第1話 持たざる者の誕生
「エル~!待ってよ!!」
「リエラ!早く早く!!」
僕と幼馴染である女の子リエラは村の教会へと向かった。
ついに…ついにこの日がきた!!これで魔法を使えるんだっ!!
そう今日は魔法適性の測定の日。この世界では魔法が当たり前に使われている。火を起こすのも、水を使うのも、洗濯物を乾かすのも、なにもかもが魔法で行われている。
僕とリエラは、楽しみに教会へと入る。
「お父さん!僕もお父さんみたいに強い魔法もらえるかな?」
「そんなに心配しなくて大丈夫だ!お父さんは炎の4等級なんだぞ?お前も俺の血を引いているんだ!安心しろ!」
「えへへっ!だよね!」
「次の者」
「はいっ。」
さっきお父さんと一緒に話していた男の子が前に出る。
「では、これより鑑定を行う……、結果は……なしじゃ……。」
「えっ……」
男の子の顔が緊張した面持ちから、絶望へと変わる。
「次の者」
男の子はその場から動けなくなっていた。
なぜならこの世界では魔法を使って生活・仕事をする以上、魔法を使えないものは基本的にゴミと同じという価値観がある。
周りからひそひそと声が聞こえてくる。
「あの子かわいそうね……でも魔法を使えない子は100人に1人だから、これでうちの子は大丈夫そうね……。」
「ねえねえ、ママ。あの子ってこれからどうなるの?」
「知らなくていいのよ。あなたは魔法の適正さえもらえればいいんだから。」
「おい、さっさと来い。」
男の子の父親が男の子を引っ張る。
「えっ……お父さん……?」
さっきまでとはまるで態度が違う。
「ちっ……俺の子なのになんでこんなゴミなんだよ。」
男の子に聞こえるように父親が言う。
男の子は泣きそうになりながらも涙をこらえる。
「じゃあな。」
「えっ……お父さん……?」
「俺の事は今後お父さんと呼ぶな。」
父親が男の子をおいて出て行ってしまう。
これがこの世界のあたり前だ……。魔法適性がないと分かったら、捨てられる。家にも入れてもらえず、食べる物・寝床もない。5歳で外にはモンスターもいるなか1人で生きていかなくてはならない。
ここまで言えばわかるだろう。魔法を使えないものはこの世界では生存を許されない。待っているのは死のみだ。
「次の者」
「はいっ……。」
「リエラ!頑張れ……!!」
「では、これより鑑定を行う……、結果は……炎の1等級・風の2等級!」
「「「おおおお!!!!」」」
周りから歓声が聞こえる。一般的に魔法の適正は10等級まであり、1等級が最も強く、10等級が最も弱い。戦闘に役立つのは5等級からであり、3等級以上は基本的に貴族からしか出現しない。
「あの子って貴族の血が流れてるのか?」
「リエラちゃんのお父さんとお母さんって普通の農民よね?確かに炎と風ではあるけど、8等級と7等級のはずだけど……?」
「稀にある覚醒現象ってやつか……?」
リエラは僕のもとへと笑顔で戻ってきた。
「えへへへ……よかった……。エルの応援のおかげだよ!ありがとう」
「リエラ!おめでとう!次は僕の番だね!」
「次の者」
「はいっ!」
リエラほどじゃなくてもいい、戦闘ができるぐらいの強い魔法適性をお願いします……。頭の中で神様にお願いをした。
「では、これより鑑定を行う……、結果は……なしじゃ……。」
「えっ……。」
僕の中で何かが音を立てて壊れた。
理解ができなかった。
「えっ……。もう一度……もう一度お願いします!」
必死に懇願する。
周りの大人から邪魔だと言われ引きはがされる。
僕は地面を擦りながら、吹っ飛んだ。
「エルっ……!私が、私がエルを守るから!」
僕はリエラに何も返せなかった。
これからどうしようか……。行く当てもない。
僕は重い足取りで、教会から出たのだった。




