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定年後に目覚めたら新人研修初日だった件~元課長の俺、現代知識で会社と美人社員をまとめて救います~  作者: いわん


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17/23

第17話:ライバル部署のエース登場。

その名前を聞いたのは、社内調整会議の直前だった。

「今回、戦略企画室から、一人出ます」

係長が、少し言いにくそうに言う。

「……御堂です」

その瞬間、周囲の空気がわずかに変わった。

営業も、経理も、システムも。

全員が、その名前を知っている。

御堂漣。

戦略企画室のエース。情より数字を取ると噂の男。

社内最年少で大型案件をまとめ、数字と理論で役員を黙らせた実績を持っていた。

――なるほど。

社長が、盤面を一段上に動かしてきた。

会議室に入ると、すでに一人座っていた。

背筋が伸び、資料は完璧に整えられている。

無駄な動きがない。

「初めまして」

男は立ち上がり、軽く会釈した。

「戦略企画室の御堂です」

「審査部の相良です」

握手は、短く、強かった。

力を誇示するわけでもない。

だが、引く気もない。

会議が始まる。

テーマは、全社横断のコスト再設計。

これまでなら、俺の独壇場だった。

御堂が、口を開く。

「現場改善は評価します」

前置きは、礼儀正しい。

「ただ、部分最適が過ぎる」

空気が、張り詰めた。

「残業削減、自動化。確かに短期的な効率は上がる」

「ですが、その分、監査負荷と統制リスクが増える」

俺は、即座に返さない。

聞く価値がある指摘だった。

「現場の判断を減らすほど、設計ミスの影響は全社に波及します」

御堂は、淡々と続ける。

「それをどう制御するつもりですか?」

――鋭い。しかも、正論だ。

俺は、資料を一枚切り替えた。

「制御しません」

会議室が、ざわつく。

「正確には、中央集権では、です。分散させます」

「分散は、管理不能になる」

御堂が即座に返す。

「なりません」

俺は、視線を外さない。

「責任と判断基準を、同じ場所に置くからです」

ホワイトボードに、二本の線を引く。

判断。

責任。

「今までは、これがズレていた」

俺は御堂に向き直る。

「だから、事故が起きた」

御堂の目が、細くなる。

否定ではない。

分析だ。

「……理屈は通っている……だが、理想論にも見える」

「未来を見ない改革は、すべて理想論です。過去の延長線だけを見ている限り」

俺は、静かに言った。

一瞬。

会議室が、完全に沈黙する。

御堂は、ゆっくりと息を吐いた。

そして、初めて笑った。

「噂通りですね」

「即論破されない人物に出会うのは、久しぶりだ」

「こちらこそ」

俺も、わずかに口角を上げる。

「簡単に賛同しない人がいて助かります」

その一言で、空気が変わった。

対立ではない。

――競合だ。

会議は、結論を出さずに終わった。

だが、誰も不満そうではない。

むしろ、昂揚していた。

退出時。

御堂が、俺の横に並ぶ。

「相良さん」

低い声だった。

「あなたのやり方、危ういが……面白い」

「御堂さんも」

「守りが硬い。でも、攻める準備はできている」

数秒、互いに視線を交わす。

「次は、もう少し深いところでやりましょう」

御堂が言った。

「望むところです」

未来からこの会社に来て。

勝てるかどうか分からない相手と向き合ったのは、初めてだった。

だが、不思議と不安はなかった。

むしろ――楽しい。

盤面に、駒が一つ増えた。

強く、賢く、厄介な駒だ。

そして俺は、直感していた。

この男は、いずれ――敵で終わらない。


三十年遅れの新人は、初めて、互角以上の視線を受けながら、次の一手を静かに考えていた。


次回予告:

他部署が諦めた屈辱の交渉を、数字と沈黙で逆転させる。

交渉の席で俺が見せた「底知れぬ強さ」に、上司たちは畏怖を抱く。

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