第4話 月と太陽
リエラと別れて既に12時間以上が経過していた。既に外は真っ暗。僕は街で路頭に迷い、たどり着いたのがスラム街だった。
「リエラ……。」
最後に見たリエラの顔は気丈にふるまってはいたが、手は震えていたし、無理して笑っているのが分かった。幼馴染だから、それぐらいわかる。
結局リエラが連れていかれてから、僕は門番の人や他の人に聞いても一切取り合ってもらえず、そして保護すると言われたのに、残念ながら僕の事は放置されていた。
「リエラ……待っててね……僕が必ず助けるから!!」
僕はスラム街の中で決意を新たにする。
月は誰もが同じものを見ることができる。だから僕は好きだ。きっとリエラも見ているはず。この月を見ていると自然と繋がれている気がするから。
「話と違う!!エルは!?」
「うるさいですよ。王女殿下になられるのですから、良いでしょう。今までの貧民生活から一転、ご飯も豪華、服もなんでも買ってもらえる、最高の環境でしょう。いい加減あのような貧相なガキの事は忘れて、明日には王都に向かいますよ。」
「でも、着替えたらエルと一緒に王都に行くって約束だったはず……!!」
「王女殿下!!あなたは我々の傀儡であればよいのです。あんまり言うようでしたら、あの少年は処理させていただきますよ?」
「……っ。」
私は魔法師団の団長を睨みつける。
「ふんっ。分かってもらえれば良いのですよ。次にあの少年の事を口に出したらあの少年とは一生のお別れですからね。仮にあったとしても、知らないふりしてくださいね。」
バタン。無慈悲に響く扉の音。窓ではなく鉄格子から月が見える。
「エル……。」
必死に泣かないように我慢しながら月を見る。エルもこの月を見ているだろうか。
「誰よりも強くなってエルを迎えに行く……!!そして2人で過ごす……!!」
拳に力が入る。
太陽が昇る。
ほとんど眠れなかった。体も硬い場所で横になったから痛い。
「どうにかしてリエラを取り戻さなくちゃ。」
そう、僕は立派なスラムの一員だ。お金もない、助けてくれる人もいない、技術もない。そうなれば盗むか、危険な仕事をするしかない。
スラム街に酔っ払いの集まりが居た。
僕はこの日、お父さんとお母さんには言えない、道を外れた行動をした。
酔っ払いが起きないように忍び足で財布を取った。
心臓が痛い。僕は足音を立てないようそっとその場を離れた。
僕は村から持ってきたパンを食べながら、リエラの救出を考える。
すると僕の周りを僕よりも年齢が上の子供たちが囲った。
「おい、お前。そのパンと有り金全部おいていけ。痛い目に遭いたくなければな。」
これだけの数の戦力には太刀打ちできるわけがない。そもそも僕は魔法の適正のないゴミで、しかも相手の方が年齢は上。筋力でも負けている。
僕は一点突破し、逃げることを考える。
すっと立ち上がり一瞬で突破を試みる。
「うわああああああああ!!!!」
ダンッ!
現実とは無常だ。残念ながら抑え込まれてしまい、突破はできなかった。
「おらっ!」
「おいっ!」
集団から殴られ蹴られる。
痛い……痛い……痛い…財布を取った罰が下ったのかな。ごめんなさい、神様。
集団から暴力を受けて立てなくなった頃、彼らは去っていった。
「う”……ぅう……。」
神様が見ているなんて言ったけど、神様なんているんだろうか。魔法適性がない上に、大好きな両親は死に、唯一の繋がりである幼馴染とは引き離され、周りの人からは裏切られ……のけ者にされ。
ねえ、神様。本当にいるの?なんで僕をこんな目に合わせるの?
僕の中の何かがプツンと切れた音がした。
体の中を熱い何かが通っている。なんでもできそうな気がしてきた。
さっきまで立てそうになかったのに、今では立てる。ジャンプも今までは30cmぐらいだったのに、今では身長1mと同じ1mは跳べる。
俺は早速さっきの集団を追いかけた。
「見つけた。返してもらうよ。俺のモノを。」
ただ走っているだけなのに、すごいスピードが出る。俺は早速殴り掛かる。
相手は必死に応戦しようと殴ってくるが、痛みを感じない。相手は骨が折れたのか動かなくなっていた。
「ひぃ、なんだこいつ……。なんか体に黒い模様が出てるぞ……。」
「しかも黒いオーラをまとってるぞ。」
「おい、やべえよ。逃げるか?」
「いや、これだけいれば倒せる。ガキ1人だぞ?やってやろうぜ!」
集団と俺の勝負は俺の勝ちに終わった。あっけなかった。
「ははっ。俺……強いじゃん。この力があれば……。こいつら俺の事さんざんいたぶってきたからな。」
俺の思考が黒く染まる。
「殺してやろうかな……。」
俺はリーダーの男の後頭部にめがけて思い切り踏みつけを行
「まてっ。」
「あん?」
「その男はもう既に骨が折れている。殺すほどのことでもないだろう?」
「なんだ?邪魔すんなよ。俺はこいつらにさんざん痛い目にあわされたんだ。こいつらを殺して何が悪い?」
「私が見ていないところであればいいが、見ている所ではやめてくれ。不愉快だ。」
「なんだよ、なら早くどっか行けよ。」
「ダメだ。お前のような幼い者は才能を負の方向に向けてはならん。」
「何なんだよ、お前。さっさとどっか行けよ!!俺のお楽しみタイムを邪魔すんな!!!!」
「小僧。落ち着け。」
女がこっちに向かって杖を構える。
「そっちがやる気ならこっちも容赦しないぞ。」
俺は女に向かって全力で踏み込む。
「ウォール」
俺の渾身の拳は女の前にある透明な膜で止まってしまう。
「スリープ」
俺は意識を失った。
どんな場所でも太陽は等しく昇る。
「では王女殿下、出発しますよ。」
「……。」
馬車は無情にも猛スピードで進んでいく。




