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1-X 女神と転生者と人々

ーー転生者。

彼らは、人から身体を取り上げて命を得た。

彼らは、世界を望むままに変容させた。

彼らは、権能を使い人の上に立った。


—-


「はい次〜」


ここは雲海にある女神の神殿。中には机と椅子、そして天井まで届きそうな門だけがある。

門は扉が無く、その向こうはどこに繋がっているのかわからない、星空のような空間が広がっていた。


神殿の中央に置かれた白い椅子には、身体を一枚の布だけで包み、背中に大きな白い翼を携え、頭上にはリングが輝く女神が座っていた。

当初の彼女は、例えるなら『地下アイドル』のような服装だったが、ある時『相応しい格好』というものを偉そうに語る者が現れた。

苛立ちながらも言われた通りに装ってみれば、思いのほか好評だったことから、以来この姿で居るようになった。


(推してもらうためには、女神感?が必要らしいからね)


彼女の前には、虚ろに揺らめく人型のシルエットが並んでいる。これらは『魂』と呼ばれており、人が死後に肉体から分離された残滓。

女神は、この魂たちに転生後のレクチャーをして、背後の門から地上へと送り出す。


「ーー貴女ね、文句言わないの。ご令嬢よ?子爵家のご令嬢。裕福スタートの何が不満なの?え?どうせ追放される?転生したら権能で生み出せる本を読んでみて。そこに貴女の未来が書いてあるの!つまり、どうとでもなるってわーけ!うんうん」


女神の前に居るその魂は、青から赤へと変わり、どこかに妥協点を見出したのか、最終的には白へと戻った。器用に感情を表現してみせる。

とは言え、女神はこれらの魂が何を考えているのか、などと言ったことには、かけらも興味がない。


(それでも、ひとつひとつの魂が大切な布石。受け答えは丁寧に、不安があるなら解消してあげて、そして笑顔でお見送りするのよね)


すべての魂が漏れなく『死』という体験を経てここに居る。

様々な原因により迎えた結末、そのストレスは計り知れない。

だから生まれ変わっても良いことなど無いと、決めつける者も多い。

初めの頃はクレームの嵐だった。態度が悪いとか、説明が足りないとか、他人事だとか、挙げたらキリがない。

しかし彼女は数々の経験を経て、寄り添っているように振る舞う術を学んだ。


「では女神のご加護を!いつでも見守ってるんで!うんうん!はい次〜。んんっ。貴方の権能は世界をゲーム化できるみたいね。いいよね!とっても!ステータスオープンもできるみたいだし。もちろんアイテムボックス付き!なんと!無限!それから―」


そう言ってから、ぐいっと身体を寄せる。

こういったタイプは、少し前かがみに近づいて親密な感じに話すと、不思議とスムーズに終わる傾向にある。


「…それからね、貴方だけの能力ツリーとかもあるの。自分好みに育成できるね。はーい!女神のご加護を!いつも側にいるよ!うんうん!」


彼女が先程から言っている『権能』とは、死後にのみ得られる『前世を評価して生み出される超常の力』。

女神曰く、肉体と魂が分離する際に、充て所の無くなったそれまでの『経験』が圧縮されたものであるとか。

いずれにせよ、死んでしまった後では一見何の価値もない最期の灯火。


地上では稀に、死の淵から蘇り戦局を変えた英雄、住民全員が消失した村で一人墓から這い出した忌み子、などの現象が観測されている。

女神から言わせれば『単なるエラー』とされるこれらの現象は、人々からしても、神の起こした奇跡、または、眉唾な都市伝説などと称される、特殊で不確実で不明瞭なものだった。

しかし、女神は『転生』という形を取ることで、その奇跡を恒久的に使えることに気付いた。


動物を懐柔し使役する権能、ガチャから宝具を得る権能、すべてを複製する権能、あらゆる魔法をノーリスクで使用できる権能など、その種類は実に様々だ。

これらの権能を振るえば、どんな人間でも容易く一国の王になることができるだろう。

他にも転生の特典として、前世の知識や人を魅了する外見などがついてくるため、普通の人間など比較にならない程のアドバンテージを持って人生を始められる。

言ってしまえば、子供の試合にプロが出るようなものだ。

結果『今度こそ後悔の無い選択が、できるかもしれない』と、そんな考えに至ることは必然。

女神はその価値が伝わるよう懇切丁寧にプレゼンするだけでいい。自分がその機会を与えたという恩を添えて。


—-


本日の受付を終え、一息ついた女神は、その豊満な胸を机の上に預けて特大のため息をつく。


「はー、まじでなんなんだろうね!毎っ回なんだけど!あの上から目線!今日のやつとか話す前からイキってましたよね?!またなんかやっちゃいましたとか、まだ何もやってないんじゃないかなあ!?」


舌打ちが止まらない。

実際、これまで送り出してきた多くの転生者たちは、何かしら性格に破綻をきたしていることが多かった。誰もが羨むような神の奇跡を前に、何故あんなにも尊大で居られるのか。元々自由奔放な性格の自分が、よくここまで耐えられるようになったものだと、女神は自身の成長に感服していた。


「―それでも、目標には確実に近づいてるよね。他の神共も、地上の連中も、いずれは全部、私の物になるんだから』


日々の心労も、大義を遂げるための必要経費だ。

地上の民に崇められる未来、それを毎晩想像して溜飲を下げる。

満点の星空を見上げていると、舌打ちはやがて鼻歌に変わった。


ただし、今日という一日は、そこで終わらなかった。

いつも魂を送り出している門の向こうから、岩が積みあがってくるような、耳慣れない鈍い音が響いてきたからだ。


「んー?」

挿絵(By みてみん)


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