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さっちゃんがね……

作者: 河童
掲載日:2010/07/09

もう夏ですから百物語の足しになるような話を一つ。

怖くないかもしれません。

 ちょっとした怖い経験を話したいと思います。




 あれは学校で期末試験の三日目が終わったあとでした。

 その日のテストが終わった後、友達数人と俺が所属している××部の部室で勉強会を開くことになりました。部室は畳六畳ほどの広さで人数の割には少し狭く感じましたが我慢できるほどでした。

 テストは四日あり、そのうちの三日を過ぎるとさすがに皆疲労が顔に出ていました。だが残りは一日、明日を乗り切れば楽になると信じてお互い励ましあって勉強を続けていました。その中のA君はいつも明るい性格でたまに間違ったことを教えてきて皆にどつかれていました。

 異変に気づくのにはそんなに時間はかかりませんでした。元気だったA君が日が暮れるにつれてテンションが低くなり顔が青くなっていくのです。死んでも笑わせるの芸人魂を持ったAがこんなになることは今までにありませんでした。

「ゴメン気分が悪くなった」

 Aはそう言いました。他のメンバーもAの顔色が悪くなっていたことに気づいていて、潔く今日は解散することになりました。ちょうど荷物をまとめていると警備員さんが見回りにやってきてもう学校を閉めるからと言ってました。もうそんな時間かと急いで出ようとすると、Aが座って動かないのです。

「大丈夫か?」と、周りにいた仲間も駆け寄るとAは小刻みに震えていました。この状態じゃ一人では帰れないと判断し、Aの家に一番近い俺が付き添っていくことになりました。

 

 帰っている時も彼は小刻みに震えていました。

「急にどうしたんだ?腐った物でも食ったか?」

 俺は冗談交じりにそう言うと、Aは首を横に振ってかすれる声で言いました。

「違う、違う、俺は、見た」

「何を見たんだ?」

 俺はAが必死で何かを伝えようとしているのが分かりました。

「ドアの、窓、あいつがいた、ついてくる」

 その台詞に、俺は勉強会の様子を思い出してみました。あの部室は縦長で、給食の時間のように机を二列に縦に並べていました。Aはいわゆる上座、全員を見渡せる誰とも向き合わない席に座っていました。そして、その席からはどの席よりも自然とドアが見るのです。ドアには普通のガラス窓が付いていて、警備員が見回りの時に部屋を覗く時に使われていました。

「あいつってなんだ?」

 俺が聞いてもAは何も応えてはくれませんでした。

 Aは無事に家までたどり着き、俺はそのまま数百メートル先の自分の家まで歩き出しました。

 そんな時に、俺の携帯が誰かわからない番号を受信しました。

「もしもし」

 こんなことはよくある事だし何の違和感も感じずに俺は電話に出ました。

「もしもし、わたしメリー。さっちゃんがトモダチになったんだ」

「あっそう。よかったね」

 俺はそっけなく返事をして電話を切りました。

 まったく、どこのいたずら電話だ?メリーさんって、聞いたの小学校以来だぞ。

 そう愚痴りながら家に帰りその日は何事もありませんでした。


 次の日、Aから昨日のことを聞きました。

「ああ、ダミーの紙人形を作ってじいちゃんにお祓いしてもらったから大丈夫」

 あとから聞かされた話ですが、Aはいわゆる霊感の強い人でそのおじいちゃんは天才陰陽師だったそうです。おじいちゃんが「渇!」と叫べばたいがいは何とかなるらしいです。

「ありゃあ強い奴だったな。じいちゃんが顔真っ青にしてあの後お寺に連れてかれたもん。その後のことは覚えてねー」

 Aはそう笑っていましたが、最終的に何を見たのかは教えてくれませんでした。


 Aの名前は皐月、昔はさっちゃんって呼ばれてたそうです。

 Aは一体何を見たんでしょうね。もし、Aのダミーがトモダチになってなかったら次は俺だったんでしょうか。

そしてあの電話は……。

これは半分フィクションです。

半分は……

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