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定年後に目覚めたら新人研修初日だった件~元課長の俺、現代知識で会社と美人社員をまとめて救います~  作者: いわん


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26/29

第26話:株主総会で無双。

株主総会の空気は、独特だ。

拍手はある。

だが、期待ではない。

「本当に大丈夫なのか」という、無言の圧が漂っている。

業績は回復傾向。

だが、改革期の企業に対し、株主は甘くない。

数字が良くても、「たまたまではないか」「再現性はあるのか」

――そこを見られている。

壇上に並ぶ役員たちの表情も、どこか硬い。

――ここで突っ込まれれば、長引く。

最悪の場合、信任そのものが揺らぐ。

そんな空気の中、社長が一言、切り出した。

「本日は、業務改革の進捗について――実務責任者から、説明させます」

視線が、一斉に集まる。

俺だ。

三十年遅れの新人。肩書きは、まだ管理職ですらない。

この場にいる誰よりも、場違いに見える存在だろう。

だが、俺は静かに立ち上がった。

「お時間を、十五分ください」

ざわり、と小さく波が立つ。

短い。

だが、その自信が逆に空気を締めた。

スクリーンが切り替わる。

派手な演出はない。

あるのは、数字と構造だけだ。

「まず、結論から申し上げます」

俺は、淡々と告げる。

「当社の利益回復は、個人の頑張りではありません。再現可能な仕組みの成果です」

一枚目の資料。

承認フローの一本化前後の比較。

待ち時間。

判断ミス。

差し戻し回数。

――すべてが、数値で並ぶ。

感想が入る余地は、ない。

「次に、人件費について。削減ではありません。最適化です」

残業時間の推移。

工数と成果の相関グラフ。

「“忙しい人”が評価される会社は、必ず歪みます。今は、“成果が見える人”が評価される状態です」

会場が、静まり返る。

資料をめくる音だけが、やけに大きく聞こえた。

質問が飛ぶ。

「属人化は、本当に解消できているのか?」

「君が抜けたら、また戻るのでは?」

想定内だ。

むしろ、ここを聞かれなければ失敗だった。

俺は、頷いた。

「その懸念は、正しいです。だからこそ、個人に依存しない設計にしました」

次のスライド。

判断基準の明文化。

例外処理のログ化。

監査視点でのチェックポイント。

「“誰がやったか”ではなく、“なぜそう判断したか”が、全て残ります」

役員席で、誰かが小さく頷くのが見えた。

別の株主が、口を開く。

「それで、どこまで伸ばせる?」

俺は、即答した。

「少なくとも、人が増えなくても、利益は伸びます」

ざわ、と今度は明確な反応が起きる。

「理由は簡単です。無駄が、もう隠れないからです」

外注費。

トラブル損失。

判断遅延による機会損失。

「“見えなかった損”が、利益に戻る。それだけです」

説明を終えた瞬間――

会場の空気が、完全に変わった。

最初に、拍手が起きた。

一人、二人。

やがて、会場全体に広がる。

形式的な拍手じゃない。

「理解した」という合図だ。

株主が、納得した音だった。

社長が、深く息を吐くのが分かった。

役員たちも、肩の力が抜けている。

――守り切った。

全員が、そう思っている。

質疑応答は、短かった。

確認はあっても、反論はもう出ない。

総会終了後。

控室で、社長が言った。

「……君、すごいな」

俺は、首を振る。

「違います。資料が、ちゃんとしてただけです」

本心だ。

俺は、英雄なんかじゃない。

無双しているように見えるだけだ。

だが――数字と論理で殴れば、感情も、立場も、黙る。

それを、俺は三十年前に学んだ。その経験があったからこそ、だ。

株主総会は、終わった。

そして、評価は確定した。

この会社は――“感覚経営”を、卒業した。

そして俺は、もう一段、盤面の中心に近づく。

次に問われるのは、ただ一つ。


「この仕組みを、誰が支配するのか」


物語は、さらに深いフェーズへ入っていく。


次回予告:

敗北を認めたライバル・御堂が、俺の「右腕」へと志願する。

最強の矛と盾が揃い、組織の再建は最終フェーズへ突入した。

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