第12話 高い壁
「覚醒、第2フェーズ」
俺の体に多くの模様が浮かび上がる。
「エル?早く攻撃してこないのか?」
「言われなくとも攻撃しますよ。おらっ!!ブースト!」
この7年間でエルは自分の力の制御、新しい魔力の使い方を発現していた。
この第2フェーズに移行した場合には瞬発的に筋力を増大させるブーストが使用できるようになる。
エルは瞬きする間にノエルの喉元に食らいつく。
「おらっ!」
ノエルめがけて全力で拳をフルスイングする。
7年前の路地裏では彼女の前にある透明な障壁(魔法障壁)により止められてしまったが、いまでは前とは体つきも変わっている上、筋力を増大させている。
ガンッ!!!!
「くっ!破れないか!」
「おおっ!」
残念ながら魔法障壁は破れなかったものの、魔法障壁ごと大きくノックバックしたのだった。
「これは結構ヤバいかもね~。スチームボム」
エルに向けて飛んでくる第4級混合魔法スチームボムの数々。完全にはよけきれない。
「耐えるしかないよねっ!そして攻撃は最大の防御だ!!覚醒、第3フェーズ」
「爆破!」
エルの目の前で50個を超えるスチームボムが爆発する。
「魔装」
エルの体が完全に黒色の鎧でおおわれる。瞬間地面を大きく揺らすほどの衝撃が走った。
「おい、あいつ大丈夫なのかよ……?」
「あれは死んだんじゃねえか……?」
生徒たちからひそひそと声が聞こえてくる。
「アクセル」
瞬間大爆発が起きた煙の中からノエルの防御障壁に拳がぶつかった。なんと防御障壁にひびが入ったのだった。
「なっ!?」
ノエルは焦ったのか、いよいよ本気を出しにかかってくる。
分かってるよ、ノエル。あんたが舐めプしてること。あんたは恐らく世界でも指折りで強い。でも勝負は勝負。ここで勝てば大きな一歩だ。悪いが決めさせてもらう。
エルは誰にも見せたときのない技を放つ。
「ダブルアクセル、ヘイスト!」
瞬く間に強力かつ大量の打突がノエルの魔法障壁にひびを入れ続ける。
ノエルは必死に魔法障壁に魔力を入れ続け魔法障壁を修復し続ける。
「これは、やばいかもね~。」
「くっ……。」
ノエルは言葉とは裏腹にいまだに余裕だ。
「負けねえ!!おらあああ!最大出力、ダブルブースト!」
一段ギアを上げ、腕にさらに多くの魔力を流しこむ。魔力密度が上がりすぎ、腕が鋼鉄のように固くなった。
バリッ!!!!
なんとついにノエルの魔法障壁に穴が開いたのだった。
「ここ!!」
エルはすぐさま追撃のパンチを放つ。しかし残念ながらノエルの体を捕えたはずのパンチは空を切ったのだった。
「頑張れよエル。スチームエクスプロージョン」
「え…」
上から声がしたと思い、上を向いた時には既に遅かった。
ボガアアアアアアアンンンン!!!!パリン!パリン!パリン!パリン!パリン!
大地は大きく抉れ、校舎の窓ガラスは衝撃によりすべて割れた。
それは本当に殺戮兵器のようだった。
「ガハッ……。」
血の味がする。エルはとっさに腕を前面にしクロスして衝撃を体本体に伝わるのを防いだが、残念ながら体本体へのダメージも深刻のだっだ。腕は当然折れており、戦闘継続など不可能だった。
「そこまで、勝者教師ノエル」
周りから自然と拍手が巻き起こる。見れば1年1~4組からも拍手が届いていた。
「入学式直後になかなか良い指導です。さすがノエル先生。」
学長が空から見ていたようで、降りてくる。
「ありがとうございます~。ちょっと久しぶりに弟子と遊びたくなってしまって~。」
「いやはや元気なことは良いことです。それにしても彼は非常に面白い。これからもっと伸びるでしょう。ノエル先生、これからもよろしくお願いしますよ。」
「は~い。」
「さて、エル君だったかな。私が回復してあげよう。エクストラヒール」
エルの周りに緑の光が集まると、眩い閃光を放ち、光が消えた。
「あれ?痛くもないし、手が動く。」
「これからも勉学に励んでくれ。君の成長を楽しみにしているよ。」
学長はさっさと去って行ってしまった。
「よ~し、お前ら!教室戻ってホームルームするぞ~。ちょうどそこから入れるようになったから、さっさと移動しろ~。」
ノエルの掛け声により移動する1年5組。先ほどの爆発により割れた窓から教室に直接戻っていく。
「んじゃ~時間も無くなっちゃったし、自己紹介はすっ飛ばして、質問を受け付ける。質問があるやつは手を上げろ。」
「はいっ。学年戦の日程について教えてください。」
「学年戦はもう明日からスタートだ。1クラス40人、5クラスあり200人がしのぎを削る。1回戦から決勝である8回戦まで行われる。脱落した奴も教師がポイントを付けるから、相手がどんなに強いやつでも頑張って戦えよ~。」
「負けたときのペナルティとかって……?」
「ないぞ。決闘じゃないからな。あ~言い忘れてたが女子。決闘を男子に申し込むのはやめておけ。嫁に行けなくなるぞ。」
女子たちがコクコクと無言でうなずく。
「学年戦が終わった後のスケジュールとかって…」
「その後は講義選択をして、各自講義だな。後は各先生の研究室を選んで入ってもらう。あと並行で部活動、サークル?なんていうのも今はあるらしいな。まあ研究室以外は自由だから任せるぞ。」
「はいっ!!先生!」
「どうした?」
「先生と付き合いたいのですが、どうしたら付き合えますか!」
「「「きゃああああ~!!!」」」
女子から黄色い歓声が上がる。
「う~ん、私はエルのものだからエルを倒してもらえると~」
いつもとは全く違う声色でエルにすりすりするノエル。
またしても教室から黄色い歓声が上がる。
「エル君!ノエル先生をかけて決闘だ!」
「もう勘弁してくれよ~」
その後もノエルを取り合う男子たち。きゃーきゃー騒ぐ女子たち。疲れて早く帰りたいエル。なんだかんだあり、賑やかなホームルームは終わったのだった。
下校しようと靴箱に向かっていると通信が届く。
「エル……。体育館裏に来て。」
「リエラ……。」
7年ぶりとなる幼馴染との再会の時は近い。




