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定年後に目覚めたら新人研修初日だった件~元課長の俺、現代知識で会社と美人社員をまとめて救います~  作者: いわん


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8/13

第8話:配属日本番に業務フローを改善。

審査部配属初日は研修で終わった。

翌日。

朝礼が終わると、各自に分厚いファイルが配られた。

「これが、この審査部の基本フローです」

係長が淡々と説明する。

案件受付から一次審査、再確認、課長決裁、部長承認。

帳票は五種類。処理用Excelファイルは三つ。

同じ数字を、別々のファイルに手入力している。

――懐かしい。

三十年前、俺が何度もため息をついた光景だ。

非効率で、ミスが起きやすく、それでも誰も手を付けない。

「今日は、この流れを実際に回してもらいます」

新人たちは一斉にパソコンを開く。

隣の席の先輩は、早速、セルをコピーし間違えている。

俺は、画面を見ながら静かに確認した。

数式、参照、承認印欄。

――変えられる。

午前中が終わる頃には、全体の流れが見えた。

この部署が遅い理由。忙しいのではない。無駄が多いだけだ。

昼休み、俺は自席でExcelファイルを開いたままにしていた。

「相良くん、昼行かないの?」

先輩が声をかけてくる。

「後で行きます。ちょっと、気になるところがあって」

適当な理由でやり過ごす。

そして、手を動かした。

入力欄を統一。

参照を一元化。

承認段階ごとに色分け。

チェックが終われば、自動で次の帳票に反映される。

――三十分。

三十年前、俺が何度も上に出して却下された改善案だ。

今なら、新人の「ちょっとした工夫」で済む。

午後。

再び演習が始まる。

「……あれ?」

先輩が首を傾げる。

「入力、終わった?」

「はい」

俺が答えると、周囲がざわついた。

「早くない?」

「まだチェック残ってるでしょ?」

「いえ、もう全部通ってます」

俺は画面を見せた。

承認欄まで、すべて埋まっている。

「なにこれ……」

早見が、画面を覗き込む。

「数値、連動してる?」

「ええ。同じ数字を三回入れるの、無駄なので」

彼女は一瞬、言葉を失った。

「これ、誰でも使える?」

「使えます。共有すれば」

気づけば、周囲に人が集まっていた。

同期、先輩、係長。

「ちょっと待って。相良くん、これどうやった?」

係長が本気の声で聞いてくる。

「Excelの基本機能です。承認ルートも、ここを一段省略できます。課長決裁前に係長確認を入れてますけど、実態は同じなので」

係長は黙り込んだ。

そして、苦笑する。

「……確かに。なんで今まで気づかなかったんだろうな」

その様子を、奥の席から課長が見ていた。

「どうした?」

事情を聞き、俺の画面を見る。

「……なぜ、こんなことが分かる?」

課長の眉が、困惑気味に動く。

「前職……じゃないな。新人だよな?」

「はい」

俺は、それ以上説明しなかった。

説明する必要はない。

結果だけ、そこにある。

その日の作業は、予定より二時間早く終わった。

残業前提だった空気が、妙に軽くなる。

「相良、助かったわ」

「これ、正式に使えない?」

「明日から共有しよう」

評価は、まだ表に出ない。だが、確実にポイントは積み上がった。

俺は席に戻り、静かにファイルを閉じた。

三十年遅れの新人――元・万年火消し課長。

俺が知っているのは、特別な裏技じゃない。

無駄を放置すると、現場が死ぬ

ただ、それだけだ。

この部署は、まだ変えられる。

いや――もう、変化は始まっていた。


次回予告:

有能すぎる新人への、上司の醜い嫉妬。

押し付けられた地雷案件を、俺は「課長の手柄」に変換して静かに飼い慣らす。

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