校外学習
今日は校外学習。
史跡めぐりだ。
やっぱり晃と同じ班じゃないのはつまらないけど……もう、ちゃんと付き合ったんだし、肩肘張らないで、学校行事を楽しもうと思う。
「よっしゃー行くぞ!」
現地に着くと委員長が妙に張り切っていた。
「えっ、どこ行くの? どこ行くの? 待ってよ猿渡!」
そして密岡は騒がしかった。
「……たまにはこうやって、雰囲気が変わるのもいいね」
「そうだね」
確かにこんな自然と触れ合う機会はそんなにあるもんじゃない。男子達は放っておいて優花と楽しもう……そう思った。
「そう言えば樹さ、浅井とはデートどこに行った?」
うん? デート?
よくよく考えたら晃とはいつも、どちらかの家でまったりしてるだけで、一緒に出掛けたことは一度も無いかもしれない。
強いて言えば……あの時の打ち上げぐらいだ。
「どうしよう優花……」
「なに?」
「無いかもしれない……」
「無いって、何が?」
「……デート」
「えっ、マジか」
マジも大マジだ。
「いつも、どっちかの家でゴロゴロしてるだけだよっ!」
「まあ、それはそれで少し羨ましいけど」
……なんて言いながらも優花は苦笑いだ。
ダメだ……デートがしたい。
無性にデートがしたくなってきた。
「優花……私、デートしたいかも!」
「お……おう、いきなりだね」
「いきなりじゃないよっ! 私、晃と仲良くなってから随分経つけど……あのライブの時以外は、学校とお互いの家でしか会ってないよ!」
「じ……じゃぁ、誘うしかないねっ!」
そんな話をしていると。
「おーい、今村、小森、早くこいよ!」
委員長に呼ばれた。
「くそっ……晃と出掛けことないのに、委員長と密岡と出かけることになるなんて」
「樹……これは学校行事だよ……お出かけじゃないよ」
「でもぉーっ!」
「いや……なんなら浅井もいるし」
「でも、私の視界にいないしっ!」
「まっ、それについては、大丈夫よ。とにかく行こっか」
……大丈夫? どういうことだろう。
——男子達と合流すると……委員長ががっつりウンチクを垂れ流しはじめた。
ふ〜ん、なるほどって事もあるけど、大半が知っていることだった。
しかしこれは……物語のネタバレを聞かされている気分だ。
自分で見て感じて『あっ、これが例の!』ってなるのがいいのに、これでは感動がない。
……退屈だ。
それはさておき、私たちの班と晃の班は、ほぼ同じコースを巡っている。
さっき優花が言った『それについては、大丈夫よ』とは、このことだったのか。
さすが、親友!
だけど……晃と同じコースなのは嬉しいけど……ちょくちょく聞こえてくる柿本の猫撫で声がウザかったりもする。
それにしても柿本……なんであんなにベタベタしてるのよっ……ムカつくっ!
彼女持ちだっつーのっ!
少しは遠慮しろよっ!
柿本に熱い視線を送っていると、私から見て柿本より手前にいた寺沢と目が合った。
すると寺沢は。
「なあ、柿本……あれ知ってるか! ちょっと一緒に見にいこうぜ!」
「ちょっ、ちょっと何よ寺沢!? 今、あーしは浅井と」
「いいから、いいからっ!」
慌てた様子で、浅井から強引に柿本を引き離してくれた。
ナイス寺沢。
「どんな圧かけたのよ……樹」
「えっ、なんのこと?」
「あんたが寺沢に圧かけたんでしょ……寺沢……顔青ざめてたよ」
「うそっ! 目があっただけなのに」
「……寺沢は何か察したんだろうね」
「……別にそんなつもりじゃなかったんだけど」
「まあ、傍から見てる分には面白いからいいんだけど」
笑顔でそういう優花。
私にとっては笑い事ではないのだけど。
——委員長のウンチクをBGMに浅井たちから少し遅れて、私たちは史跡を巡った。
密岡は視界からは消えているけど、声が聞こえてくるから近くにはいるのだろう。騒がしいやつだけど、こういう時、探す手間が省けるのはいい。
浅井はというと、例の芹沢さんと静かに、見学している。
校外学習前に彼女と仲良くなっていて本当によかった。でないと今頃、嫉妬に狂っていたかもしれない。
「もうちょっと、近付く?」
「……うん」
優花に促され、熱弁する委員長を放置し、浅井たちに近づこうとすると。
「今村、小森、ちょっと待てよ。団体行動を乱すなよ」
委員長に引き止められた。そのセリフは、まず密岡に言えよと思ったけど、校外実習に来てまで揉めたくなかったので言葉を飲んだ。
そんなタイミングで。
「あの、猿渡くんちょっと教えてもらえますか?」
浅井と芹沢さんがこっちに合流してきた。
そして……芹沢さんは委員長を質問攻めにした。
委員長は満更でもなかったようで、得意気に御高説を垂れ流し始めた。
「樹、ちょっといい?」
そんなタイミングで晃が向こうに行こうと指差ししてくれている。
私は迷うべくもなく晃について行った。
*
「やっと、2人っきりになれたね」
みんなと、はぐれてからの晃の第一声だった。
「2人っきりになりたかったの?」
「当然! もう違う班になった時からちょっとイライラしてたよ」
お……おう……晃も同じように感じていたんだ。
「小森さんと芹沢さんと寺沢がね、俺たちに気を使ってくれたみたいだよ。感謝だね」
優花が言っていた『それについては大丈夫』っていうのはこのことだったのね。
校外学習。
晃とは別の班になったけど……そのおかげで、みんなの優しさに触れることができた。
そして——
「樹、この週末空いてる?」
「うん、空いてるけど」
「デートしよ、買い物とか行きたいんだ」
晃にデートに誘われた。
本作が気になる。応援してやってもいいぞって方は、
★で評価していただけたりブクマ、感想、レビューを残していただけると非常に励みになります!
何卒よろしくお願いいたします。




