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定年後に目覚めたら新人研修初日だった件~元課長の俺、現代知識で会社と美人社員をまとめて救います~  作者: いわん


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10/11

第10話:俺は数字で黙らせる。

結果が出たのは、想像より早かった。

俺が手を入れた業務改善は、帳票やフローの整理だけでは終わっていない。

作業時間の短縮、確認工程の削減、承認待ちによる停滞の解消――

それらをすべて、逃げ場のない数字に落とし込んでいた。

感想や評価ではない。

誰が見ても同じ結論に至る形だ。

週次の部内ミーティング。

長机が並ぶ会議室で、課長がいつものようにプロジェクターを操作する。

淡々と進捗報告が続き、空気はどこか弛緩していた。

「……では、次。業務改善の効果についてだが――」

その一言で、画面が切り替わる。

瞬間、ざわりと空気が揺れた。

処理件数は、明確に増えている。

残業時間は、はっきりと減っている。

そして何より――コストが目に見えて下がっていた。

棒グラフと折れ線。

改善前と改善後。

差は、言い訳できないほど鮮明だ。

「これは……」

誰かが、思わず漏らした声。

否定でも賛美でもない、ただの驚き。

改善前後の比較表。

一案件あたりの平均処理時間。

月間換算された人件費削減額。

数字は整然と並び、感情の入り込む余地がない。

「相良くんが作った新フローを基準にした数字です」

係長が補足する。

その声音には、隠しきれない感心が混じっていた。

課長は、何も言わない。

ただ腕を組み、スクリーンをじっと見つめている。

否定しようがない。

感覚論も、根性論も、経験則も――この場ではすべて無力だった。

「……偶然、という数字じゃないな」

ベテランの先輩が、ぽつりと呟く。

「はい。再現性があります」

俺は指名されていないが、必要なところだけ口を挟んだ。

「この改善は、個人スキルに依存しません。誰が担当しても、同じ効果が出る設計です」

つまり――俺がいなくても回る。

だからこそ、個人の手柄ではなく、組織の成果になる。

会議室が、しんと静まり返った。

課長は、咳払いを一つする。

「……数字は、確かだな」

それ以上、何も言えなかった。


数日後。

この資料は、部内だけで終わらなかった。

課長名義で、上層部向けの報告資料に組み込まれ、役員会で使われる数字になった。

「最近、この部署、利益率がいいらしいな」

そんな噂が、廊下の向こうから流れてくる。

同期たちの視線も、確実に変わった。

驚き、納得、そして無意識の距離感。

昼休み、早見が弁当を広げながらぽつりと言う。

「……もう、新人の仕事じゃないですよね」

「数字が、そう言ってるだけです」

俺は、それ以上でも以下でもない答えを返す。

チートだと騒ぐ必要はない。

証明は、もう終わっている。

課長も、直属の上司も、反論しない。

いや――できない。

否定するには、より良い数字を出すしかない。

だが、この設計は、三十年分の失敗と成功を踏まえた最適解だ。

追いつけるはずがない。

俺は、目立たずに席に座り、キーボードを叩く。

静かに。

確実に。

盤面は、もう一段、俺に傾いていた。


次回予告:

後輩・白石が踏み抜いた致命的な地雷。

かつての悲劇を繰り返さないため、俺は「仕組み」そのものを修正し、彼女を救う。

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