。

 結果はすぐに出た。


「末末吉」


 明けない夜はない。上がらない雨はない。

 今は厚い雲に覆われていてもいつか必ず太陽の光があなたに降り注ぐでしょう。待ち人はそのうち現れるでしょう!

 ラッキーアイテムは桜の小枝。



 末末吉って初めて引いた・・・。こんなものがあるのか?

 凶と何が違うのかな?散々励ましてくれてる文面だけれど要するに良くはないってことか?

 ラッキーアイテムが桜の小枝ってどういうことだよ?

 そんなものを持ち歩いている奴がいるのか?かなり無理がないか?


 自分の引いた恋みくじの運勢に突っ込みまくる早坂昴。


 ショートケーキをフォークでえぐって一口食べる。咀嚼するたびに口の中にスイーツの甘みが優しく広がる。そして少し苦いコーヒーを飲む。僅か数百円で手に入るホッとする時間。


「幸せなのか、不幸なのか、分からないな」


 そのあと文庫を1時間ほど読んで店を出ることにした。

 店を出たら小雨が降ってきた。雨粒を顔に受けながら薄暗い上空を見上げる早坂。


「ここまでツイてないと笑えてくるな」


 鞄に入っている折り畳み傘を出して家路につく。

 家に帰ったらシャワーを浴びて母親に散々愚痴を聞いてもらった早坂。



 たつき君に振られて数週間が過ぎた。

 早坂は友達とカラオケに行ったり食事をしたりと、なんてことのない毎日を送っていた。失恋の心の傷はかさぶたができるくらいには回復していた。


 ある日家のリビングで椅子に座り母とだべりながらテレビの音楽番組を見ていた。


 スカイという男性アーティストが登場する。

 唄い踊る姿はとてもキラキラしている。バックダンサーと一糸乱れぬ見事なダンスに歌。たつき君という支えを失ってとても心が乾いていた早坂。

 そんな早坂の前に突如としてまばゆい光とともに閃光のように現れたスカイ


 その洗練されたダンスの動きや歌唱力に心が魅了されていくのを感じる。



「ヤバい!お母さん。私、ハマりそう」

 とつぶやく。


 隣に座る早坂の母親は、


「あら、あはは。立ち直りが早いね」と笑った。



 翌日の朝、昨日早速ダウンロードしたスカイの曲を聴きながら元気よく

 玄関のドアを開ける早坂昴。


「いってきます!」


 靴のかかとがタタッと軽やかに鳴り、学生服のスカートが揺れた。

色々なことがあるけれど前向きに進んでいる早坂昴の姿をユーモアとともに描きました。


評価や感想、リアクションしてもらえたら創作の励みになります。有り難うございました。

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