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定年後に目覚めたら新人研修初日だった件~元課長の俺、現代知識で会社と美人社員をまとめて救います~  作者: いわん


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13/16

第13話:社長に直接プレゼン。

社長室に呼ばれる、というのは本来なら緊張するものらしい。

だが、俺の頭の中は静かだった。

理由は単純だ。

――結論は、すでに分かっている。

「相良くん、だったね」

革張りの椅子に腰掛けた社長は、穏やかな声でそう言った。

机の上には、俺が事前に提出した一枚の資料。

「残業削減の件、見せてもらった。現場の数字がきれいだ」

「ありがとうございます」

その言葉を合図に、俺はタブレットを立ち上げた。

「本日は、その延長線の話です」

「延長線?」

「はい。“起きる前に潰せる損失”についてです」

画面に映したのは、過去の決算資料だった。

三十年前、十年前、五年前。

時期は違うが、共通点がある。

「これらはすべて、当時は問題視されなかった案件です」

「……だが、後で不祥事になっているな」

「はい。内部では“想定外”と処理されました」

社長の眉が、わずかに動く。

「想定外ではありません」

俺は淡々と言った。

「想定しなかっただけです」

次のスライド。

審査フローの簡略図と、赤く囲った一点。

「このチェックが、形骸化しています。人は確認した“つもり”になり、数字は通る」

「だが、後工程で破綻する」

社長の言葉。

「ええ。結果、回収不能。信用失墜。最悪、倒産です」

数字を出す。

過去に失った金額。

ブランド価値の低下。

裁判コスト。

「これを防ぐには?」

社長が聞いた。

「判断を増やす必要はありません」

俺は首を振る。

「判断を“人”に任せないことです」

改善策は三つ。

――例外処理の自動検知。

――判断基準の数値化。

――責任所在を“個人”から“仕組み”へ移す。

「新人がミスをしない会社は作れません。それは不可能です」

そして、俺は、社長に言った。

「ですが、新人が“致命傷を負う会社”は、作らない。そうすべきです。それは避けられます」

社長は、しばらく黙って画面を見ていた。

やがて、静かに息を吐く。

「……この提案、いつから考えていた?」

「入社初日です」

俺は答えた。

「正直だな」

社長が静かに告げる。

「事実ですので」

沈黙。

それから、社長は笑った。

「君は、火が出てから消す人間じゃない」

「はい」

「出る前に、水を撒く人間だ」

机の引き出しが開く音。

一枚のカードが差し出された。

「この件、私直轄で進めてほしい」

「権限は?」

「必要な分だけ、すぐ出す」

それで十分だった。

社長室を出ると、廊下の空気が少し違って見えた。

誰も知らない。

だが、会社の未来は、もうあの頃とはズレ始めている。

三十年遅れの新人――元・万年火消し課長である俺。

その俺は今日、炎を消す役目から、火を起こさせない役目に変わった。

評価は、もう“部署”の話じゃない。

そして――

この会社の舵は、確実に、俺の視界に入ってきていた。


次回予告:

社長直轄、全部署横断の「特別チーム」が始動。

俺の周りには、現場の悲鳴を知るプロフェッショナルたちが集結し始める。

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