第6話 襲撃
俺は昨日の事を思い出しヴェルに少し申し訳ない気持ちになった。
俺は勝手に何一つ苦労していないと決めつけて、ヴェルに当たってしまった。
「おい、エル坊。どうした?元気ないな?」
「いえ、大丈夫です……。」
後でこっそり謝ろう。
「そうか、なら良いんだが。早速訓練を開始するぞ。で、エル坊。お前の魔法適性はなんだ?」
俺は回答を出し渋る。言いたくない、絶対に残念がられるか、嘲笑される。
「おい?エル坊?聞いてるのか?」
「……ないです。」
二人の顔が驚愕に変わる。
だから言いたくなかったんだ。どうせ笑われるか、馬鹿にされるか、憐れまれる。
だが、俺の予想とは異なった。
「エル坊は魔法を使えないのに強いんだな……?不思議だ。一回臨戦態勢をとってみてくれ。」
「はい。」
俺は臨戦態勢をとる。
「ん?この前の黒い模様とオーラを出してほしいんだが…?」
俺はなんどかチャレンジするが、この前のなんでもできそうな全能感が来ない。
「ほう……お嬢と同じか!じゃあ2人とも頑張るしかないな!」
なぜかヴェルは嬉しそうにしているが、俺の中では疑問だらけだった。なんでこの前みたいにできないのか、なんで戦えない俺をいさせてくれるのか。
だが、その答えはすぐにわかった。
「なんだ?捨てられるかもって心配してんのか?大丈夫。このノエル様の見つけた原石だぞ?簡単に捨ててやるものか!お前は強くなって私を楽させるという義務があるんだからな!……あーいや、やっぱり間違った。お前はお嬢を守る義務があるんだからな!」
ノエルさんの正直すぎる答えに面白くて笑ってしまう。こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。
「じゃっ、とりあえず……」
カンカンカンカンカン!!!!!!
どこからか鐘が鳴らされる。
ノエルさんが俺たちを守るように腕を広げた。
「ノエルさん何が「しっ!静かに……」」
俺たちは木陰へと移動した。
屋敷の塀を乗り越え、戦闘者が乗り込んでくる。
「お前はここでお嬢を守れ。頼んだぞ。」
ノエルさんは戦闘者の相手をするために本館の方へと向かった。
いきなり2人きりになった。
多くの戦闘者が本館へと向かっているのを陰からそっと見ながら隠れていいた。
ヴェルが震えている。
「お父さま…お母さま……。」
俺はさっき考えていた謝罪をヴェルに伝える。
「ヴェル、昨日はごめんな。ヴェルが何も苦労をしてないなんて断定してしまって。」
「え……?」
「それだけ。見つかってるみたいだから、ヴェルは隠れてて。」
俺は茂みからでて、手を上げる。
「なんだ、ガキか?降参しますってそうはいかないんだな。残念ながら依頼主様は全員皆殺し希望なんだわ。っていうわけで、さようなら~。アーススピア。」
軽い言葉遣いとは裏腹に、地面がいきなり刺してくる。早速俺は片腕を貫かれてしまった。
人生で最大の痛みが体を駆け抜ける。
痛いを通し越し、患部が熱い。焼ける。
「ああああああ”あ”あ”……!!!!」
腕から血が滴り落ちているのをみて脳が情報を拒絶する。
そして、俺は闇へと落ちる。
「殺す。敵は殺す。俺から奪うやつは殺すんだ!!!!」
エルの体に黒い模様が浮かび上がる。ぼんやりと黒いオーラが見える。
「ん~?なんだ~?」
「死ね!」
いきなり眼前に現れ、相手の魔術師に蹴りを放つ。
相手の顔には蹴りが入り、地面を滑りながら吹っ飛んだ。
「死ね!」
まだギリギリ生きている魔術師の首を踏み抜き、頚椎を折った。人生で初めて人を殺した瞬間だった。
俺はヴェルの方を向く。ヴェルは俺に恐怖の目を向けていた。
ヴェルに近づこうと歩み寄るが、ヴェルはその分遠ざかっていく。
完全に怖がられ、避けられていることがわかり、寂しくなった。
その時
「ファイアランス」
ヴェルに向けて業火の槍が放たれる。
「あっ……。」
ヴェルは気づいたが、避けられない。怖くて目を硬く閉じた。
「ぐううぅ……。」
誰かのうめき声が聞こえる。私は熱くない。そっと目を開けると、エルが私を守るようにかぶさっていた。
エルは怖いほど息を荒げながら、相手の魔術師に殺意を向ける。
「殺す!」
一瞬で距離をなくし、強烈なパンチを顔にヒットさせる。相手は脳が揺れたのか、地面に倒れてた。
「死んでくれ。」
冷酷にエルが告げ、エルは魔術師の命脈を断った。
俺はヴェルの方に向かおうと必死に歩み寄るが、体に力が入らない。
ヴェルが近づいてきてくれた。
「熱い……。」
俺の体は重度の火傷を負った。前回にやけどを負ってから、いまだ完治していない上に重度の火傷を負ったため、もはや体は限界だった。
エルは意識が遠のく。5歳の体で大人の魔術師2人相手に勝てること自体が異例であり、十分に健闘している。
「リエラ……ご、めん……。」
エルは意識を失う。
私の前でエルが目を閉じて動かなくなってしまいました。体には無数の火傷のあと。今すぐに冷やさないと命にかかわります。
お願い……お願い……。
「アイスボール!ウォーターボール!」
「アイスボール!ウォーターボール!」
「アイスボール!ウォーターボール!」
なんど唱えても願いはかなわずなにも起こりません。
私は……なんでこんなに使えない存在なのでしょう?
私はついに諦め、エルに謝ります。
「ごめんなさい……エルっ……ごめ”ん”な”ざい”……。」
エルの頬にヴェルの涙が落ちる。
エルの上で泣いていると、エルの呼吸が止まったのが分かりました。
「あっ……」
前にお母さんが言っていました。呼吸が止まったときは口に空気を送りなさいと。
私はエルの口に私の口をくっつけて一気に空気を送ります。
エルの口にくっつけた瞬間に私の中の何かが動いた間隔がありました。なぜかは分かりませんが、なんでもできそうな高揚感で満たされています。
「ウォーターボール!」
エルの上に勢いよく水がかかり、湯気が出ています。喜んでいる暇などありません。エルの命が掛かっているのですから。
「ウォーターボール!」「ウォーターボール!」「ウォーターボール!」
エルの火傷は落ち着きましたが、以前呼吸は戻ったものの、弱いままです。
やったときないけど、やってみるしかありません。
「ウォーターヒール!」
魔法陣が現れ、エルの周りに緑色に光る水が出現しました。成功です!
「あ、あれ……?」
あの高揚感はどこへ行ったのか、今はすごく体調が悪いです。
ヴェルはその場にうずくまり、意識を失った。




